第62話 妥協
なんとなく不信感が沸いてきて聞いてみると、予想通り、彼は黙った。
そして深刻な顔をして、私に告げる。
「……まだ休んでた方が良いよ。誰が狙ってるかわからない」
「でも、まがりなりにも婚約者なんでしょう? クリスみたいに、誰かが様子を見に来るといけないし」
「クリス嬢だけだよ、そんな物好き」
「もう。社交界にも出たし、行かないわけにはいかないんじゃないの」
「……また複数人に襲われたら、いくら俺でも、守り切れないかもしれない」
「それなら私も戦うわ。身体は覚えている、そうでしょう?」
アランはそれきり、黙ってしまった。私は部屋に入り、クリスからもらった蒼いドレスを選び、着替えることにする。王城へ行くなら、それなりの恰好をしていった方が良いだろう。前は夜中だったが、今はまだ明るい。
贈られたドレスは、前に着たものと似ていたが、刺繍が少し違っていた。一点ものなのだろう。血塗れになったドレスを想いながら、私は袖を通す。
髪の毛を梳かし、私は部屋を出た。不貞腐れたアランが壁に寄りかかって待っていた。
「……守り切れないと思ったら、抱えて逃げるから。いい?」
「ええ。ありがとう」
それが最大の妥協点だったらしい。彼はいつものように私の傍に寄り添い、共に馬車に乗った。
異世界転生したら周りがほとんどヤンデレな件 クソザコナメクジ @4ujotuyoi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。異世界転生したら周りがほとんどヤンデレな件の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます