第325話 てへっ

「我は、お主の眷属を辞める」


「ウエモン、鶏ガラはざっと洗ったあと、湯引きして汚れを浮かせろ。そのあと酒でごしごしと洗ってから鍋に入れるんだ」

「う、うん。そうする」


「いや、鶏ガラの話ではなくてヨ」


「モナカ。麺の加水率は30%程度に抑えてくれ。多いと麺がスープを吸わないので、今回作るすっきり味スープには向かないんだ。ただ、その分硬い生地になるから、麺打ちには体力がいるはずだ。必要なら体力自慢の男を調達する」

「う、うん。分かった。それでやってみる」


「いや、麺打ちの話でもなくてヨ」


「スクナ。よく叉焼を見つけてきたな。それでは、漬けだれというものを作ってもらいたい。醤油に砂糖、酒、刻んだ生姜、それに香草などをいろいろあしらって、それに叉焼を漬け込むんだ。お前好みでいいからそういう叉焼を作ってくれ」

「う、うん。分かった。それでやってみる」


「いや、叉焼の話でもなくてヨ」


「ベータは、作ったタレにスクナの作った漬けだれを、スプーン1杯程度でいいから入れてみろ。タレの香りが補強できるはずだ」

「あ、はい。分かりました。そうしてみます」


「いや、タレの話でもな……聞けヨ!!」


「ああっ、びくりした。なんだ、ミノウいたのか」

「いたのか、ではないのだヨ。さっき挨拶したではないかヨ」


「そうだっけ? スクナはどうした?」

「だからそれもさっき言ったヨ!」

「そもそもたったいま、作業の指示をしていたノだ」


「オウミ、なんかミノウの機嫌が悪いようなのだが」

「う、うん。分かった。それでやってみるノだ」


「なんでお前がコピーしてんだよ!!」

「いや、それは、魔が差したというか、流れに乗ったというか。それよりユウ。ミノウが重大発表しているノだよ?」


「なんだ、ミノウどうした?」

「だから我は、お主の眷属を辞めるということを」


「麺は細めに、スープは濃いめに」

「最初に戻っているヨ?! 757文字も費やして振り出しに戻すでないヨ」


 ちくしょう。誤魔化されやがれへん。


「スクナ。これはミノウがお前と材料調達に行ってからだよな。どういうことか知っているのなら、俺に分かるように説明してくれないか」

「……」

「ス、スクナ? そんな言いにくいことなのか」


「てへっ」

「は?」

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