談話10:ひと休み

「思ったよりも長い話だな」


 竜が軽く息を吐く。


「そうですね、色々ありましたから。ヒスイに聞かせられないところもありますし」

「いや、母さま。ヒスイは……」


 ルリが何か言いかけて、「いや」と首を振った。


「なんでもない。あとで私から簡単に話を聞かせてやろうと思う」

「そうですね。私からもまたお話ししましょう。あの子はほとんど留守番でしたし」

「兄者が面倒を見ていたのだったな」

「はい。魔法の手ほどきなどしていたそうです」

「そうか」


 竜が大きく欠伸をする。吐く息に、少し炎が混じった。


「退屈でしたか?」

「そもそも、話に出てくる人間が多い」


 私はいちいち覚えぬがな。竜は鼻を鳴らした。


「でしょうね。私も、なるべく個人名は出さないようにしていましたけれども。こう、雰囲気で、なんとなーく流していただければ」

「……」


 竜は目を細めた。呆れている。


「ラニとかいう娘の暴挙は、まあ興味深くはあったが。人間の繁殖過程など、正直興味もない」


 竜は呟く。


 この母は、自分が当事者となった場合どうするのだろう。無関係を装うだろうか。

 普段から「私は子育てを終えた竜だ」と口にしてはいても。

 カガミやカナリヤの様子からするに、竜もまだまだ若いのではと、娘は思っている。


「この話はまだ続くのか?」

「いえ、試合自体は驚くほどすぐに終わりましたよ。あとは、なるようになるだけでした」

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