PHASE-330【極東】
兵士を集める――。それは俺のプレイギアから兵を出せということなのだろうか?
不可能ではない。それこそ先生のいたゲームの世界からならそこそこの兵は出せる。
ストレージデータ内ならば、俺こと享遠での君主スタート時の一万と、先生の二千を合わせればあっという間に一万を超える軍勢を手に入れることも出来るけども。
でもこういうのはベルが嫌うんだよな~。楽な力とか嫌がるんだよね。
それに、先生を臣下に出来た時点で、嬉しくて君主スタートは止めちゃったからな。
なので練度が低いままの兵ですよ。
練度の低いのを一万も召喚したら、鍛えてる間に食料危機に陥ってしまいそうだ。
でもってミズーリから食料を出すっていうね。
力に依存しすぎたと、マジでベルに怒られるわ~。
悩んでいれば、
「別に主の奇跡の御業を頼っていません。主の足を頼りたいのです」
「ああ、そういう事ですね」
「切り札を容易く使うものではありません。皆がそれに依存すれば堕落に繋がります」
流石は出来た尚書令様である。ベルと同じような思考だ。
ベルだけでなく、ゲッコーさんに加えて先生もこの力に頼りすぎるのは良くないと思っている派だな。
俺も強くなりたいって意志はあるから、依存は避けている。
FPSで出会うシステム侵入目的じゃない、俺TUEEEチーターさんみたいな闇は背負いたくないからな。
チートでキルレを上げて、それが下がるのが嫌という強迫観念から、結局チートから抜け出せなくなるという堕落地獄。
俺はプレイスキルだけで頑張りたいんだ。例え1.05程度のキルレだったとしても!
窮地が訪れた時だけ、俺は最強系の力を使用しよう。
特に――――、
「どうした?」
「いえ」
ついついゲッコーさんを見てしまった。
自分たちの生きていける国を建国したいとも思っているゲッコーさんの元に集う者たち。
特に俺が必死になって集めた、実力がゲッコーさんクラスの百人からなるS級兵士をこの世界で召喚したらどういうリアクションをとるだろう。
悪い方に考えてしまう事もあって、俺はそういう意味でも召喚は出来ないでいる。
「まず、主には東に向かっていただきます。大陸の極東であるドヌクトスへ」
「ドヌクトス――――ですか?」
さっきは極東はバランドって言ってたような。
俺の疑問を察した先生は、
「ドヌクトスは辺境候であるエンドリュー候が屋敷を構える城郭都市です」
「ここでも不審な動きが?」
「いえ、そうではありません」
地図を指させば極東とはよくいったもので、端も端。正に辺境。
バランド地方の領主であるエンドリュー候は、王様にとってかけがえのない友人だそうで、この人物なら間違いなく協力してくれるという。
次の謁見時に、辺境候の人となりを詳しく王様から聞いてみよう。
バランド地方を抜けるには瘴気が蔓延する中を移動し、大陸の北から南に向かって分断するように存在するカンクトス山脈を踏破しなければならない。
現状ではこの世界の人々では踏破は不可能。
なので俺たちだ。
だがしかし。可能である俺たちが踏破して、その辺境候であるエンドリュー候の力を借りられるとしても――だ。
「結局のところ、瘴気が蔓延している時点で助力は得られないんじゃ……」
カンクトス山脈をこの世界の者では踏破できない原因が
「そこは対策を考えねばなりませんが、エンドリュー候の力を得るというのが大陸に広がればいいのです」
それだけでも抑止に繋がるほどの力を有しているらしい。
大貴族で、極東において大陸の東側を守る盛況な兵達を有している存在。
王様に変わらない忠誠をってのを広められれば、魔王軍と戦わないで日和見を決め込んでいる貴族、豪族たちも重い腰を上げて味方になる可能性も生まれるとの事。
合わせて、他の種族も立ち上がるように促していく。
「なので、主は絶対に負けないでください」
う……。
後退りしてしまう。
三度のプレッシャーは何とも鋭い目での発言だった。
下がれば背中に気配。
「負ければ人々は支えを失うからな」
と、背後からも渋い声によるプレッシャー……。
俺に逃げ場なし。
「お、俺がそうならないためにも、皆を頼りますからね」
お願いしますよと頭を下げれば、強い笑みと共に頷きが返ってくるのがありがたかった。
チート能力を有していても、この人達は俺にチート依存はさせてはくれない。
俺も地力を上げて頑張るし、この人達にも頑張ってもらうだけだ。
それに俺個人も近々、強化されるだろうからな。
――――火龍の装備が手に入れば、俺も十分に強くなれるはずだ。
辺境候の元に行って、助力を得てやる。
準備が整い次第、俺たちが向かう方角は、大陸の東。極東――――。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます