第29話 夢
夢を見ている。何度目だろう、もう私の感覚は夢の感覚に慣れている。
彼女の夢を見ているのだ、と、感覚で分かるくらいにはロベリタを知っている。
「……親殺しの儀を終えました」
「終わっちゃったんだ? 君の御両親は優しいねえ」
「……ええ。愛されていました。とても、暖かく」
誰かが話している声が聞こえる。ロベリタが泣いている。いや、泣いているのはロベリタか、それとも私か。差し出されたお茶を前に、溢れて止まらない涙を必死で拭っている。必死に、必死に。
――泣けば目が腫れてしまう。彼らに気取られてしまう。泣いてはいけない、泣いてはいけない。
言い聞かせるように声が続く。誰かがそっと、頭を撫でてくれた。ゆっくりと、じんわりと暖かく、悲しみを融かすように。
「泣けば良いのに。君だって人間なんだから」
「いいえ。いいえ。私は人間である前にロベリタ・リ・ベルマーニです。それがお父様とお母様が残した、私の名です。」
「強情だねえ。……護衛役はまたサボり?」
「遠ざけさせました。見られたくなかったから」
「……僕には、見せても良いの?」
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