第279話 シロトリの隠し事

「ユウさん。誰かがガメたとか、複数人いるとか、どうしてそんなことが言えるの?」

「トップが腐敗していればそうなる、という話さ」


 といってユウさんはナガタキ様を見た。ナガタキ様を?


「な、なによ、その尊敬のまなざしは」

「してねぇよ!! どう歪曲したら正反対の受け取り方ができるんだよ」


「正反対ってことは、私に惚れたってこと?」

「それは親衛隊が認めませんよ!!」

「おかしな主従キタ━━━(゜∀゜)━━━!!!!」


 ほんと、おかしな人たちね。


「おいスクナ。おかしな人たちの中に、俺まで混ぜただろ」

「混ぜました シレッ」

「シレッじゃねぇよ。良く聞け。犯人はこいつらだ」

「え?」


「「はぁぁぁ?!」」


「はぁ、とか言えた義理かよ、シロトリ! そもそもイッコウが妖狐とか嘘っぱちだったじゃねぇか」

「あ、いや、それは、こちらの勘違いで」


「5年前に捨てられたイッコウが野生化して一揆を起こしたって? それもウソだったろう」

「あ、いや、それも、こちらの勘違いで」


 返事が全部同じじゃないの。まるで不正を指摘されたどこかの国会議員のような。


「それにしてはえらく具体的な数字を出してたな?」

「あ、いや、それは、その頃に一揆が悪化したもので、多分そうじゃないかなって」


「多分なんていう言い方がじゃなかったぞ。それに、決算書の作成を遅らせる原因にイッコウを使っただろ」

「あ、いや、それは、秘書がやったことで」


 どこかの国会議員か!


「俺たちがグジョウに行くと言ったとき、やたらと反対していたな?」

「あ、いや、それは、他にも被害が出ていたので」


「お前は、いちいち『あ、いや、それは』をつけないと話ができんのか!!」

「あ、いや、それは、できますよ?」


「じゃあ、そうしろよ! 誤魔化そうとするからそういうことになるんだ」

「……はい、すみません」


 あ、「「あ、いや、それは」がなくなった?


「グジョウに行くと言ったら特に理由も言わずに反対した。そのうち何故かナガタキは泣き出した。さらにそのあと、突然俺たちについて行くと言い出した。スクナ、この脈絡のなさはおかしいとは思わなかったか?」

「あ、そう、そう言われればそのような」


「俺たちが真実に近づくのが心配で、付いて来たかったんだろ。監視するためか、邪魔をするためか?」

「あ、いや、それは」

「戻ってんじゃないわよ!!」


 あれ? 私が言おうとしたのに、ナガタキ様に先にツッコまれた?!


「シロトリ。私になにか隠し事してるわね。ここで全部白状しなさい!」

「ナガタキ、自分だけは知らなかったで誤魔化すつもりか?」

「ほりゃりゃらほいのほーのほひ?」


「ほひじゃねぇよ。自分だけ良い子になってこの場を逃れるつもりかよ。お前も同罪だろうが!」

「ユウ様、それは違います!」


「シロトリ。ようやく白状する気になったか?」

「……はい。すべてお話します。でも、本当にナガタキ様は知らないのですよ」


「ナガタキが当主である以上は、まったく知らないわけはない。どこまでお前が関わっているんだ?」


「ねぇ、ユウさん、どういうこと? この人たちなにを誤魔化そうとしているの?」

「これだけウソを積み重ねてまで、誤魔化そうとしているのは」



「続くノだ」

「ここでか! 短いなおい」

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