第38話その幼女、したたかである。
何て素晴らしい朝だろうか!
何て素晴らしかった昨日の夜だろうか!
ユミルは最高だ。
分かっていた事だが、天使だ。
大天使ユミルンだ!
「んもうっ! 何変な事呟いているんですかぁ。恥ずかしいですよぉ」
「ふへへ、幸せすぎておかしくなってるのかも」
「ふふふ、こんな時間が続いて欲しいって私も思います」
「さて、俺たちがいるのはどこだろうか?
どんなカッコだろうか?
声に出して言って見ようか。
さぁさぁさぁさぁ!」
「もう、いい加減にしないと怒りますよ?」
ぷっくりと頬を膨らませたユミル。
これ以上は危険だとベットから起床する。
「今日は私は如何していたらいいですか? エルフの国へと行くのですよね?」
服を着て、出かける準備を済ませつつ、彼女の問いかけに答える。
「うん。一緒に行く? と言うか、離れたくないから一緒に行こう?」
「でも、人を連れてくるのですよね? ミラさんに聞いた事があるんですけど……荷車だけは絶対に止めておけって」
あー……そんな事もあったねぇ。
「まあ、二人なら大丈夫でしょ。エルフの女の子はまだ小さな幼女だし」
「ああ、それで……」
「うん? どれで?」
「いや、エルフの国から連れ出さなかった理由?」
ぐぬぬ、慣れてきたのか、遠慮がなくなってきた。
だが、心身共にすっきりしている俺はそんな些細な事には動じないぜ。
「何言ってのさ、俺の彼女は5人だけだから」
「だけ、ですか。まあ、ケンヤさん、激しいからそれくらい必要かも知れませんが」
「でへへ」
「あ、その笑い方はダメです。しゃきっとして」
「あ、はい」
と、朝にそんなやり取りをしていた俺達だが、お昼過ぎにはもうエルフの里へと来ていた。
「だからならんと言っとろうが!」
「いえ長老、今回はですね。
国のトップが討伐証明の為に、石守りの彼女に証言しに来て欲しいって依頼なんですよ。
断るなら断るで、帝国のトップとの話し合いには長老が応じてくださいよ?」
と、俺はひそかに会話して感じていた長老の会談嫌いを突く。
「ふ、ふむぅ。まあ、おぬしは信頼しとる。
約束をやぶっとらんからの。
まあ、直ぐに戻ってくると言うのであれば、許可せんこともないの。
態々、このわしが出向いてやるほどの事でもないじゃろうしのう」
「ええ、エルフにとって数年程度は直ぐでしょうから、ある程度人の国を回って、数年以内に戻ってくると誓いましょう」
「な、長くないかの?」
「ながくねーよ、はげぇ」
「はげとらんわぁ!」
よし、いいタイミングでアンジェリカが代わってくれた。これなら、数年は一緒に居られるな。
彼女の事だから9年と11ヶ月は帰らないとか言い出しそうだが。
その頃には色々落ち着いているだろうし、俺がこっちに来てもいい。アンジェもぴっちぴちの食べ時まっさかりだろう。
「ねぇ、ちょっとあんた、王国の人間なのよね? 何で帝国のトップの話があんたから出てくんのよ」
アンジェと長老がヒートアップするなか、ジェシカが漸く聞きたい事を聞けると近づいてきた。
「いやぁ、この前相談に来たじゃん? あの時の事情で帝国に調べもの行ったら色々巻き込まれちゃってさ」
「絶対嘘だよね? ランスは人が良いから自分から突っ込んで行ったとしか思えないんだけど……」
と、後ろから声がしたので振り向けば、久々に会う彼の姿があった。
「おお、ヘルラン! 久々ぁ!」
ジェシカやヘルランと挨拶を交わし、ユミルを紹介して、場が落ち着いてきた頃、帝国で聞いた話をこっちでもしてみた。
300年前の全人種が大終結して勇者引き連れて魔人と戦ったと言う話をこちらではどう伝わっているのかと気になったのだ。
「300年前かぁ、ひいおじいちゃんは当事者よね? ならおじいちゃんも色々聞いてるんじゃないかしら?」
「そうだね。年齢的にそのくらいだと思うけど。あれは多分覚えてないよ? 覚えてれば、偉そうにふんぞり返ってランスに言っただろうからね」
ヘルランはアンジェリカに髭を引っ張られている長老を指して言う。
「間違いないわね……それに、うちは基本的に役割決めたらノータッチだものねぇ。良くないとは思うものの、皆しっかりやるからそれで回ってるのよね。忘れてしまうのも無理は無いのかも知れない」
「あ、あの、妖精さん達に会いに行く事も出来るんですか? エルフの国だけ?」
「あはは、定義的にはエルフも妖精種なんだけどね。人種とほぼ一緒の外見だから仕方が無いけど」
「わわわ、そうなんですか。ごめんなさい」
「気にしなくていいわ。後でアンジェに案内して貰えば? アンジェが連れて来たってなれば、攻撃される事は無いでしょ。されてもこいつが居ればどうとでもなるだろうし」
こいつとか止めて、ユミルが勘違いして嫉妬したらどうするんだよ。
そのせいで相手してくれなくなったらエルフの里滅ぼすからな?
「ランス、その程度で滅ぼすの止めてくれないかな? 僕らが可哀そう過ぎるだろう?」
「あれ? 声に出てた? ほらぁ、俺、嫁を大事にする男だから?」
「あんた、重すぎても嫌われるわよ? 程ほどにしなさいよ」
「そうです。私は一緒に居られればそれでいいですから」
な、ん、だ、と……大天使すぎる。
「ランスさま、ハゲの討伐が完了しました。ささっと出て行きましょう。こんな森」
「こら、アンジェ! こんな森って言うんじゃないわよ。次は私が治めるんだからね?」
「まぁまぁ、アンジェもいきなり願いが叶ったから急いで現実のものにしたいだけなんだよ」
その後、ユミルがフェアリーを見たがったが、アンジェリカが『あんな羽虫を見ても仕方が無い』と先を急かした為後回しになった。
ユミルに対して口が悪いなと少し思ったが、同族よりもよっぽど丁寧に喋っているので注意するのも少し気が引けた。
さて、どうやって運ぼうか。
そう考えて居たら、両サイドから『だいしゅきホールド』という超絶素晴らしいスキルを披露してもらったので、俺はそのまま落ちないようにお尻を支えて走り出した。
「そう言えば、エルフが人の町に入ったら、攫われたりしないでしょうか? 心配です」
と、ユミルに懸念事項を確認された。
確かにそれは怖いな。
「そんなには弱くないのだ。と、言いたいところなのだが……うぅ、でもランス様を見た後だと、ゴミみたいな力しかない、としか言いようがない、のだ……」
段々と自信が無くなって行くアンジェ。
『ランスさんと比べたら、多分人種全員がそうだとおもうよ』とユミルにフォローされて意気投合を始めた。
何にせよ、面倒ごとは回避できた方が良い。
耳を隠せるようにした方が良いなとここから一番近くて一番毛並みが良い魔物を教えて貰って向かった。その魔物はブラックタイガー。適正は覚えてないが、割と高めだった気がする。取りあえずで5匹倒した。
「うう、何度見ても何か光ったと思った瞬間にはもう魔物が死んでる。どういう事?」
「ふふ、甘いのだ。私はたまに魔法が当ってる所を確認できるのだ」
と、良く分からない張り合い方をしているアンジェ。
性欲が満たされた今、こういう癒し的存在も良いかも知れないな。
夜は子供部屋に行ってもらうが。
おお、良いね。お父さんって感じだ。
じゃあ、可愛い娘と嫁に、お洋服でもプレゼントしようかな。どれどれ
「『クリエイトレザー』『クリエイトドレス』『クリエイトブーツ』『クリエイトサークレット』」
おおう。凄いな。流石クリエイトシリーズ。黒の毛皮のドレスとブーツ、猫耳がついたヘッドホン形のヘアバントがイメージ通りに出来た。
すっごい雑なイメージだったのに、補完してより高度な物に仕上がっている。
と言うかなんかちょっとエロい。
うんうん。これは絶対に似合う。だが、どこで着せようか。
ああ、更衣室を作ればいいだけだ。
「さあ、これを着るのだ。我が嫁と娘よ!」
「よ、嫁は私なのだ!」
「うふふ、そうですねぇ」
はいはい、と流さんばかりに二人分の服を抱えてアンジェの背を押すユミル。
あれだけ、気弱な感じだった子供のユミルがお姉さんぶったキャラに……人の成長とは早いものだ。
いや、実際お姉さんなんだけど。流石に聞こえたら怒られるな。
「聞こえてますよっ!」
おおう。バレてた。
などと思っていると、艶やかな衣装を身に纏った二人が自分が着たものと相手が着たものを確認しあいながら出てきた。
大きさが違うだけで、同じものなのだけど。
「凄く似合っている。二人とも最高に可愛いぞ。さあ、おいでっ!」
そう言って、両手を広げた。
二人は変な意地悪とかしない子なので、ちゃんと両側から抱きしめてくれた。
待ってましたと俺はお尻を支える。
そしてちょっとモミモミする。
「くすぐったいのだっ!」
「ひゃぁぁん」
「……何か艶っぽいのだ。どうやったのだ?」
「し、知りませんよぉ。ひゃ、ひゃぁぁん。ランスさん!!」
「ご、ごめん。アンジェが知りたそうだったから……」
触りたかっただけだがそれでも許されてしまう時、と言うのが確かにある。
それが今だと俺は確信した。
その後、アンジェがひゃぁぁんと艶を出す練習する度にユミルにペシペシと叩かれた。
まるでわが子の教育で口論する父と母のようである。
「まだ、先の話だけど、子供って良いかも知れないね」
「……はい。私も思っていました」
「なんの話なのだ?」
などと遊びを入れつつ移動していたら、あっという間に帝国に戻ってきていた。
早速、早めに用事を済ませてしまおうと、ハルードラのところへと足を運んだ。
あのバルコニーから勝手に入って行き、歩くメイドさんに声をかけて呼んでもらった。メイドさんは少しパニック気味だったが、ちゃんと対応してくれた。
将軍は、『向かうのが今日なのかと思っていました。まさか今日連れてくるとは……』と乾いた笑いを響かせた。
今日はティファは居ないので、余計な茶々が入らないのでさくさく話が進む事だろう。
「確かに、文献に載るエルフの耳を持つもの。ですが、これで成体なのですか?」
「いや、この子はまだ子供だ。彼女の一家が封印石を見守っていたんだ」
「ねぇねぇランス様、私は一緒に来られたから逆に嬉しいのだが、証明ならランス様の魔法使えば直ぐに分からせられるんじゃないか?」
「そうなんだけど、町で攻撃魔法使うと犯罪になっちゃうんだよ。
偉いやつなんて皆わからずやだろう?
証明の為につれて来いって言うからさ。ごめんなぁ」
と、アンジェに労をねぎらうように頭をなでなでする。
「魔法を見せて欲しいといえば、他のも見せて貰えるのだろうか?」
何故か彼の頬が引き攣っていると思ったら、思い切り『ブリザード』使った事を思い出した。
少し気まずい思いをしつつも、言葉を返す。
「え? 良いけど……もしかしてそれで良かったり?」
「いや、公的な確認はどちらにしても欲しかった。
キミの言うとおり、権力者とはわからずやが多いんだ。
各所に分からせる為に実際にエルフの管理者から言葉を貰ったと言えば納得させられる。
キミに肩書きがあれば尚、良かったのだが……」
「Sランク冒険者の肩書きならあるぞ?」
「……では、キミが王国の侯爵家をねじ伏せたSランクかい?」
「あはは、ディケンズの野朗はクソだったからなぁ……肩書きはそれで足りそうか?」
「いや、十分だ。これで独立派も、私が引退する事で納得させられるだろう」
まぁ、あそこまで派手に嘘を振りまいて、生きているとは言え皇族を拉致監禁しちゃったんだもんな。
引退で済めば良い方か。
「っておい、俺への協力はどうすんだよ。それが済むまで権力手放すなよ」
そう彼には、マジックアイテムの副作用だろう感情の反転をどう元に戻せば良いのか、それを共に調べてくれと協力を取り付けたのだ。
「ああ、勿論だ。とは言え、キミの願いに対して出来る協力といえば、国の研究チームとルジャールに連絡を取って共に詳しい話を聞きながら知識を出し合うくらいしか思いつかないが」
それはそうだなと感じて、適当に流すように「んじゃ、取り敢えずはそれでいいや」と答えた。
その後、もう大事な話は大体終わったかな。と、茶化すように問いかける。
「ティファとはあれからどうなったんだ? 嫁にすんの?」と。
「いやいや、そんな事出来る訳ないよ。そもそもそんな関係じゃないんだ。
彼女は叔父の様な存在として愛してくれているのだよ。光栄な事にね」
「そっか。じゃあ、ガイールが頑張って口説き落とせればいい感じに収まるんかな?」
「え? 一体何の話だい?」
ふむ、知らないのか。
まあ、それはそれでいいや。関係ないしスルーしておこう。
それにしてもこれで殆どの事が片付いたと思っていいのかな?
後、残っているのが、メインであるさっきマジックアイテムの事な。
レイドボスの事も忘れちゃいけないよな。
ぶっちゃけ大きさ的に魔人より性質が悪いと思うし。
強さはゲームと同じならアシュタロトと同格かなぁ?
火力に関してはアシュタロトのが上だと思うけど。
HP量はレイドボスの方が上だろうな。
後、攻撃範囲の広さがヤバイ。
他は追加された案件、皇帝の転生が成功したのか否か。
と言うか、成功してても死んでいりゃそれで良いんだけど。
最後は、ミラが魔物とかって意味分からない話だな。
これは聞いておこう。
「なあ、ミラが魔物ってさ、魔石以外で何か人と違う所あるの? どう見ても違いが分からなかったんだけど?」
「いや、済まないが私も正確な所はわからない。だが、Sランク冒険者のキミがお相手ならこれ以上は無い。少なくとも私の陣営からは手を出すような真似はしないよ。私の願いは平和だからね」
「おお、その言葉が聞きたかった。ならば、俺があんたらに敵対する理由は無いな。逆に権力捨てないで居て欲しいくらいだ」
彼は「そう言う訳にはいかないよ」と少し苦い笑いを返した。
んじゃ、お暇しようかね。
「あれ? ケンヤさん、魔法は使わないんですか? 私もみたいなぁ」
ああ、そうだった。
アンジェが「ケンヤさんって?」と首をかしげている。
ユミルは真面目だな。さっきまではアンジェに合わせていたけど、帝国についたから戻したのだろう。
俺としてはもうどちらでも良いのだけど。
さてと、どんな魔法にしようかな。
よし。あの爆発娘に対抗して、気合入れてやろうじゃねぇか。
「ガトリング『エクスプロージョン』なんちゃって」
ババババババと連続した聞きなれない爆発音が続き、空に煙を残していく。
お空に煙でエクスプロージョンと書いた。
爆発総数500発程使ってやった。
町中の人間が外に出てきて空を指差している。
「なるほど、これは倒せますね……ははは」
「実際にはこんなの児戯と思えるほどの戦いだったぞ。ランスさまは剣でも戦っていた。至上最強の英雄だ」
『これ以上ですか』と呟くハルードラはそれ以上に言葉が出なかったようだ。
えっへんとぺったぺたな胸を張るアンジェに反応したのはユミルだった。
「えっ!? アンジェちゃん実際に見てたの!?」
「ふへへ、そうなのだ! 一生の自慢なのだ! でも……里の奴ら馬鹿だから信じなかったのだ……あっ、魔法で里をぶっ飛ばして貰おうと思っていたのだ。馬鹿は痛い思いをしないと気が付かないのだ」
と、こちらを期待したような目で見上げるアンジェリカ。
キミ、割と非情だよね?
早々にアンジェを切り捨てた癖に、戻ったら責務だなんだと言い出す里の奴らもどうなの、って感じだが。
「こらこら、そんな事しないからね」とアンジェのほっぺをプニりながら注意する。
よし、もう用事は済んだだろう。
解決策が届くのを待ちながらユミルと堕落した生活を送ろう。
何という
二人を連れて、即効で宿を取った。
だが、そこで問題が発生した。
「何故私が別の部屋なのだ? 嫌いなのか? 私が嫌いなのか……うぁぁぁぁぁん」
空手家がオスと言いそうなポーズでガン泣きを始めたアンジェ。
これも男泣きと言うのだろうか。
そんな事を思いつつも頭を悩ませた。
世の中のお父さんとお母さんは如何しているのだろうかと。
ちらりとユミルに視線を送る。
首をブンブンと横に振った。解決策は無いのだろう。
「分かったよ。じゃあ、アンジェ、一緒に寝よう。いいかな?」
「ほ、本当なのか!? 当然いいのだぁぁ」
「え”っ!?」
何故かユミルに汚物を見るような視線を送られた。
その視線を今はあえてスルーした。そして深夜に彼女の布団に潜り込んで、言うのだ。寝かせてきたよ。ここからは大人の時間だ、と。
アンジェはトコトコとユミルの前に移動して、指を差した。
「ユミル! 今の『え”っ』は何なのだ! 私はこう見えてもユミルより年上なのだ。20年も生きているのだ。半端にしか成長できなかったものは、死ぬまで一人で居ろとでもいうつもりなのか!?」
彼女の目は本気の怒りだった。いや、悲しみとも言えた。
アンジェの頭をポンポンして抱きしめた。
「約束しただろう。何年か様子見て、それでも良ければ妻として迎えるって。選ぶのはアンジェだ。後は待つだけ。心配は要らないんだよ」
泣き出してしまったアンジェのほっぺにちゅっとキスしてさあお休みしようと布団へと連れて行く。
しがみ付いて離れない彼女の背をなでて寝かしつけようとしていたら、ユミルが目元を赤くして立っていた。
「あの、アンジェちゃんに謝りたくて……その知らなかったの。アンジェちゃんが実は大人だったって。これからはそんな事言わないし思わないから……ごめんなさい」
「そう、なのだ……大人なのだ。これからはちゃんと認めるのなら許してやるのだ」
「よし、じゃあ、今日は皆で寝ようか」
と、ユミルも引き寄せて三人でベットインした。
当然、健全にだ。
ごめんなアンジェ、流石に今はまだ無理だ。
せめて、もう成長しないと分からせるくらい長く一緒に居てくれ。そうすれば俺も踏ん切りが付くから。
そんな事を考えつつ、つらい立場に居るアンジェを立てて、健全に眠りに付いた。
◇◆◇◆◇
皆が寝静まった頃、
一人の少女は、勝ち誇った様に声を上げた。
「クックック、こんななりで大人な訳が無いのだ。だが、これでもう子供なんて言わせないのだ。わーっはっは」
隙があれば、さりげなく取ってあったもう一部屋の方へ移ろうと思っていた男は当然起きていた。
それを知っていて、もしかしたらベットからベットへと御持ち出しされてされてしまうかもしれないと、感じていた少女も起きていた。
陽気に笑う幼女は知らない。これからは、気兼ねなく寝たら放置しようと思われ始めた事を。
幼女は知らない。これからは、躾けるという事を覚えなければいけないと決意を新たにした少女が居る事を。
そうして、名も知らぬ、帝国の宿屋の夜は更けていく。
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