38-5 迫りくる雷(いかづち)! 天を衝けドリルプレッシャー

『これで終わりにするだけ……いくぞ!!』

「……ドンピシャ! 思うつぼってなぁ!!」

『ちぃっ……!!』


 バグアーサーの繰り出す秘拳サンダーボルト――左手が掌底のように握りこぶしを解き放った瞬間こそ、アンドリューの狙いでもあった。イーテストの手に握られたグレーテスト・マグナムはすかさず発砲され、掌の中心から左手を打ち砕く。

 これもハインツの打つ手を咄嗟にアンドリューが読み切った為。まずサンダーハンドで自分をショートレンジ迄おびき寄せてから、攻撃へつなげていくであろうと踏まえたうえで、ニードリッパ―で逆に自分から間合いを詰めたうえで、至近距離で左手を打ち砕く荒業に出たのであり、


『……ちっ!!』


 サンダーボルトの出鼻を挫かれながらも、ハインツはすかさず右手でベールを握る。密着した様態で拳を振るうには間合いが近すぎる。逆手で握ったベールでイーテストの脳天を串刺しにしようと腕を振り上げるが、


「ハリケーン・ウェーブをこう使うん!? アンドリューさん!!」

「あたぼうよ! 少しでもどうにかならぁ!!」


 才人は半信半疑だったものの、イーテストのサブアーム――スフィンストの両手からはハリケーン・ウェーブが掃射されていく。指先からの超音波で、ベールが生成したビーム刃の出力を殺そうとアンドリューは狙っていたが、


「でもあまり効果ないですよ! このままですと!!」

「だったら白刃取りだぁ! リタ!!」

「わ、わかってるぜー? イチ坊気をつけろよなー!」

「気を付けるって何を……ってわぁっ!?」


 ハリケーン・ウェーブを浴びせようとも、ベールの出力は殺されることなく、袈裟懸けに振り下ろされようとしていたが――イチが狼狽えるが、上空で突如スフィンストをバックパックからパージさせ、シーカーまでも外したイーテストは真下へと重力に従って落ちていくのみ。ただ右膝だけ素早く突き出すとともに、内蔵されたグレーテスト・インパルスを撃ち込み、


『これしきの……所詮ただのこけおどし!!』


 頭部を鏃で突き刺される結果になろうとも、すかさずデリトロス・ランチャーを放射させていくものの――標的となりえたイーテストはハインツの視界から姿を消し、


『電次元ジャンプか……うおっ!?』


 イーテストが電次元ジャンプを温存していた事にハインツが気づかされたが――あくまで、イーテストだけであって、目の前のスフィンストは健在でもあった。コンバージョンの関係により無人機として、実質スフィンストが質量弾そのものとして、上半身はボタン・シーカーによるドリルを鋭利な衝角として、コクピット目掛け突貫しており、


『……とうとう限界が! 私にも終わりが!?』


 コクピットの装甲が抉られ、セーフシャッターも突き破られようとしてもなおハインツは耐え切らんと留まり続けた。中に誰もいない棺桶、特攻兵器と化したスフィンストの上半身へ目掛け、胸部からのデリトロス・リボルバーを浴びせ、右手ではデリトロス・チャクラムを携行して、強引にボタン・シーカーへ熱を押し当てて焼き切らんとしており、


『覚悟は決めていたとしても……皆にも、レーブンにも合わせる顔がないままは!!」

『おやおや、ハインツ様がここで死なれようとは……』

『その声は……いや!』


 これまでに自分を信じ倒れた部下の面々だけでなく、猛獣将軍という同僚として突き放した娘の顔が脳裏に浮かぶ頃、嘲笑うように自分の最期を惜しもうとする男の声が聞こえた。

 だがその通信の内容よりもボタン・シーカーに動きがあった事へ勝利を見出した。チャクラムで焼き切らんとする自分の右手から抜け出し、セーフシャッターをも突き破ろうといた途端、チャクラムを直ぐに投げ捨て、サンダーピースを放った瞬間



『うあぁぁぁぁぁぁっ!!』



――鋼鉄将軍としての意地か、ハインツとしての執念か。電次元ジャンプで転移したイーテストへとサンダーピースの電撃は直撃させる結果となった。それもイーテストへの損傷以上に、激しいショックを浴びせられるとともに彼女が断末魔のような悲鳴を上げており、


「ちょっと、リタさん!?どうしたんですか、ねぇ!!」

「一体どうしたん!? 全然動かないんだけど!!」

「バッドラックどころじゃねぇな! おいしっかりしろ! おい!!」


 イーテストは力なくその場で倒れ込む結果となり――彼のコクピットはそれ以上の事態に見舞われていた。才人が狼狽える通りイーテストが操縦を受け付けなくなり、イチの元へとリタが癲癇を起こしたように意識を失って倒れ込んでいたのである。慌ててアンドリューが駆け付け、彼女を抱き起こすものの、


「悪い……なぁ、こんなことに、なぁー」

「構わねぇ! 流石に無理させちまったか!」

「無理させすぎたって、アンドリューさん!? ちょっと煙出てるし一体何なん!?」


 リタを無理させたとのアンドリューの口ぶりに、彼女の後ろ首からは火花と煙が噴き出しており、プレイヤースーツを着用してなければ、火傷は免れない代物であった。明らかにただ事ではなく、彼がそれを隠していたかのような口ぶりから、才人は問い詰めようとしており、


「ガタガタ言ってんじゃねぇ! 奴は倒したってーのによ!!」

「いや、倒したからって問題じゃないでしょ、これ、うわぁ!!」

「リタさん、制御できますか!? 無理は承知の上ですが……」


 アンドリューの触れる通り、ミラクルドリルプレッシャーを前にしてバグアーサーは果てた。だが鋼鉄将軍が斃れた事で相手の攻撃は止む様子はなく、むしろ逆に油を注いだかのように激化しつつあり、


『ハインツ様の亡骸を! 我々が亡骸を持って帰るぞ!!』

『それまで指一本触れさせるなぁ! ハインツ様を見捨てる事だけは何としても!!』

『われら鋼鉄軍団、死に際で奴らを道連れにするだけだ!!』


 鋼鉄将軍の死は、ガレリオの為に囮、別動隊として出陣した鋼鉄軍団の士気をむしろ高める結果となった。彼らはハインツとともに果てるまで、相応しい華を咲かせんとしていたのだから。バグストライカーの何機かが、バグアーサーが撃墜された近辺で亡骸を探そうと動いており、バグガナーたちが密集しながら一斉砲火で相手を寄せ付けない様子であり、


『それ以外の者は行くぞ! ハインツ様の仇だ!!』

『貴様だけは生かすことなど!!』


 そしてバグストライカーの数機は、サジタリウス・レネードをイーテスト目掛けて投げつけながらも、ベールを片手に押し寄せる。既にまともに動けないならば、イーテストだろうと首を獲る事は出来ると見なされていたものの――彼らの間に割り込むようにして、小柄な1機がもぐりこみ、


『誰が渡せるか! アンドリューの首を、リタの命を……』

「……お前かー、ラディよ」


 スパイラル・シーズはローカライ・クローで白刃取りを決めて見せた――2機がかりで繰り出すベールの刃に対して、明らかなサイズの違いがあるにも関わらず。


『は、離せ! たかが戦闘機の分際で!!』

『カトンボごときに私たちが、私たちが立ち止まる事は……!!』

『だったら終わらせる! それだけだ!!』


 無論マニュピレーターがあろうとも一時的にしのぐ事が限界だとはラディには既に分かっている。だからこそ一瞬止めただけで、すぐに反動を活かしてベールを押し返し、一瞬の虚を突いてガーディ・ファイヤーを浴びせかけ、ミサイルを叩きつける事で粉砕させ、


『ここはあたし達が何とかするからさ! 早く逃げなよ!!』

「すまねぇアグリカ、こうも締まらねぇのによ!!」

『まぁ、締まらないってのは慣れっこだから気にしないでよ!』

『し、自然に余を貶す事はやめないか! 余も真剣だぞ!!』


 スパイラル・シーズへ加勢するように、ロクマストが到着。背後からメーザー・サイクロンを打ち付けてバグストライカーの息の根を止め、イーテストを脱出させんと奮闘を見せる。締まらないとパートナーからみられていたものの、ロディなりに必死な様子。その傍らバグガナーの陣営へ向けて、モスグリーンの巨体が急降下しており、


『ダイノミック・ダイビングだべよ!!』

『どうか皆さま、後詰めはお願いしますぞ!!』


 空戦での手段が限られるサンディストとして、己自身を質量弾として落下させる戦法を取らざるを得なかった。密集したバグガナーは、ハインツの亡骸を探し守る必要性もあったからか、すぐに離散する事は出来ず、墜落したサンディストの爆発に巻き込まれる結果となる。かろうじて逃れた者たちも浮足立った状態でライトウェーザー部隊を相手にすることとなり、


『申し訳ありません、アグリカ様! 私もできる限り踏みとどまりますが!!』

『大丈夫大丈夫! まだ有り余ってるんだから、なぁ?』

『当たり前だ! 余が貴殿らに恥じない活躍をして当たり前だろう!』


 サンディスト・コンドルとしてコクピットとシーカーが脱出したものの、空戦戦力としては心細い。その為、この戦域で唯一健在となるロクマストへとヒロは託した。頼られる事へ発奮したのか、自分しか跡がいないと自覚があったのか、ロディが奮起するとともにロクマストの反撃は続く。リーンフォース・フンドーで引き寄せたバグストライカー目掛けて、ガブリ・マウスターでかみ砕き、セベールスで薙ぎ払うような戦い方を見せつけてもいた。


「やれやれ、頼りねぇと思ってたけどよ」

「思ってたより、やるじゃねぇかー、なー?」

「って、早く脱出しますよ! まだジャンプできるみたいですし」

『イチの言う通りだ! ハードウェーザーを守るためにも限度がある!!』


 ロクマストの奮闘へ、見直したかのようにアンドリューとリタが眉を細めていたものの、実際イチの言う通り彼らが無防備な状態で戦場に踏みとどまっている状況が危険極まりない。ラディが催促するようにフラッグ隊はハードウェーザーの護衛に適してはいない、自分の奮闘が大分無理をしているのだと触れるとともに、


『早く帰れ……後で話がある』

「……わーってらぁ、おめぇらもくたばるんじゃねぇぞ!」

『俺たちを誰だと思ってる。引き立て役では終わらん』

「おー、フラッグ隊だけにかー……?」


 ラディの話の意味合いを、アンドリューは察しつつも承諾した――いずれはメッキが剥がれるようにバレる事柄に違いないのだと。電次元ジャンプでようやくイーテストが戦線から離脱するとともに、


『トム、ルリー!何があろうと生きて帰れ!!』

『当たり前じゃないですか! 故郷でかっこ悪いとこ見せられませんしさ!!』

『フラッグ隊の誇りは伊達じゃありません! アランさん!!』

『んなこととっくに分かってるんだよ! 俺もそうだからなぁ!!』


 フラッグ隊およびアラン率いるライトウェーザー隊の士気もまた高揚しつつあった。アンドリューの闘志を引き継がんとして、スパイラル・シーズとサザンクロス・バディのツートップが揃ってバグガナーの陣営へと殴り込んだ。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


『はっ! このジュピトリスで一思いに!!』

『させるかよ! 簡単になぁ……!!』


 ジュピトリスでヴィータストを射止めんとフォースガンが確信した瞬間、赤と白のトランスポーターの横やりが入った。カーゴ・シーカーがジャッジメント・キャノンを連射させながら、間合いを詰めていく様子を前に、


『あれは確か……ザービストの!!』

『武士道は死ぬことと見つけたか! この愚か者が!!』


 揃ってザービストが電装したものだと確信したが、ザービストの空輸が主体となるカーゴ・シーカーが非力にもかかわらず、闇雲に自分たちへ畳みかける様子がユーゼルの癪に障ったようである。サジタリ・スパークによる落雷がシーカーへと直撃するとともに、デリトロス・リボルバーでハチの巣にすれば無力と化したが――この横槍によって二人とも注意を逸らされてしまい、爆煙からは二本のワイヤーが勢い良く打ち出され、バグシルバーの両手を絡めとっていく。自分の頭上を飛ぶピンクの機体を目にすれば、


「ナイスフォローだよ! 九死に一生を得たっていうか!」

『ラッキーみたいに言うけど、元々狙ってたんじゃないの?』

「まぁそれもそうなんだけど、おいしい所は頼むからさ!」

『言われなくてもなぁ! ジャンバードで終わりだ!!』


 カーゴ・シーカーの突撃により、ヴィータストはジュピトリスの標的から外れる事に成功した。それだけでなく撃墜されたはずのザービストが姿を見せる――墜落したカイト・シーカーのカタパルトから、高速で射出され、瞬時に変形を完了させ、


『ど、どういうことですか! まさか最初から……あっ!!』

『残念、ネクストだと思ってたかな?』

『俺は甘くないぜ! 分かってると思うがよ!!』


 フォースガンが呆然としたまま、ジャンバードでコクピットを突かれる結果となったが――これも、ネクスト・ビーグルとほぼ同等のサイズを誇るザービストだからこそ、カイト・シーカーへの搭載が可能となっていた。実質二段構えの作戦にまんまとバグシルバーが致命傷を負う傍ら、バグラチナは間一髪離脱し、


『フォースガンの仇はわしが……何!?』


 憤りとともに、サジタリ・スパークでの報復をもくろむユーゼルだったものの、部下からの通信へ思わず顔が青ざめる。さらに、ここで踏みとどまる必要性すら危うい事態へ急転していき、


『ハインツがやられたぞ! ミクロネス!!』

『ハインツ様が……だと! うおっ!!』

『わしらが留まる必要はない! 早く退くんじゃ!!』

『で、できることなら仕留めたかったが……やむを得ない!!』


 鋼鉄将軍の死は、ハインツらを動揺させるには十分他ならない凶報であった。ほぼ無傷でもあったバグチラナは早々に撤退するものの、ディエストを拘束していたバグブロンズはサジタリ・チェーンを解除するためのタイムラグに見舞われてしまい、


『ただ大人しく背中を向ける事だけは! 鋼鉄軍団であるからには……!!』


 逃げようとした隙を突かれて果てるよりはと、バグブロンズはサンダークローでディエストの胸部へ光の爪を突き立てていく。胸部の装甲を破壊することで恫喝と牽制を兼ね、自分の退却を優位な状況で進める事を狙っており、


『ダー、ダー! パムチー!?』

『大丈夫だ、ストリボー・ブレークを使うぞ!』

『ダー!!』


 けれどもカプリアにはパルルを宥めながら、冷静に動けるだけの余裕は残されていた。早速背中のファンを回転させ、ストリボー・ブレ―クを発生させるものの――目の前のバグブロンズへと電磁波の竜巻は真逆の方向故に直撃はしない。ただ竜巻によってディエストごと押し出されようとしており、ファン近辺へと巻き付けていたサジタリ・チェーンが逆に外れる結果となり、


『何を思ったか知らんが、これで……』

『早く撃つんだ! 私に構うな!!』

『何……これを狙ってお前は!?』


 自分が退くチャンスだとミクロネスが捉えた時は既に遅すぎた――カプリアの狙いとして、自分もろともフェニックスの主砲スザク・ランチャーの射程圏内へと自分を引き込むことが狙いだった。最もカプリアは自分を犠牲にする考えなどなく、グレープ・クローそのものを打ち出し、ダメ押しとしてミサイルを連射させてバグブロンズから離れる事に成功しており、


『スザク・ランチャー……撃てぇ!!』


 ガンボットを差し置いて、自分が艦長のようにマーベルが命じた途端、名前通り不死鳥を模したフェニックスの機首が展開して主砲が放たれていった。成す術もなくバグブロンズが巻き込まれて果てるとともに、鋼鉄軍団の姿は既になく


『や、やったんだよね……まさかフェニックスでバグロイドを』

『当然だ。私がいる限りフェニックスが無様な姿を見せる訳がな』

『あ……うん、そうだね。マーベル君のおかげというか何というか……』


 ワンオフタイプのバグロイドは、ディエストではなくフェニックスによって仕留められた――ガンボット自身からしても予想外の事態だったのか、目頭を押さえながら感慨していたものの、実質艦長のように振舞うマーベルが自分のおかげと豪語すれば、リアクションに困惑している様子でもあったが


『何が私のおかげだ。何が』

『ままバン君、今に始まった事じゃないし』

『まぁ、マーベルの機嫌を取る事くらい朝飯前と』

『……ナマイキ、パルル、オモウ』


 我が物顔でひけらかすマーベルの様子へ、バンはやはり皮肉を述べており、ムウとカプリアは揃って余裕ありげに彼を宥めていた。特にカプリアとして、他フォートレスのリーダーがわざわざ助っ人に入った貸しに対し、彼女が華やかな活躍をさせればよいだけと慣れている様子でもある。パルルからすればあまり面白くはなかったようで、不機嫌な顔を作っていたものの、


「やられたのはシーカーだけだからね。ボトムは無事みたいだし」

「なら急ぐぞ! アンドリューさんが今頃!!」

「もう、そんなに急かさなくても大丈夫だって。才人っちもいるんだし……」


 一方ヴィータストは、あくまでカイト・シーカーだけが機能停止に追い込まれたに過ぎなかった。シーカーからボトムをパージさせ、空中で上半身と下半身が結合すれば万全に近い戦力を温存させていたともいえる。その流れでアメリカ本部へと救援に入ろうとしていた所、


「ええっ!? ちょっと聞いてないよそんな事!!」

『お、俺だってわからねぇよ! リタさんが何かやばいというか、シャレにならなくて!!』

『……リタ、オカシイ、マサカ!?』

「うわぁ! 回線開いたまま……僕もなにがなんだかだけど!」


 才人からイーテストが窮地に追い込まれている事を知らされ、シャルも戸惑いを禁じ得ない。この二人のやり取りにパルルが身に覚えがあると、顔つきが変わりだしており、


「まさかって何だパルル! 知っていることがあるなら!!」

「それより急がないと! 飛べるの僕だけなんだし!!」

「仕方ない! 一体何を、何をアンドリューさんは隠して……!!」


 パルルの口ぶりへ、ウィンが真っ先に反応していたものの今対処すべき問題はそこではないと、シャルは窘めつつヴィータストをアメリカ本部へと飛ばしていった。ディエストとザービストがただ取り残され、


『おい、リタの奴がどうしたんだよ! 俺も聞いてないのによ!!』

『俺の当てずっぽうかもしれないけど……ハイリスクな賭けかな』

『ムウ、お前はなに他人事のように! いや他人事といえばそうだけど』

『リタから他言無用と言われてたホイ、今更言っても意味がないかもしれないだみゃーけど……』


 重篤のリタに対して、バンもやはり気が気で仕方がなく、口では彼に窘められるほど軽い例えをしていたムウの顔も笑ってはいなかった。彼女の容態が電装マシン戦隊へと暗雲を立ち込める恐れがあるとして、メルがようやく姿を現し、


『リタ、イワナイホウガ、イイ、パルル、オモウ』

『当たり前だけど仕方がないホイ、ただこの事は』

『私たちにリタを、アンドリューを止める資格がない……そうだな?』

『……こればかりは二人が、アメリカ代表が決めた事だみゃー』


 パルルがリタの尊厳を傷つけかねないと不安を隠せないでいたが、彼女の葛藤を承知の上で公にすることをメルは選ぶ――彼女の決断が軽いものではないとカプリアは、パルルを落ち着かせながら、彼女から明かされる真実へ耳を傾けようとしていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る