第2章 1話

「侑様、お待ちしておりました。」

扉をくぐると、一人の男が立っていた。


「ティーターン様の使徒、バトラと申します。」

「ティーターン様から、この屋敷を侑様用に改装の命を受けました。」

これから屋敷の中を案内させて頂きたいのですが…

バトラは侑を見た。

侑は頭を抱えている。


「頭痛ですね、レベルが上がるときに起きるのですよ。そのうち慣れます。」

侑は何故レベルアップしたか、解らなかった。


「その顔はティーターン様から、伺って無いご様子ですね。」


転生して神殿に居る時のレベルは0で、地に降り立って初めて1になるのです。

赤ちゃんがお腹から出た日が誕生日と同じだと考えて下されば、問題ないと思います。


侑は頭痛が収まり、バトラに礼を言った。


御礼を言いたいのはこちらの方です。

神殿では息子のTがお世話になりました。


バトラはTの父親だった。


「立ち話は何ですので、お部屋を案内しながら応接室に向かいましょう。」

バトラは部屋を案内し始めた。


この屋敷は地下一階、地上二階建ての5LDKだった。

地下はラボになっており、薬品やら道具が整理されて並べられていた。

ラボのテーブルを見ると、大小様々な水晶の破片があった。


「これはさざれ石ですか?」


「さざれ石と言う物を知らないので何とも言えませんが、ティーターン様が侑様にこの石を有効活用出来るようにしてくれと伝言を預かっております。」


「この世界では魔晶石等を作る為に、水晶が一番希少だと伺いましたが?」


「はい、それ自体は正しいのですがこのサイズの水晶は魔晶石等には使えないのです。」

「なので、鉱山で掘っている時に出てくるこのサイズの水晶は捨てられてしまうのです。」


「分かりました、何か考えてみます。」

侑はティーターンの言った価値が有っても無くても同じ石の言葉の意味を思い出した。


部屋の案内は地上の階に移り、寝室、キッチン、書斎、もと居た礼拝室、応接室とひと通り終わり応接室のソファーに腰掛けた。


「先程案内した書斎には侑様が必要とされるであろう本を揃えて置きましたが、ご要望があればお持ちしますので何なりと申し付けください。」

「キッチン、トイレ、お風呂は魔石を使用していますのですぐにでも使えますが落ち着きましたら魔力循環の練習の為にも侑様の魔力で使う事をお勧め致します。」

「侑様の到着が予定よりも早かった為、食材等の用意が間に合わなかった事をお詫び申し上げます。」

「屋敷内は安全なのですが、屋敷の庭など敷地内は魔物避けの結界を張っていますがスライムなどの弱い魔物は通ってしまいますので対処願います。」


「御屋敷に関しての説明は以上になりますが、着いて早々分からない事だらけだと存じます。なので明日の朝、妻が此方に伺います。足りない物や要望があれば、その時にお伝え下さい。御用意致します。」


「それでは失礼致します。」

バトラは深々と頭を下げ、屋敷を後にした。


「あの人、侑様の事を試してますね。何か嫌な感じです。」

ミチルは一度も話しかけられなかったことに腹を立てている様子だ。


「そうかな、確かに必要な事だけしか話さなかったけど…」


「それより、夕飯どうしよう。」

侑はそっちが気掛かりみたいだ。

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