第23話「七大将軍、大気圏上空に現る!!」
23-1 ジャール急襲、バグロイヤーの第二波来たる!
『ったく、ハードウェーザーを何だと思っていやがる』
『まま、俺らが控えてれば万が一に手が打てるからね』
――バグロイヤーとの戦いから1か月が過ぎ去ろうとしていた。その中でザービストが出撃していたものの、戦闘目的ではなくジャールにて建設作業に従事していた為であった。ジャッジメント・スクリューはバグロイドを抉るためではなく、掘削に使用されており、カーゴ・シーカーを資材運搬目的でジャールの地を行き交わせる。周辺にデュオ・バックラーが数機作業用のトーチを手にし建設作業に従事している様子であり、
『もう少し頑張ってよ! ダブルストだったらもっと手が回るのに!!』
『あのなぁ……別に好きでやってないからな』
『まま、そう余計な事いわないの』
『すみません……ベリー、折角僕たちに協力してくださっているのに失礼だよ』
デュオ・バックラーに指示を送りつつ、青と黄色のフルーティーも同じ作業へ携わっていたが――ベリーはザービストの仕事っぷりが遅いと少し苛立っている。血気に逸りやすいバンだが、長らく実際の戦闘に遭遇していなかった事への倦怠感からか、血の気も多少鈍りあくまで呆れるだけにとどまっていたのは救いというべきか。ムウとパインが相方をそれぞれ宥めて一応収まると、
『この大宇宙要塞が今後の戦いでは必要と』
『せやで! オトンの自慢作やから、ウチらが頑張って完成させなきゃあかんでー!!』
『……厳密にはメルさんのアイデアです。シンヤ様はあくまで助手の筈です』
『そ、そりゃそうやけど! 今オトンが仕切っとるんやから同じやろ!!』
ムウが触れる通り、小惑星ジャールは電装艦を管轄する要塞へと改造計画が進みつつあった。メルのアイデアとフレイアが触れているものの、アイラとしては父の仕事だと今は胸を張りたかった――アタリストを動かす自分の隣で作業員へ指示を出していた彼だが、
『まぁ、そういう事に今はしてもえぇんかな。そこ、予定より遅れてるからもうちょっとペースあげてくれへんか!』
隣で娘から担がれると共に、シンヤは少し照れ笑いをしつつ、今は自分の仕事だと胸を張る事にした。ペルナス・シーカーのアームが資材や人員を運搬しつつ右往左往。彼が触れる通り予定より遅れているとの事で少しペースを上げているが、
『マーベルの奴が急に俺らに押し付けるからな。引き継ぐならもう少しちゃんと引き継げって言いたいけどよ』
『まま、でも俺は満更悪くないかな』
『……ムウ、私と一緒ですからそう言っているのです?』
『おっ、分かってきてるじゃん。まぁ後で付き合ってもらえると嬉しいかな』
ジャールの要塞計画は、元々ドイツとポルトガルが携わっていた。しかしダブルストのパワーアップが完了した事に伴う慣らしの為、マーベル達がフェニックス・フォートレスへその日だけ引き返しており、彼女たちの代わりとしてイタリア代表の二人が参上した経緯だった。
ムウはこの急な任務であっても、フレイアと一緒なら悪くないと楽に構えているからまだしも、その二人の関係も含めバンは少し不機嫌そうに構えていた所、
『おや、バン君何で俺に妬いてるの?』
『そりゃ決ってるやろ! ムウはんが取られてバンはんは寂し……』
『だから何処がどうなってそうなるんだよ!!』
『……まま、バン君はフレディがいるしね。君も昨日フレディとデートに行ってたけど……あぁ』
確信犯かどうか定かではないが、アイラがバンのプライベートに踏み込んだ時、なぜかムウは少し白々しい口ぶりだった。彼の様子からアイラも察したようで
『やっぱあんさんはそういうお人や、美しい野獣には美しい野獣がそばにいてやらんとな』
『だからそういう見方はやめろ! 親父さんからも何か言う事ないのかよ!!』
『そりゃバンはんの言う通りかもしれへんけど、既にワイも同じようにみられてんのや……』
『……悪い』
やはり自分が望むべき世界の人間だとバンの事を触れると、流石に少し鬱陶しく感じて彼が声を荒げる。シンヤへ娘のジェンダー観は親としてどうなのかと突っ込みを入れる。ただその結果、実の娘から同じようにみられている――実の父親から何ともいえない結果に対し、流石にバンは彼へ小声で謝った。
「おいおい、何かもめてるんだー?」
「ったく作業でもいいから、俺もそろそろ実際に出ときてぇけどよ」
この様子にアンドリューとリタの通信がザービストに入る――実際に電装している彼らを羨んでいるようで当の本人はフォートレスの個室にその身を置いていたが、
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「やれやれ……」
ドラグーン、ビャッコ、フェニックスに加えてゼルガが率いていたオール・フォートレス、そして新調され改めて電装マシン戦隊の4番艦として、ジェラフー・フォートレスが大気圏から離脱し、前線へと控えようとしていた。
この新造艦へアンドリューとリタは転属となった。新参となるアフリカ系のハードウェーザー部隊を纏める手腕があると見込まれたからだが、ドラグーンを離れた彼は少し心に隙間が空いた気分でもある。
「アンドリュー、やっぱ寂しいのか―?」
「そう男がセンチになっちゃいけねぇのかよ?」
「まぁがきっちょと別れるの、あたいも少し寂しいから分かるけどなー」
「まぁ、そう引きずってばかりもいられないけどよ……まぁ、マーベルのように図々しくなきゃダメって時もあるかな」
アンドリューの口ぶりだと、ジェラフーのクルーは艦長以下ドラグーンの面々と比べると練度や技量で幾段か劣ると言いたげだ。エスニック以下の面々と比べる事は酷とわかりつつも、実戦においてその至らない部分を自分が補う必要があり、その場合ーベルのようなワンマンな姿勢も必要かもしれないと苦笑すると。
「それと別に、新しい奴らはどうだと思うか―?」
「そうだな……まぁどっちも手がかかりそうな問題児かもしれないなぁ」
ポリスターに記録されたラグレーとロディのデータを見ながら、アンドリューは骨が折れそうな予感を感じつつあった。玲也と同じように接して鍛えて芽が出るかどうか定かではないと考えつつ、
「まぁどっちみち明日来るからよ。とりあえず今日玲也達と一戦交えた後にでも考えらぁ」
「そういや、ステファー結うするんだろなー。結局ドラグーンに据え置きかもしれないって話あるけどなー」
「あっちはあっちで訳だしな……俺も早いうちにイーテストも手を加えて慣らさねぇと……」
今後の方針を二人が練る最中だった――個室にブザーが響き渡り、すぐさまインターホンへアンドリューが取ると、
『アンドリューさん! ジャールのライトウェーザー部隊が襲われてます! ゲノム側もおそらく!!』
「……現れる前兆もなかったのか!」
『は、はい! ま、まるでどれも電装するように現れまして……』
「わーった! 今から俺が出るから、それまでに出来るだけ引き下がらせといてくれ」
敵が電装する――アンドリューは一抹の不安と脅威を少なからず抱いていた。だが自分がここで不安を少しでも見せてしまえば、周囲の士気に不安を与える。ここは自分にまかせてくれとの事だけを伝えて飛び出していった。
「まさか敵もハードウェーザーってパターンじゃないのか―、アンドリュー」
「それも1機や2機だけじゃねぇ……久々に刺激が強いとか言っちゃいけねぇよな!」
“微かな不安にアンドリューの表情が僅かながら歪む。しかしその不安を直ぐに振り払いアラート・ルームへとリタを連れて飛び込んでいくが――この戦いが暫しの平穏を打ち砕くには十分すぎる規模のものであった。この物語は若き獅子・羽鳥玲也が父へ追いつき追い越すとの誓いを果たさんと、抗いつつも一途に突き進む闘いの記録である“
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます