26-4 リーダーの条件

「あいつ、やたらパワーアップした、パワーアップしたって言ってたけど」

「戦闘能力をシーカーに集約しても、本体にハッキングが残されている……正直言えば助かる」


 リフレッシュ・ルームにて玲也と才人は、ポリスター越しにユースト・ユニオンとしての戦闘記録を目にしながら、今後の用兵を模索していた。何かとユースト・ユニオンの力をアピールしていたシーンの事を才人は少々辟易していたものの、玲也は戦闘記録での立ち回りから、及第点以上の評価を下していた。電子戦を駆使する上半身に対し、護衛から遊撃機として下半身のナッター・シーカーを駆使する事で、用兵の幅が広がるとの事であり、


「オレが思うには、空と海を疎かにしない事が大事パチ。ハードウェーザーでも数は重要パチ!」

「飛べないと色々制約がある……それも2機がかりでやっと運べたとなれば」


 玲也自身が出るケースを除けば、ヴィータストとユーストが機能する航空戦力となるが――飛べないはまだしも、僚機による空輸でも手間取るサンディストは新たな課題になりつつあった。小柄ながら堅牢な装甲を活かした突撃戦法を駆使するサンディストが、陸戦で天衣無縫の活躍を示そうとも、地形の制約に最も左右されるハードウェーザーなのだから。


「けどよ、あれ飛ばそうとしたら容量食うし、分離して飛べるとかも」

「分離式にしたら、サンディストが脆くなるパチ。そうなるとしたら」

「よぉ、お疲れさん」



 電次元ジャンプが封じられた事態を想定し、サンディストの自力での帰還手段を模索する才人だが、コンパチが触れた通り、サンディスト本体そのものの性能をグレードダウンさせる事は避けられなかった。同じく思慮する玲也の肩に何者かが声をかけて、手を添えてきたことに気づいて彼が振り向けば、


「……一体何のつもりですか、アグリカさん」

「ちょっと待ってろ、お前にちょっと見せたいものがあったからポリスターをだな……って、何処見てる?」

「いや、別に好きで見ている訳じゃないから!」

「そもそも勝手に話を進めないで……」


 玲也が少しうんざりしたような視線を浴びせる相手はアグリカ――彼女は一方的にロディのポリスターを取り出して、データ送信を試みている。その際に首元が開いたジャージの胸元を才人が見ているのではないかと、ませたガキだと彼を少し揶揄っており、少し赤くなっている彼を他所に、ポリスターの液晶画面は受信メッセージを表示した。直ぐ液晶画面のパネルをタッチすれば、


「この姿ですとサンディストの、いや……!」


 表示されたサンディストは、ホルス・シーカーがパージされると共に、背部のハッチが開閉してコクピットブロックそのものに飛行能力を備えた映像が再生された。サンディストが自力で帰還能力を得る事を想定した、一つの強化案であったが、


「……いやですから! どうして勝手に話を進めるんですか!」

「話を進めたとっていうか、手を加えたんだけどな」

「いや、どちらも同じですから!!」

「そりゃ手が空いてたんだし、ヒロさんがあたしにも相談してきたんだしさ?」


 玲也自身に話を通すことなく、アグリカが独断で手を加えた事に対して思わず当たり散らすように彼は突っ込んだ。アグリカは彼が何故そこまで怒るのかと不思議そうな顔を一瞬浮かべ、自分は悪い事をしていないと怪訝そうな顔を浮かべる。


「ヒロさんもヒロさんだ。俺に最初に話を通せと……」

「玲也ちゃん!? ちょっと何したん!?」


 勝手に動かれたら困ると、玲也がその場にいないヒロへも思わず愚痴を漏らした時、アグリカは額目掛けて豪快にデコピンを浴びせた。才人が狼狽する通り、玲也が額を抑え、声にならない声を挙げて激痛をこらえている。


「……あのなぁ、お前が忙しそうだから! ヒロさんはできる事をしようとしたんだよ」

「なっ……」


 気のせいかリタ以上に力が込められており、アグリカなりに今の玲也へのお仕置きの意味も込められていた様子だった。肩でため息をつきながらヒロまで見下す理由はないと苦言を呈しており、


「これはラグ坊とヒロさんらで解決する問題なんだよ。一応あんたに見てもらおうとは思ってたからいいだろ」

「いいだろって何ですか。勝手に動かれたら纏まりがなくなりますから」

「だったら、いちいちお前が首を突っ込まないといけないのかよ? ワンマンの独裁者気取りか?」

「ど、独裁者……!?」


 リーダーとして必死に、アンドリューの後釜を務めようとする自分の事を、まさか独裁者と呼ばれる事を玲也は考えてもいなかった。彼が呆然としつつ拳が震えだした様子をアグリカは見逃さず、


「あー、ロディよりお前の方が厄介だよなー。プレイヤーとしての腕が立つから王様気取りで振舞おうとするからなー」

「おい、玲也ちゃんの何が分かって言ってるん! ろくに戦ってない癖に!!」

「おー、麗しき友情、持つべきは友って言うからな」

「そ、そりゃ俺と玲也ちゃんの仲だからよぉ!」


 ロディよりも劣ると玲也が侮辱された時、才人が彼に代わって吼える。彼もプレイヤーとしての腕は毛が生えた程度のものだが、ロディより上回っている事もあり、アグリカへも偉そうな風を吹かせているのだろう――そのように捉えた彼女が皮肉を浴びせかかるも、当の本人には今一つ伝わっておらず、


「……オマエ、多分馬鹿にされてるパチよ」

「な、何だってぇ……玲也ちゃん!?」

「とにかくお前の言ってる事も一理ある、これではロクマストが可哀そうだ」


 コンパチに突っ込まれる才人を他所に、玲也もアグリカへと皮肉を返す。ロクマストのスペック自体に問題はなく、それ以上に海戦に特化した機体は空戦以上に貴重な点にアドバンテージがあった。それにも関わらずロディが閉じこもったまま戦わないならば、活かされていないのは言うまでもない。プレイヤーとハドロイドに恵まれなかったと、ロクマストを憐れむものの、


「けど、エクスからしたら有難いだろうな。ほら」

「ほらって……何ですか! それとこれとは別ですよ!!」

「まぁ別にあたしも喧嘩しに来た訳じゃないから……目通しといてくれよなー」


 アグリカはその皮肉の意味を理解した上で、小指を突き立ててエクスには都合が良いと触れる。早い話ロクマストが動かない分クロストが増える事を意味する事と、エクスからすれば玲也と二人きりを良しとするとの事を指していた。

その意味に気づかされれば玲也が顔をすぐさま赤くして否定するが。当のアグリカは静かな怒気を抜いて、軽く笑いながら立ち去っていった。


「全くあの人は……」

「ホント、何が喧嘩しに来た訳じゃないだよ。俺の前で玲也ちゃんコケにしやがってよ」

「あら、怒っちゃやーよ……男の子の友情って本当麗しくて焼かせちゃうんだから♪」

「そりゃまぁ、全てを許す男と男と言いますから……ってリズさん、いつの間に!?」


 言いたい事だけ言って帰っていったアグリカに対し、玲也は複雑な顔つきであり、彼を代弁するように才人がぼやいていた時だ。身を乗り出して話に加わる長身の彼は、何故か後ろに突き出した腰を振りながら、恍惚した顔をしている。リズの目当ては才人のそばにいる筈の人物だと顔を向けるものの、


「あら、イチ君いないの? ちょっとショボーンだわ」

「やっぱりイチ目当てパチね、オレと才人はそのおまけと」

「あらあら妬いてるの? 才人君もあたしちょっと注目してるんだから♪」

「注目ってどういう意味なん……」


 イチが目当てのリズだが、先に食堂でリンと団欒している事を彼に伝えるわけには行かなかった。その彼にどのような意味で注目されているかと、少し困惑している才人へぎこちない笑みを玲也は浮かべながら、リン宛へ自分たちの元へ来るなとメッセージを送っていた


「リズ、才人を困らせたらいかんぜよ」

「んもぅ、別に困らせてないんだから~ピリピリしてるムードはゴメンだし」

「ピリピリ……って、もしかしたら見てたのですか!?」

「何、一筋縄でいかんのが当たり前じゃあ。そう恥ずかしがらんくてもええぜよ」


 パートナーのアプローチが行き過ぎているとラルが窘める中、ブラジル代表の二人がアグリカとの一悶着を知った上で現れてることを玲也は察した。実際彼は否定もせず、大らかに笑い飛ばしているものの、


「いや、当たり前で笑ってる場合じゃないですよ! ラルさんからも何か言ったら」

「わしは馬鹿やき、よぉ分からんのぉ……っておんしに話があるんじゃ」

「俺に話ですか。急に改まりますと」


 笑っている状況ではないと、玲也を補佐する年長者としてラルに動いてもらうよう才人が働きかけるが――猶更本人は笑顔でその問題は解決できないと断言した。ただ二人がずっこける間を置かず、急に手を叩いて話すべきことを思い出した顔をするとともに、引き締まった顔つきとなり、玲也も思わず身構えるものの、


「おんしら、アムンセンとスコットを知っちょるかの?」

「……はい?」

「えーと、スコットが誰かなんだと思いますけど」

「……人類で初めて南極点に到達した人物パチ。スコットは二番目パチね」


 急に南極点に到達した偉人の話をラルは持ち出してきた。全く脈絡もない話故に玲也が少し間の抜けたような声をだしている傍ら、才人はこの二人をおそらく知らなかったのだろう。コンパチか彼に対して簡単な説明をしていた頃、


「あら~急にインテリぶった歴史の話をするなんて、驚きよ~」

「ガキの頃は探検家を目指しちょったんじゃ。ご先祖様が日本から来たのもあるかのぉ」

「それは分かりましたが、急にアムンセンとスコットの話を何故」

「ついでに聞こうと思うんじゃが、何故アムンセンが競争に勝ったかも分かるかのぉ?」


 先ほどまで馬鹿と自虐していた割に、博識めいた一面を見せるラルにリズが驚くが、彼は玲也達を試すようにアムンセンとスコットの話を続けており、


「……玲也ちゃん、分かる? 俺世界史あんまり……」

「色々説がありますけど、アムンセンは寒さに強いエスキモー犬にソリを引かせてた事とか、防寒着も革ではなく毛皮を使ってた事、スコットは馬や雪上車が使い物にならなかった事などが……」

「そうじゃのぉ。アムンセン隊の準備が隅々まで行き届いちょったんじゃ。そうさせたのもリーダーの在り方も大きいと思うぜよ」


 学業と別に、歴史へは造詣が深い玲也がアムンセンの勝因となる事柄を連ねてあげていく。ラルは挙げられた事柄が間違っていないとしつつ大元はリーダーシップにも起因すると触れた。玲也の顔が自然と引き締まっていた様子をちらっと目にした後、


「アムンセンは自主性を尊重しちょったんだ。一つの目標にみんな揃って参加するようにじゃな」

「……防寒服や、ソリはそういえば部下からの提案で」

「そうじゃあ。ボトムアップと言うかのぉ。スコットはトップダウンじゃったからのぉ」

「……最終的には全員還ってこれなかったになりますか」


 アムンセンは生粋の探検家であり、スコットは探検家ではなく軍人であった。その結果トップダウン型の指揮で隊を率いていた事が、全員参加の姿勢で挑んだアムンセン隊に敗れただけでなく、全滅の憂き目に遭った。この話を聞くにつれて自然と玲也の声のトーンが堕ちてきており、


「俺だってみんながその気になってくれたら良いです。ラグレーは前より真剣に取り組んでますが」

「ラグレーは頑張っちょる。じゃが誰も同じように変わる訳じゃーないからのぉ」

「確かにあのノータリンは好みじゃないけどね。可愛いのも十人十色。みーんな違うから面白いのよ♪」

「は、はぁ……」


 まるで自分がリーダーを務めて待つのは破滅ではないだろうか――玲也がリーダーとして望ましい集団の在り方に触れる。ラルに乗じて相手に応じて術を変える必要性を述べるリズが、自分の頬を突いてくる様子へ少しぎこちない笑いを浮かべていたが、


「まぁ、おんしがスコットと同じじゃとは思っちょらん……例えるなら白瀬矗かのぉ」

「シラセ・ノブ……何の報せなん?」

「同じく南極点到達に挑んだ人だ。日本人なら白瀬矗ぐらい知って当然だろ」

「けど、南極点には到達してないパチ。80度5分だからスコットにも及ばないパチよ」

「うっ……」


 やはり名前からしてもピンとこない様子の才人へと、玲也は白瀬矗の事を説明する。コンパチが補足するように彼の業績を述べるが、南極点到達が叶わなかったという最大の相違を指摘した途端、急に玲也の表情が曇るも、


「国の理解が得られんかったハンデもあったが、知識も技術もまだまだじゃった」

「確かにそうですね……アムンセンも相手にしなかったとかで」

「そうじゃが白瀬隊は無事に帰っちょった。スコット隊に勝るところじゃ」

「……!!」


 白瀬隊は志半ばながらも、引き際を見誤る事はなかった――ラルは玲也の肩をポンと叩きながら強く激励する。玲也の目が思わず大きく見開くものの、


「ねぇ、そういえば、そのスコットはイギリスじゃなかったかしら?」

「イギリスって……ちょっと、それアトラスさんと同じとこじゃ」

「おい、それは冗談でも言わない方がいいぞ。ソラと同じ目に遭われたら」

「……別にわしはアトラスやクレスローが不吉とはいっちょらんがのぉ」


 ただリズが思い出したように、スコットが英国軍人である事を触れた途端、才人がイギリス代表の事を思い出していた。全滅したスコット隊から不吉なイメージがあってか、彼に悪気がないとしても不謹慎だと少し窘め、ラルもあらぬ方向に話が逸れたと苦笑いをしていると、


「悪い、俺も当然そんなことあっちゃ……」

「お前なぁ……」


 才人も悪気がないと触れつつも、自分が不謹慎な話をした事へは直ぐに謝ろうとした矢先腹の底から唸るような音を挙げていった――正午を知らすような腹の音に対し、これは生理現象だから仕方がないとはいえ、玲也は思わず呆れてしまっていた所、


「こじゃんと食べんと生きて戦えんからのぉ。試合も戦争も……おや?」

「ポリスターにも……どうした、シャル!」


 真昼との事もあり、難しい話を一度切り上げ食える時に飯を食べんて気持ちを切り替えようとラルが促した瞬間だった。リフレッシュ・ルームにも響き渡る程ブザーが鳴り響くと共に、玲也のポリスターもシャルからの通信が届いたため、慌てて取り出すと、


『直ぐブリーフィング・ルームに来て! その前にネットの方も見といた方がいいけど!!』

「分かった……バグロイヤーには変わりないから、行くぞ!」

「勿論って……おっととと、いきなり来るなよな、バグロイヤー!」

「なんじゃあ、試合も戦争も延長はつきものぜよ!!」


 シャルからの催促があろうとなかろうと、バグロイヤー襲来に伴う招集サイレンに変わりはないだろう。玲也が直ぐに飛び出し、才人が腹の虫が鳴りやまないのにと急ぎながらボヤいていた様子をラルはこれからに集中すべきと檄を飛ばした。

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


「将軍、遅くなりました!!」

『電装マシン戦隊に私のセルが囚われていると聞きました、超常軍団で貴重な部下になるセルを解放しないとの事でしたら……』


 玲也達がブリーフィング・ルームへと到達した時、モニターに表示された緊急報道番組では聖ソフィア大聖堂が映され、水色のバグロイドが何機かが大聖堂に足を踏み入れる事を阻止するように周りを固めている。

 その一方で5、6機ほどのライトウェーザーもなぜか駐留したまま、戦闘の気配は見せていない。大聖堂の鐘塔にて、艶めかしい紫髪を持つムドーはセルの解放を電装マシン戦隊へと強く呼びかけていた。この取引を確実にせんと鐘塔から二人の女性がつるし上げられると、


「ちょっとちょっと、あの二人はまさかと思うけど!!」

「アズマリア様とルミカ様……バグロイヤーの人質にされたかと」

『この二人はダブルストのプレイヤーですからね。この二人もですが、PARの皆さんも正午の鐘がなりましたらどうなるかはお判りでしょう』


 世間にダブルストのプレイヤーとして知られていたアズマリアとルミカの二人を人質に、セルと交換する条件をムドーが就きつける。それだけでなく大聖堂へ着陸したまま、微動だにしないライトウェーザーの群れに画面が映ると、


『正午の鐘を私が鳴らしましたら、彼らもワルシャワ、ミンスクの時と同じようになりますよ……今、この鐘を鳴らしても効果はありますがね……』

「ちょっと、これやばいんじゃ……」

「セルとかフェニックスの筈だけど、どうするつもりなんだよ!!」

『そ、それはアズマリア君とルミカ君と引き換えにするつもりだよ……メル君も、クレスロー君も分かってくれたからね』


 ニアとシーンが懸念していた様子に対し、ガンボットは人質の交換に応じようとする話へ踏み切る意思を伝えた。研究サンプルだろうとも、実の弟だろうともバグロイヤーへ返還する事で納得した事を付け加えたものの、


『でも、誰か出してほしいかな……アトラス君とバン君を出すのが精一杯だから』

「そのつもりで私も考えてましたよ。この交渉そのものが罠の可能性がありますからね」


 人質を運ぶレスリストに対し、ザービストは威嚇と護衛を兼ねた同伴となる。エスニックが想定している事は、この交渉の場と異なるルートで人質の救出を計画する事であり、


「でしたら、俺が行きますよ! ユーストがパワーアップしたばかりですから!!」

「でもー、まだ時間経ってないからー出来るのー?」

「ステファー様のおっしゃられる通りですな。サンディストも正直隠密に向いているかも懸念すべきですが……」


 この場で真っ先にシーンが立候補したものの、そのセルを連れてくるまで時間が経っていない事もありインターバルを終えていないとなれば、電装すら直ぐには出来ない状況だった。ヒロが付け加える通り、バグロイヤーに感づかれないように別動隊を送らねば、人質への危険が跳ね上がるのだから。


「感づかれないようにとなれば、ジーボストも厳しいね……そうなるとしたら」

「オレが行くパチよ」

「コンパチさん!? ということは……」


 その点も踏まえ、エスニックが候補を吟味しようとした所、立候補の声と共に小さなロボットが飛び出した。テーブルの中心へ現れたコンパチが名乗りを上げたのだから、自分たちかとイチが少し恐る恐ると指さしており、


「つまりスフィンストだが、その……大丈夫か?」

「よく聞くパチ。スフィンストのキャタピラーは掘り進むことが出来るパチ」

「つまり、地中から別ルートを通る……そう言いたいだね」

「なら俺も一緒に出ます。ネクストがうってつけです」


 ウィンがスフィンストの出撃を懸念していたものの、コンパチはキャタピラーの有用性を説いてエスニックもまた納得した様子があった。玲也も追随するように席を立ち、


「玲也様! クロストではありませんこと!?」

「そりゃクロストは目立つし、キャタピラーが使えないからね!」

「シャルの言う通りパチ。ネクストだとジャミングが使えるから妥当パチね」


 やはりエクスが自分の出番ではないのかと抗議するも、シャルの意見の方が正論である。コンパチとして、ブレイザー・ウェーブを展開すれば、キャタピラーをカモフラージュする事も可能となり、別ルートも看破されにくいと見なした上で、


「よし、黒海のフェニックスからネクストとスフィンストを電装させる。ブレイザー・ウェーブを展開しながらキエフへと進軍していこう」

「将軍……才人、いけそうか!!」

「キャタピラーはオレが動かすから大丈夫パチよ!!!」

「な、なんかコンパチのおまけみたいだけど……もちろんだぜ!!」


 コンパチありきな所に才人は少々拗ねながらも、一大事であることから玲也と共に出撃する事へは異論はない。4人が直ぐフェニックス・フォートレスへ通じるゲートに急ごうとするも、


「逸って攻めちゃいかんぜよ! 生きて帰るためにも慎重にじゃ!!」

「そうそう! イチ君の帰りをこーんなに待ってるんだからね!!」

「貴方が待たなくてもイチは帰ってきます!!」

「とにかく油断は禁物、慎重に動くように!!」


 ラルからは先ほどの教えに乗じて慎重に動くようにと釘を刺されるが、リズに関してはやはりイチへの熱烈なラブコールの意味合いが強い。リンがやはり怒鳴り返すのを他所に、ドラグーンの司令としてエスニックは一同へと念を押すように慎重な行動を促した。

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