PHASE-276【悲鳴と歓喜】
「はい、お姉ちゃん♪」
掲げるようにダイヒレンの亡骸を器用に前足で持っているゴロ太。
大きさは自分と大して変わらない頭部の欠損したダイヒレンをベルへと笑顔で近づける姿は中々に怖い。
可愛いものと、不気味なもののセットはホラーだ……。
「ちょ!?」
仰け反ったと思えば腰の引けた乙女は後退する。
ベルの後退とはめったに見られるものじゃない。
正直、俺も怖いけど、ベルのリアクションの方が面白くて、恐怖に打ち勝っている。
「はい、どうぞ♪」
ベルが後退すれば、追うようにゴロ太がGをズイッとベルへと向けて掲げる。
更に悪夢は続く。
ゴロ太に続いて子コボルト達もダイヒレンの亡骸を掲げ持ち、ベルの方に持ってくる。
正直、持ってる箇所にはモザイク加工をしてほしいくらいだ。
というより、先生が持ってきてほしいと言ってたのに、ゴロ太がベルに見せようとするもんだから、皆してベルに見せるっていう地獄。
皆して渡そうとするGの亡骸。持ち手が動けば必然的に亡骸の脚も連動するように動き、節部分からキィーと、立て付けの悪いドアのような軋んだ小さな音がする。
「ひぃ……」
常時のベルからは聞くことの出来ない小さな悲鳴。
怯える乙女と化したベルを目にして、俺の口端はつり上がる。
――――我、一計が降臨す。
そそくさとベルの横に移動する俺氏。
俺の行動を読み取った先生とゲッコーさん。
前者はやれやれとばかりに肩を竦めて苦笑い。後者は半眼の呆れ顔。
でも俺は視線に対してガン無視を決め込む。
でもって――、
「ベル。大丈夫か?」
などと、身を案じるようにしての接近。
「なんなのだこの巨大なカーカーラクは」
「かぁかぁらく?」
聞かない単語ですね。
「ドイツ語でゴキブリのことだ」
半眼呆れ顔の方が教えてくれる。
「流石のベルも驚くか。いや~まじで強敵だったよ。正直その後に戦ったトロールの方が精神的に楽だったからな。こいつらは大群で迫ってきて、こっちの精神を削ってくるんだよ」
ダイヒレンと呼ばれる巨大Gとの遭遇。
数え切れないほどの黒い塊の群れが、洞窟内の地面、壁、天井の全方位より押し寄せてくる姿は、黒光りする津波のようだったと加味して伝え、倒しても今度は白い粘液が一帯を支配して、本当にしんどかったと真実もしっかりと伝える。
話を聞くベルは、自分の両上腕をさするために腕を交差。
そのおかげで強調されるロケットおっぱい様が更に主張してくる。
ゆさゆさと揺れるそれを目に出来るありがたき時間。
如何に辛くおぞましい戦いだったのか、ベルは頭の中で想像したのだろう、
「お、お前は今回とんでもないのと戦ったのだな。尊敬するぅぅぅぅぅぅぅ!?」
言葉尻が悲鳴にも似たものになるベル。
原因はゴロ太が更に接近し、それに続いて子コボルト達も接近したからだ。
まさかここで俺に味方をしてくれるのがダイヒレンとはね。
命を奪った存在である俺に僥倖を与えてくれるとは、幸運のシンボルとしてダイヒレンをモデルとしたエンブレムでも作ろうかな。
なんて思っていたら、ダイヒレンは更に俺の味方をしてくれるようで、ガサリと音を立てた。
ゴロ太が掲げるダイヒレンの六本ある脚の一脚が、付け根部分を残して床に落ちた。
それがベルの足元に落ちた途端に、
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――!」
帝国軍中佐とはなんなのか? 絹を裂くような悲鳴を上げれば、
「イィィィィィハァァァァァァァァ!」
思惑がずばり的中!
ロケットおっぱいの美人が、側に立つに俺に抱きついてきた。
無遠慮という言葉に感謝したい抱擁。
とんでもねえ弾力が俺の上半身を襲ってくる。
この世界――――いや、転生前の人生も含めた十六年間で、かくも素晴らしい経験はない!
大好きなゲームキャラであるベルのけしからんおっぱいが、むぎゅ! っと、押しつけて来られれば、押し返そうとする弾力もあり、俺はそれを絶賛堪能中だってばよ!
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