PHASE-172【あ……、やらかしちゃった……】
賊のくせある名前に驚かされてしまうけども、相手は襲撃にもっと驚いてる。
しかし、村の人間たちと戦って苦戦しておいて、人を攫えば、必ず何かしらのアクションが起こるという考えがよぎるだろうに。
襲撃に驚くとは、その事を考慮できない存在。
「考えが浅はか。つまりは――――Noob」
おちょくりつつ次の相手も打ち倒す。
更に次ぎ。
俺の方を向いていない相手を瞬時に見つけて、側面からの胴打ち。
FPSは、如何に自分の方を向いていない相手を倒すかが重要。
ゲームで習得した、敵を倒す優先順位ってのが、この世界で役に立つなんてね。
平均キルレ1.05というへっぽこだけども、役に立ってます判断力! 異世界で!
素晴らしきかな俺。
瞬く間に三人もダウンさせたぜ。
ベルとゲッコーさんは俺なんかよりも多い数を容易く倒しているけどね。
それでも俺は強くなっている。
「安心しろ。峰打ちだ」
ふふん。言ってみたい台詞を言ってしまった。
まだ残存がいるというのにこの余裕。
「なにそれ?」
気分がいいところに真顔で聞いてくるのやめてくれるかな、シャルナさん……。
「ええい!」
悔しそうな声を上げるまな板。
俺たちの活躍に対して、出遅れたかたちだもんな。
唱えたファイヤーボールも小屋の土壁を破壊した程度だ。
こうなると、焦りからまな板の行動がパターンに入る。
止めようとしたが遅かった……。
「ランページボール」
くそが! 飛んでくるスイカほどの火球が激しく炎をまき散らす。
近接戦闘を仕掛けた俺ら及び、建物があるところで使うなよ!
「ちょっと!? 火がついちゃうよ!」
「中にはワックさんがいるかもしれないのに」
「なにを考えているんだあの子は?」
「頭がおかしいのか!」
シャルナを筆頭に、クレトス村の方々が声を上げる。
最後の方――、正解です。
もっと罵詈雑言を放ってほしいが――――。
消火が先である。
ここは俺の
皆に距離をとらせてからの――――、
「スプリームフォール」
山小屋の直上。虚空から顕現する黒い雲。
そこから瀑布を思わせる水が轟々と降り注ぎ、類焼することなく鎮火する。
「やったぜ!」
俺の活躍で、建物火災は最低限ですむ。
攻撃だけでなく、人々のためにも使用出来る素敵な魔法だな。
「凄いね。最高位の大魔法を
馬鹿にしていたのに、シャルナの俺を見る目が変わった。
透き通るような碧眼は、俺に尊敬の眼差し――ん? これは、呆れた視線……?
「ぶぇ!?」
背中にはしる衝撃。
息が出来ないくらいの衝撃だったぞ。
「ごほっ! 何しやがるこのまな板!」
活躍を奪われたからお怒りですか! まじでパーティーから追放してやろうか!
「なんて事をするんですか!」
「なにがだよ!」
「あれですよ」
コクリコが指をさす方向を見る。
「そう、あれ……」
横から呆れた声を漏らすシャルナ。
視線同様の声も、俺に対してのものだ。
「……あ……」
うん……。
俺が悪いよね……。
最上位の大魔法を小屋の直上で発動させれば、火は消えるけど、小屋も流れてしまうよね……。
ついでに残存の賊も流れるっていうね。
「やってしまいましたね。あれだと小屋にいるであろう人質も無事ではすみませんよ」
「お前が言うなよ! 火事を起こしそうになったから俺が鎮火したんだろうが!」
「鎮火の結果がこれでは――――ね!」
うぬぬぬ!
琥珀の瞳を煌めかせての嘲笑がむかつく!
「お前には言われたくないんだよ!」
手四つになる俺とコクリコ。
「そんな暇はない!」
「「だい!」」
二人そろってベルから拳骨を見舞われる…………。
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