第39話
「……さすがは北の勇者と東の勇者といったところか……」
純王国ホワイトの王、ルークはにやりと笑う。
「……この子たちが勇者とわかって襲ってきたの? なかなか命知らずな坊やなのね。あなた」
「このオレに『坊や』、か。まあ仕方のないことか……。……貴様は元西の魔王だからな」
「……!」
ルークはリリスに向かって元西の魔王と告げる。アルカとシェルドはルークが何を言っているのかさっぱり理解できないでいた。
「そこのホワイトエルフ! いくら師匠が強そうだからって、魔王呼ばわりするなんて失礼じゃないですか!」
「失礼? むしろ最大限の褒め言葉だと思うがな。もっとも、この場合は事実を述べているだけでしかないが……」
「意味のわからないことを……!」とシェルドが叫ぶ。
「アルカちゃん、シェルドくん、落ち着きなさい。……ルークと言ったわね。南の魔王アロワさんが言ったように、私たちも魔族と連合国が戦争を起こすことは避けたいの。この集落をまだ襲うというのなら……、私があなたを殺すわ……!」
リリスは今までに見せたことのない紫色のオーラを……敵意をルークに向ける……。その圧倒的なプレッシャーはルークや純王国ホワイトの兵士たちだけでなく、味方であるアロワ、アルカ、シェルドたちをも飲み込む。
「なんて圧力なんだ……。これが先生の力の一端……!? まるで、魔族のような……」
「シェルドくん! 何を馬鹿なことを言ってるんですか!? 先生が魔族なわけ……魔王なわけ……」
アルカはシェルドに諭すように言葉を送るが……、アルカもリリスが放つ禍々しいプレッシャーを前に、本当にリリスが『元西の魔王』なのではないかと疑ってしまっていた。
「師匠が魔王だなんて、そんなことありえません……!」とアルカは呟く。
強大な力の波動を前に、ルークは額に冷や汗をかきながら、引きつった笑いを見せる……。
「……素晴らしい力だ……。保険をかけていて良かった……」
「保険ですって?」
「ああ……。その最高の力……、オレのものにしてやる!」
ルークが合図を送ると、十三人の同種族の魔族が手枷をされた状態で現れる。
「あ、あれはサキュバスか!? サキュバスが十三人……、まさか!? 姉御ぉ! 今すぐ逃げるんだ!」
アロワが叫ぶ……。しかし、もう遅かった。ルークがサキュバスたちに命令を下す。
「さあ、サキュバスども! 一族を殺されたくなければあの女に……元西の魔王リリスに喰らわせるのだ。貴様らの最強の呪術……『
サキュバスたちの目から強力な桃色の光が放たれ、集落一帯を覆う……。あまりの光の強さにアルカたちは目が眩んでしまう。光が消えてしばらくすると、アルカたちの視界も戻ってきた。
「一体何が起こったというんだ……? ……先生、大丈夫ですか!?」
シェルドは身を案じる言葉をリリスに投げかけるが、返事はない……。
「先生、どうしたんですか!? 返事をしてください!」
明らかにリリスの様子がおかしくなっている。リリスの顔は紅潮し、だらしない笑顔を浮かべていた。
「ルーク様……。このリリス。貴方様のためにこの身を捧げます……!」
「な、何を口走っているんですか!? 師匠!」
リリスの不可解な言動にアルカとシェルドは動揺を隠せない。
「ルーク、てめえ……。よくも姉御を……」
アロワはルークを睨みつける。ルークは王とは思えない下品な笑みをアルカたちに見せつけるのだった。
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