第20話女の本能を刺激する為、力を示す。

 翌朝、目が覚めた俺は、このままではいけないと真剣に悩んでいた。

 今日も、ミラをベットに引き込んだらしい。

 手はいつの間にか可愛いお尻をキュッと掴んでいる。柔らかい。


「本当にこのままじゃマズイ。俺、おかしくなる……」

「……4日目でもう遠慮すらないのね」


 抑えきれない性欲を持て余していたところに、少し呆れ気味にそう言われて我に返る。その呆れ顔にすら、恐怖が色濃く残っているのが伺えてしまったから。


 だが、我に返ってみてもこの疼きは止まらない。

 学校へ行ってみたが当然一つも注目されず、可愛い女の子を遠巻きに眺めるだけで終わった。ミラのが可愛いが手が出せないのでこの件では意味が無い。

 早急にどうすればモテるのかを考えなければならない。

 モテ要素ってこの前考えたよな。一つ一つ考えていこう。


 容姿、もう見せた。ダメだった。

 権力、持ってないです。

 お金、ふむ。札束ビンタか。悪くない。だが、見せ付け方が分からない……服装は既にお高いのだし。

 強さ、これもなぁ……たいした事されてないのに暴力振るう訳にもイカンし。どうやって見せようか。


 いや、あれだ。


 ラノベに習ってドラゴン退治で国民大歓声。

 大物ドラゴンが生息して居るのは火山と氷山か。一日コースだな。

 いや、その前にそもそもあそこ人間の領土じゃねぇし、それを勝手にやるのは宜しくないような気が……

 他に強大な魔物はいないのか?


「なぁ、ミラ」

「何?」

「この国で一番恐れられてる強力な魔物って何だ?」

「そうね……黒いオーガが有名ね。Sランクでも数人居ないと倒せないと言われている。魔素蓄積させて外に出てくタイプだから、あれが人の世に出たら大変だからって年に一度、帝国と王国で最高位冒険者を出し合って討伐してるほどだし」


 あー、いいね。片道3時間。レベルは160付近。

 だけど……討伐されてる奴か。インパクト薄くね?

 いや、そうでもないか。最高位と肩を並べるなら。


「よし、今日は学校休んでそれ討伐行こう」

「はぁ? もうサボるの?」

「いや、ほら実績があれば馬鹿に絡まれずに済むだろ?」

「確かにオーガを倒せる人に自分からちょっかい出すほどの馬鹿は少ないでしょうけど、折角昨日楽しかったのに……」

「ふはは、行きたくないと駄々っ子してた癖に。まあ、明日は行くから」


 お、久々の『ぷいっ』が出た。

 言葉にするのであれば『ふんっ、ちょっとの間だけ許してあげないんだからっ』と言う感じだ。


「あー、流石に一人で学校は危険だからダメだが、お留守番でもいいぞ? 金は自由に使っていいし」

「えっ!? やだっ、一緒に行く!」

「抱っこ3時間だけど、帰りは荷車になるよ。平気?」


 コクコクと必死に同意を示す彼女。愛らしいし好ましいが、同時に少しこれでいいのかと思う。依存させたのは俺なのに後から不安になるとか……俺って……


 いや、まあいいか。多分そこは学校が解決してくれるはずだ。

 そう、ちゃんと人付き合いをすれば依存は治るのだ。

 いや、治らなくてもエッチ解禁になればそれでいいんだけど。

 寧ろ俺が依存するねっ! 全力で!


 何にせよ、オーガを狩りまくって何匹か持ち帰ってくるとするか。 

 あ、迷宮の方向だしちょっと覗いていこうか。もうそろそろ沸いてると思うし。


「よし、おいでっ」


 両手を広げてスマイルを一つ送った。

 だが、悲しい事にすっぱい物でも食べたかのような顔で抱きついてきた。


 何でそんな顔? てかそのしわしわなお口やめなさい! ウンコ出てきそうだよ? いてっ! 分かった。ウンコは出ないから、殴るの止めて。


 え? その子ども扱いが気に入らない? 大人の扱いしてるからエロい事したいんだよ? そっちじゃない? お願い……します……どうか……そっちで……

 と、彼女を連れて大迷宮30階層にやってきた。


「ここ、違う……」

「うん。でもそれ強くなって置かないといけないから。取り合えずこの迷宮制覇してから行くよ」

「……何を言ってるの? それ、オーガ討伐より偉業」

「ミラこそ何言ってるんだ。ダンジョンは死体残らないだろ。どうやって見せるんだよ。多分此処のボスの魔石見せたってなんだかわかってくれねぇぞ。俺のランクだって合ってないんだから」


 ミラは少し考えてハッとすると悲壮感溢れる顔に変わった。


「ランスに……ランスに常識で負けた……屈辱」

「ちょ、酷くね? 『シールド』『マジックシールド』『ソナー』」


 ミラと自分にバフをかけて進んで行く。良かった。普通に沸いてる。


「待って、流石に降ろして。危険でしょう?」

「何言ってんの、降ろしたほうが危険だから。あっ! それとも『スリープ』で寝とく? あっという間だよ。夜寝れなくなるかもだけど」

「……し、信じるから『スリープ』は止めて。私もランスの事知って置きたいし」


 命が掛かっているのだし、自分だけ寝ているのは嫌か。


「分かった。少なくとも50階のボスまでは……いや、危険は無いな。油断しすぎない限りは」


 『そ、そう』と彼女の口癖の様な相槌あいづちも少し困惑気味だ。

 さっさと終わらせよう。と『ライトニングボルト』で仕留めていく。一人の時は『エクスプロージョン』を好んで打つけど、あれグロいんだよな。

 あとついネタとかやりたくなっちゃうし。

 ミラ相手に汚い花火だ。なんてネタをぶっこんだら人格疑われそう。

 『ライトニングボルト』なら少し焦げ臭い程度で済むし、駆け抜けてるから匂いも分からないだろうな。


「な、何をしてるの?」

「『ライトニングボルト』だぞ。他のでも良いんだけど、これが一番安心だから」

「何で『ライトニングボルト』で一撃なの?」

「魔力が高すぎるからなぁ。本当は2発以上かかるんだけど」

「……本来『ライトニングボルト』は牽制の為や殺さない為に使う魔法。ここでは何度撃っても倒せない、はず」


 いや、それは魔力低すぎでしょ。幾らなんでもおかしいレベル。2発以上といったのは適正での話だぞ。

 あーでもゲームみたいに上げるステータスを自分で決めたりとか出来ないし、それ以前にレベルが低いからありえるのかな?

 でも殺さないで攻撃出来る点は凄くいいな。


「それはそれで便利そうだな。俺が攻撃魔法使ったら殺しちゃうから」


 そんな話をしながら駆け下りていく。

 そして、ボスのベヒーモスですら何の問題も無く終了。まあ、二回目だし当たり前か。

 さて、ドロップは……

 キ、キター! 杖と輝く石ころー!

 『目利き』『鑑定』


 聖光石の欠片

 聖光石の欠片と呼ばれているが、実際には別物。

 強い力の秘めた鉱石。

 他の鉱石と混じり合わせた時、真価を発揮する。


 きましたよ、強化石。

 フィールドじゃ落ちないけど、ダンジョンならゲットできるのか。これは地下墓地も行って置くべきだな。ボスは全部に強化石ドロップあるし。


 後は杖だな。


 氷槍の杖

 魔法『アイスランス』を無詠唱で発動可能。

 使用者のMPを使用して発動。

 魔力は適用されず固定値で発動。


 これ、初心者にとってはくっそ強い装備なんだよな。魔力が150固定の威力で『アイスランス』を打てる杖だから。けど俺には無意味。


「ミラ、これ持ってアイスランスって言ってごらん」

「? 『アイスランス』――っ!? 何これっ!?」


 尖った氷が即座に空中に生成されて瞬時に飛んでいく。

 ガガガンッと壁にぶつかり氷が砕けた。その音にビクリと激しく震えたミラ。

 ゆっくりと首を捻り疑問の限りを問いかけた。


「装備するとSランク魔法使いレベルの『アイスランス』が使える杖。威力は固定だから俺にとってはごみ装備かな。そもそも使えるし『アイスランス』」


 杖から出た魔法よりも数倍大きい氷の槍が壁に飛ぶ。

 そう言えば、魔法使える装備落とすのって、180レベル以上のボス限定だったか。スキルの方は低レベルでも少しはあるんだけど。


「流石、大迷宮の主ね。国宝級じゃない。どうするのこれ」

「そうだなぁ。ご機嫌取りに献上してもいいけど、ミラのレベル上げに使ってからでもいいかな」

「レベル上げ? あっ、ランクの事?」

「そうそう。魔物が入ってこれない魔法があるからその上からめった撃ちにすれば安全に強くなれる。強さがあれば、少しの時間離れても安心だから」

「……いらない。王様のご機嫌とって安全にすればいい」


 ありゃ、言葉選び間違えた。離れるって言った瞬間、表情が張り詰めたよ。

 依存しきってきたなぁ。エッチさせてくれていたら俺も一緒に落ちていたのだろうな。

 依存しあったカップル……やばい、かなり憧れる。どろどろな生活サイコー。


「じゃあ、杖は持ってて。袋に入れても頭出ちゃうから。オーガの所行くまでよろしく」


 そう言って移動を開始。場所は王国と帝国の国境沿い、けどあの名も無き村よりもずっと北。そっちに直接向かえばあの村とそこまで距離は変わらない所にある。

 途中で国境の壁に当たり、そのままつたって北に進むと、壁がなくなっている場所にたどり着いた。


「多分ここ。壁作っても戦いで壊れちゃうから放置されてる。此処を越えられる猛者なら普通に壁なんて役立たないから」

「なるほどね。『シールド』『ソナー』さて、行こうか」


 物理だけだから『シールド』だけで良いだろう。『リフレクトシールド』何度かつけたけど、一度も食らわないから意味無いんだよな。

 さて、今回はどう倒そうか。ああ、『アイスランス』で行こう。んで献上品も『アイスランス』撃てる杖。うむ、話題の種に良さそうだ。


 それにしても、自然豊かで綺麗な草原なんだけどなぁ。荒ぶったオーガが居るせいで台無しだよ。という事で視線をさーっと流しながら『アイスランス』を三桁ほどばら撒いた。

 『ひぇっ』といきなりお尻触られてびっくりした様な声を上げるミラ。

 実際にお尻も触ってみたが、そんな声は出なかった。

 黙ったままジト目を贈られた。

 やりすぎて慣れてしまったのかも知れない。自重しよう。


「さて、何体か、拾わないとな。『クリエイトストーン』んじゃ、次はこっちに乗って」


 ほいほいほいとたった今作った荷車にブラックオーガを放り投げた。余り多くてもと思い、5体に留めた。ミラの乗る場所はバケットシートの様な席の着いた御者席だ。捕まる棒も付いているし、シートベルトの変わりになるものもつけてある。

 それほどにこのスピードでの荷台乗りはしんどかったりもする。

 俺は彼女の悲鳴を浴びながら今日もひた走る。


 そして、王都に戻ってきたはいいのだが、外門で止められ、市民門で止められ、ギルドで大騒ぎされ、とても面倒だった。

 俺は女の子にちやほやされたいのだ。門では全員男だし、ギルドではギルドマスターを呼ばれてしまうし、これからの事を話そうとか意味の分からない方向へと話が進むし。杖の力だからと、もう嫌だと帰って来た。


「こんな筈じゃなかった」

「どうして、予定通りじゃない。力が認められれば、そういった依頼をされるは当然よ?」

「けど、定期的にオーガ倒しに行くのって面倒。まあ、レベル上げと思うしかないか。それならもっと他行きたいけど。ミラも毎回あれ乗るんだぞ?」

「えっ? だって持って帰るのは今回だけよね? ううん。『スリープ』がある。あっ! そうよ。ここで『スリープ』使って貰えばいいのだわ。うん。名案」


 やはり相当嫌だった様だ。抱っこと比べたら天と地。ボッコンボッコン飛び跳ねるからな。わっしょいわっしょい、てな具合で。やばい、むらむらして来た。


 てか、今日無駄骨じゃね? 多少騒がれたけど、あの貴族娘からしたらだから何? って感じだろうし、王様に呼ばれる程でも無いとダメそうだな。


 呼ばれたら呼ばれたで『貴族にしてやるから戦争行って来い』とか言われても困るしな。今戦争してないけど帝国が乱れてるみたいだし、今がチャーンスなんて言い出す可能性も考えられる。流石にそれは無いか。

 やるならもう準備してて噂くらい回っているはずだ。


 あー考えるの苦手だってのに、色々めんどくせぇ。もういいや。余りに酷い事をしてきたら、一度ボコボコにしてやればいいや。そう言うのが合法で出来るシステム無いかな?

 ミラに聞いてみよう。


「決闘はあるけど、それは貴族同士でやるものよ。それも本人じゃなく囲ってる冒険者出してね。でも、そこまで考えるほどまだ何もされていないよ?」

「あっ……そう言われてみれば、案内をすっぽかされただけか」

「うん。勿論先生が引く程危ないのだから奥の手を用意しておくのは重要だし、今日も無駄だったなんて事ないと思う。けど、ちょっと攻撃する前提すぎたから」


 確かにその通りだ。じゃ、普通に学校通ってせいよくを……ん?

 ああぁぁ! ミラの手前そう言う事にしただけでハーレム活動の一環だった。

 あいつらの対策としても真剣に考えたからすっかり忘れてたよ。

 いつの間にかあの貴族どもにハーレムを邪魔されている気になってたぜ。

 取り合えず放置だ放置。

 さてっと。すっきりした所で今日はもう寝ようかな。



 ◆◇◆◇◆


「ラ、ランス、起きてる? ……ホントに寝てる?」


 じっと顔を見つめて数十分観察し、起きていない事を確認する。

 そして、布団の間に潜り込んだ。


「よいしょ……おやすみ」


 彼女は恐怖を押さえ込む様に目を閉じ、今日も彼の横で眠りに就いた。

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