PHASE-447【赤ヘルとは違うようだ】
「魔族の故郷であるわけだから。魔王のお膝元って事ですか」
「はい」
――……オゥイェ……。
なんとも手厳しいじゃないか。いきなりVeryHardな難易度になるんじゃないの。
「なるほどな。敵の本丸を叩くのだな」
自信たっぷりに言ってるけども。現状で敵の本丸に突っ込むって無謀だろう。
なんでベルは余裕の笑みなんだろうね。
不安しかないよ。もし敵が万単位ならどうするの?
チートと行動するとしても、全包囲を万単位に囲まれたらどうしようもないと思うんだけど。
まあ、プレイギアから召喚する力を有している俺なら、突破も不可能でもないかもしれないが、それでも現状、この面子で行くのは戦力的に乏しい。
「魔王はいるの? 俺たちが倒すべき親玉」
「いるなら話が早い。そこでさっさと倒してしまおう」
いやベルさん。頼りになる発言ではあるけど、どうせあれでしょ? スパルタ全開で俺に戦わせる気でしょ?
いやだからな。最終局面でのボッチプレイ。
是非Co-opでお願いします!
「ご安心ください。魔王は新たなる居城を建造するため、レティアラ大陸にはおりません」
ものすごく安堵した俺がいる。
「どこにいるんです?」
「それは定かではありませんが、レティアラには魔王がいないのは確かです」
魔王って言うところがね。様をつけないんだね。俺は王のことを王様って呼ぶけどな。
魔王に対して、わざわざ様をつけなくてもいいのか。それとも、魔王に対する忠誠心をコトネさんは持ち合わせていないのか。
ゼノとのやり取りを考えると、無理矢理に従わされていたから、
「勇者様たちにはレティアラ大陸の首都へと行ってもらうのではなく、大陸の北東にあります、ラッテンバウル要塞へと行っていただきたいのです」
魔王のお膝元である魔大陸にて、要塞へ行けと言う。
首都じゃなくても、要塞って時点で無理ゲーすぎるんですけど。
「本当に行かないと駄目ですか」
「お願いします。トール様たちにとっても行かねばならない場所なのです」
「それはなぜです」
「ラッテンバウル要塞には、
「そうか~」
聖龍の一柱がいるのか。
どのみち行かなきゃこの世界の解決に繋がらないやつか。
魔大陸とかゲームだと最後じゃないの? 最後あたりに力が備わってきてから助け出すポジションのドラゴンだと思うんだけど。
あと地龍には様をつけるのに、魔王にはつけないところから察するに、やはり忠誠心はないようだな。
「要塞の防衛はさぞ堅牢なんだろう」
まずは要塞の概要を頼むと、ゲッコーさんはコトネさんに問う。
どんな軍編制なのか。要塞の規模は? そこまでの道のりで遭遇する脅威など、事細かい説明を求めた。
軍人だからね。情報こそが作戦成功に繋がるからな。
「ラッテンバウル要塞には魔王護衛軍がおります」
「護衛軍?」
神妙な面持ちのコトネさんの発言に、緊張気味に俺は返す。
――――魔王護衛軍。陸海空からなる
この三組織は魔王に忠誠は誓ってはいるが、少なからずの野心を持っている者達もいる。
魔王に反旗を翻すということは考えてはいないそうだが、対外組織よりも上を目指している。
そのため、三組織は連係というものをあまり考えておらず、それが魔王軍にとって行動を鈍くさせる原因の一つにもなっているそうだ。
俺たちサイドからしたら有りがたいことだけど。
だが護衛軍は違う。
「やっかいだな。妄信的な奴らは強い。簡単に死兵になる」
紫煙を燻らせながらゲッコーさんが口を開く。
宗教でも凝り固まった教えを信じて戦い続ける連中は、肉体よりも精神によって強化され、攻撃を受けても倒れにくい体になるそうだ。
傾倒しすぎた信仰心は狂信となって顕現し、過剰な暴力を生み出し、死をまき散らす。
護衛軍もそれに似ているのかもしれない。魔王のためにひたすらに忠誠を誓い、自分たちの忠誠を分かってもらう為にメチャクチャする。
凝り固まった忠誠が護衛軍の力の根源でもあるらしく、三組織が関わりを持ちたくない理由でもあるらしい。
「そして護衛軍の中でも精鋭によって編制された部隊が、要塞の防衛を務めております」
あの……、俺まだレベル38なんだけど…………。
RPGだと、頑張ればラスボスまでいけたりもするゲームもあるが、出来れば余裕をもって行動したい。
レベル38だと無理じゃないかな。
俺が自分のレベルを心配している横で、
「部隊名は?」
落ち着きのあるゲッコーさんが代わりに聞いてくれる。
「――――レッドキャップス」
「ああ有名どころだな」
ゲッコーさんが聞いたことあるって事は、俺たちの世界にも伝承なんかがあるんだろうな。
有名どころと言われても、俺は知らない。
真っ先に頭に浮かんだのは、広島の赤ヘル軍団なんだけど。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます