PHASE-256【必死かよ!】
「すみません俺です~」
おっかない事じゃないよと、言葉尻を伸ばして場の雰囲気をほぐしてあげる。
ざわつきが収まってからプレイギアを見れば、レベルが38に上がった。
1上がった。
俺の今回の戦いにおける評価理由を考察すると、チートメンバーと行動しない状況で危機に対処出来たからって事だろうな。
もっと上がってもいいんだろうが、相手が巨大ワームにトロール三体と、駆け出しが戦うダイヒレンというGだから、1上がればいいくらいなんだろう。
そもそもが火龍を救ったり、ボスクラスを倒している時点で、俺よりもレベルが格下なのを倒しても評価は上がりにくいだろうからな。
「ちょっと一人になってくる」
言って俺は皆から離れて隅っこに移動してメールを送る。
{おいセラさん}
っと、
ピローン♪
{やっと……返ってきた……}
――……怖っ! ずんとした。背中にずんと寒気が走る返信だよ。しかも相も変わらずな高速返信だし……。
なんなのこの病んでる感じ。短い文体からでも十分に伝わってくるのは、あいつが神として何かしらの力をメールに込めているのかな?
やべえよ……。クレトスの時からずっとスルーしてたのが、相当に精神を追い込んだみたいだよ。
正直、放置していた事を完全に忘れていただけなんだけど。あいつ、待ってたんだな。
そう考えると、余計に怖さが増すな……。
{悪かったよ。でさ、質問なんだけど}
{そればっかりね……。私は都合のいい女ってポジションかしら……}
童貞の俺にそんな器量はねえよ。童貞なめんなよ!
そもそもこうやって女性、しかも美人とメールしてること自体、人生で初なんだからよ。
{怒るなよフレンドになってやるから}
やるからという上からな書き込み。
{本当になってくれるのかしら! いつも濁すくせに!}
なんだこのやり取りは……。
あれか? 俺はお前から求婚を受けていて、誤魔化しながら結婚を先延ばしにしようとしている駄目男のポジションなのか?
{なるなる}
{本当に!}
なんだよこの食いつきは……。フレンドは一億人いるんだろう。元々は一兆人とか書き込んでたけども。
可哀想になってきたな。このボッチ死神……。
美人でスタイルもいいのに、ボッチとか……。性格が相当に歪んでいるんだろうな……。
{フレンド登録してやるから、質問に答えてくれ}
{分かった!}
この死神……。
俺はあえて上から目線で書き込みをしたのに、気にも留めてねえ……。
必死か! フレンド欲しくて必死か!
{じゃあ質問するけど、この世界に俺以外に転生した人とかいるの?}
{いないわよ}
{本当か? いい加減に答えてないよな}
{当然! だってその世界って追い詰められているでしょ。いくら能力を付与して転生者を送りだすとはいってもね、失敗の可能性が高いところだから、管轄として受け持ちたくない神々が多いの。で、スーパー優秀な私にお鉢が回ってきたわけ。そして貴男が選ばれたのよ}
――…………とても目にしたくない文面だった……。
俺は死して尚、貧乏くじを引いたという事なんだろう。
なにがスーパー優秀な私にお鉢が回ってきただよ……。
誰もやりたくないのを無理矢理にやらされているだけだろう。
コイツが神々の中で、ヒエラルキーがペッタペタの底辺だって事は分かった。
まったくもって知りたくなかった内容が含まれていて俺は虚しい……。
――――このどん底世界での転生者は俺オンリー。となれば、ゴムを作りだした人物はたまたま出来たとはいえ、たまたまにたどり着く行動を起こさなければ結果は生まれないわけだから、普段よりそういう考えを持って実行する優秀さんだな。
先生が知れば、是非とも登用したい逸材だろう。
ワックさんとその人物がいれば、大きな技術進歩をとげる可能性が生まれる。
まあ、俺のゲーム内からの超技術を提供するってのが手っ取り早いのかもしれんが、急な発展は環境破壊や文明崩壊につながる可能性があるから避けたい。
文明レベルは徐々に上がっていくぐらいでいい。
上がりすぎれば、その力に溺れて、よからぬ野心を抱く者も現れるだろうから。
俺がミズーリの圧倒的な力で悪い笑みを湛えたのがいい証拠。
俺以上に悪い笑みを湛えさせてはいけない。魔王が滅ぼす前に、くだらない争いで世界が腐ってしまう。
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