PHASE-237【マテバ様々や】
「ほほう! 洞窟内だと耳がキーンとなるわい」
「いやはや全く。ただ、音により位置がばれるのが欠点だな」
ドワーフとハンターによる感想。
外での戦闘だったワームの時と違い、狭い空間だと音はよく響くからね。
まあ、サプレッサーというのがあってだな。と、言ったところで、現物を目にしないと理解は出来ないだろうな。
そもそもマテバはリボルバーだから、サプレッサー装着なんてないけどね。
とはいえ――、
「安心と高威力のリボルバー」
ズドン、ズドン――。
音が響けば迫るGを戦闘不能に追い込んでいける。
「欠点は六発」
といっても、マガジンタイプの銃と比べればの話。
弓よりも連射が可能で、素人でも弓より命中率が高いとなれば、この世界では欠点とは言えないよな。
排莢してからリロードの間は、
「カバー頼む」
言えば二人は即時対応。
未だ数が減ることのないGを次々と屠っていく。
片方が手斧で潰し。片方は松明の火で炙りながらダガーでの刺突。
タチアナも何かしないとという責任感を抱いたのか、苦手なGに対して、俺がリロードを完了するまでスタッフを掲げて前に立つ。
コクリコの持つワンドとは違い、スタッフはタチアナの身長ほどある。
掲げれば当然、天井にカツンと音を立てて当たるわけだ。
それを振り下ろす事は無理だと思いつつも、前衛の二人が対処してくれているから、タチアナに累が及ぶことは無かった。
この場合は俺の為に、後衛のアコライトが我が身を盾とする心意気に感謝しないとな。
回復担当がそんな行動を選択するのは、本来は叱責を受けるところなんだろうけど。
経験を積んでそこいらの立ち回りは学んでもらいたい。
俺が偉そうに言える立場ではないけども。
「ありがとう」
言って、タチアナには後方に下がってもらい、再びマテバが火を噴く。
ランタンの輝きよりも強いマズルフラッシュと共に、洞窟内に轟音が響き、残響に変わる。
岩肌が凸凹じゃなかったなら、残響は長いものになってたんだろうな。
「よし! 次だ」
「会頭。出来れば頭だけを狙ってくれや」
「ギムロンに同じです」
俺の射撃スキルだと、頭部を確実に狙えってのは無理難題だが、胴体だとそこは生命力の逞しいGのデカいバージョン。.357をくらっても胴体ならピクピクしながらも動いてたりする。
正直、グロい状態で動いているので、見てるこっちはそれだけでSAN値が下がってしまいそう。
RPGやMMOなら恐怖耐性を体得していないと、動きが鈍くなってしまうってのに似てるな。
それくらいにダイヒレンの存在は、Gが苦手な俺にとって脅威でしかない。
確実に動きを止めるためにも、頑張ってヘッドを意識して撃っていく――――。
「――――よし!」
片付いた。主にギムロンとクラックリックの活躍だったが。
ゴブリンとかの命を奪う時は躊躇したり悩んだが、これがGとなると抵抗もうすれる。
こいつらがここまで逃げてきたことには同情はするけども、それ以上に駆除という意識が勝ってしまったな。
排莢し、弾丸をシリンダーに装填。
それを終えて安全装置をかけてホルスターに収納。
「不可思議な魔道具じゃの」
落ち着いたところでギムロンが俺の前で蹲踞。太い指で地面に転がった薬莢を手にして眺める。
「真鍮かの? 転がった筒を見れば、全部均等に形がそろっとる。見事な冶金じゃ」
ファンタジーにおいて冶金の最高峰でもあるドワーフに感嘆の発言をさせれば、作り手たちも喜ばしいだろう。
といっても、薬莢は機械を使って作ってんだろうけどさ。
続けてスンスンと薬莢のにおいを嗅いでる。
「独特なにおいじゃ。初めて嗅ぐ」
言われても分からないよ。
火薬や、未だ一帯に漂う硝煙を団子っ鼻で嗅ぎ取っている。
火薬は未知の物質なんだろう。黒色火薬くらいなら出来そうではあるけども。
ドワーフが初めてと発言しているということは、この世界には未だに火薬は無いと判断してもいいだろう。
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