PHASE-567【FPSだと相手が顔真っ赤になります】
「他愛無しですよスケルトン!」
この姿を目にすれば、調子に乗ると直ぐに前線に出る悪癖はそう簡単には治らないというのが分かる。
感心するぐらいに強いけども。
大立ち回りする姿から、双剣使いとしての可能性も十分にあると思う。
魔術だけに固執しないのなら色々と学んでいけばいいのに。
格闘に棒術、双剣。地力のポテンシャルは俺よりありそうだから、鍛えれば前衛職として好きな職業を選びたい放題だろうな。
魔術師系よりも大成するだろう。
俺の考えなどつゆ知らず、スケルトンの攻撃を躱しながらテンションを更に上げていき、カリスティック的な物に変わった槍でひたすらに倒していく。
「ならば私も」
コクリコが倒したスケルトンが手にしていた、錆のあるメイスを拾い上げればベルがソレを振るっていく。
普段の美しい剣音とは違って、ブォンと重々しい音だ。
いつもと毛色の違う武器を使用する姿は新鮮だな。
「ふむ――やはり使いづらいな」
なんて言いながらも、既に自分の得物かのように扱うところは凄い。
先端に重心があるから使いづらそうではあるけど、それでも攻撃を回避しながらスケルトンを華麗に倒していく様についつい見入ってしまう。
「!? いかん、いかん」
戦闘中だ。俺も参加しないとな。
続くというよりベルを抜き去り、コクリコよりも更に前に出る。
でもって、ピリア付与による鞘での横薙ぎ。
一度の横振りで数体のスケルトンを倒す。
――――なるほど、これはテンション上がるわ。
コクリコの気持ちが分かった。スケルトンを一振りで一蹴すると、まるで自分が恐ろしく強くなったように勘違いしてしまう。
「流石にやりますね」
「この程度の相手で褒められてもな」
俺は自分の実力をちゃんと推し量れるので調子には乗らない。
「ここは私一人に任せてもらってもいいのですよ」
「まったく」
俺と違って調子に乗っているまな板を一人で戦わせるのは良くないので、更に前衛として前に出る。
大剣持ちのスケルトンが大上段へと構える。
が、遅い。俺が間合いに入ったところで行う動作じゃない。
がらんどうとなった胴に打ち込み、大上段の姿勢のまま体が崩れるスケルトンの頭部へと目がけて、上段に移動させた鞘の一撃を頭部に打ち込んで仕留める。
「いい振りだ」
上段は俺の得意とする構えだからな。
褒めるベルは、コクリコが仕損じているスケルトンを狩る。
動きも攻撃も素早く、倒しきっているのが殆どだけど、軽量から繰り出される攻撃は決定打となっていないものもあり、未だ動けるスケルトンをベルが確実に仕留めてくれる。
「更に相手の後方から来援だ」
ベルがメイス先端で指し示せば、確かに接近してくるスケルトン達。
「おお、若干装備が違うのが混ざってる。シャルナ、あれは?」
「スケルトンソルジャーだね」
あれがか。
手には刃毀れの無いショートソードに、金属が使用された木製のスモールシールドにレザーアーマーと、駆けだし冒険者からすれば羨ましい装備だ。
頭に被っているのは兜じゃなくて、チェインメイルのフード。兜に比べると防御力はなさそう。というより、あの上に兜を被るんだろうな。本来は。
「おっと」
スケルトンソルジャーの体捌きと一閃は、スケルトンより速くて鋭い。
「でもさ」
スケルトンより――だからな。
俺たちの相手にとっては役不足だなスケルトンソルジャー。
もう一度、俺に向かって振り下ろしてきたショートソードを見切り、再度振り上げるところでチェインメイルに守られた頭部へと目がけて鞘の一撃を叩き込めば、それだけで眼窩の淡い緑光が消える。
大したことない。
現状驚異ではないけども……。
「……多くないか!」
奥から次々にスケルトンとスケルトンソルジャーが迫ってくる。
「よし任せろ」
ここでようやく舞台照明さんが、真打ちと共に登場。
その名は一人で面制圧できるもん! ことAA-12さん。
32発装填のドラムマガジンからなるフルオートショットガン。
ショットガンはFPSだとヘイトを集める武器ではあるが、接近戦でのワンショットワンキルな威力には魅了される者も多い。
それがフルオートタイプとなれば更に興奮するもんだ。
ショットガンがお好き? 結構、ではますます好きになりますよ。
「さあさあ、どうぞ」
「お、おう」
脳内でテンションを上げた俺が前を譲ったもんだから、若干だけどゲッコーさんが俺に対して訝しい表情を見せてきたがそれも一瞬のこと。
迫ってくるスケルトンの集団に対して――――、
ズガン。ズガンズガン。ズガンズガンズガンズガンズガンズガンズガンズガンズガンズガンズガンズガンズガン――――。
横殴りからなる散弾の雨が、容赦なくスケルトン達に見舞われていく。
ご丁寧にヘッドショット。
近場で当たれば一発で髑髏が砕かれる。
恐れを知らないままに突っ込んくるが次々と倒されていく。
もちろん32発ってことで弾切れも起こすけども、倒れたスケルトン達は文字通り骨の山を築き上げ、狭い回廊では、後列にいるスケルトン達の進行の妨げとなり、俺たちへの接近が難しくなっている。
「さあ、おかわりだ」
なんて言いつつ、余裕あるリロードから、再び圧倒的暴力の音が回廊内に響き渡る――――。
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