第九十二話 ガレアのトラウマ

「やあ、こんばんは。

 今日も始めていこうか」


「うん」



 ###

 ###



 僕はガレアに跨り走っていた。


 様子がおかしい。

 ずっと黙ったまんま走っている。


 しかし律儀に信号を守っている所がガレアの素直な処だ。


 しかしここはどこだ?

 場所がどこかよく解らない。


「ガレア、ちょっと止まって……」


 ガレアは無視して走る。

 耳に届いていない印象。


 そんなに赤の王が怖かったのか。


「ちょっとっ!

 ガレアッ!

 止まれってっ!

 ストップ!

 ストーッツプ!」


【はっ……

 何だ竜司か……

 どうした……?】


 どうしたと言いつつその脚は止めない。


「だから止まれって」


【あ……

 あぁわかった……】


 ようやく歩を止めるガレア。

 道路脇で一旦ガレアから降りる。


 スマホで道を確認。

 確認中もガレアはキョロキョロしていた。


 眼は平常時を取り戻しつつあったがビクビクしてるのは変わらない。

 とりあえず色々な事は兄さんの元に帰ってからにしよう。


 道は二百四十六号線を南下して裾野ICインターチェンジから東名高速に入るのか。


「ガレア、行くよ」


【あっ……

 あぁ……】


「ガレア……

 後で美味しいものでも食べよう」


 僕はガレアの肩を撫でながら慰めた。


【あっ……

 あぁ……】


 けど、生返事。

 上の空と言う奴だ。


 僕はどこかのSAサービスエリアに寄るつもりだった。

 ちょうどいい場所となると富士川SAサービスエリア


 再びガレアに跨る。


「じゃあガレア、道は僕が指示するから」


【わかった……】


 ガレアは少し落ち着いた様で素直に走ってくれた。

 国道二百四十六号線を走り、裾野ICインターチェンジから東名高速に入る。


 料金所は兄さん達と走ってた時の様に左端を素通りする。

 お金払って無いけど良いのかな?


 しばらく走ると上に標識が見える。


 富士川SAサービスエリア 三キロ


「ガレア、あと三キロぐらい走ったら左に入る道が見えるからそこに入って」


【わかった】


 左端に車線変更。

 更に走る。


 標識が見えた。


 富士川SAサービスエリア 入口


「ここだ、ガレア入って」


 左の道に入り、しばらく進むと建物が見えてきた。


「へぇ……」


 僕は少し驚きの声を上げる。

 TVで見たまんまだったからだ。


 サービスエリア初体験。


「ガレア、一旦降りるよ。

 止まって」


【…………うん】


 道路脇にガレアを止め、僕は降りる。

 とりあえず僕は案内板を探す事にした。


「あった。

 こっちだよガレア」


 案内板の内容を確認する僕とガレア。


「腹減っただろうガレア。

 何が食べたい?」


【……何でもいい……】


 ここで一つ確信を持った。


 多分ガレアは一度テンションが下がると平時まで戻るのに時間がかかるタイプなんだろう。


 前に氷織の家で蛸鍋食べた時もすぐに寝てしまったし。

 僕は頑張って出来るだけ陽気にガレアに話しかけた。


「ホラッ!

 これ有名なんだよっ!?

 富士宮焼きそばっ!

 他にもこんなのもあるよっ!

 紅富士サーモン丼だってっ!

 ガレアはまた三つだろっ!?

 ハハハ……」


 ガレアは黙っている。

 何となく暖簾に腕押しといった印象。


「ハハハ……

 はぁ……

 行こうか……」


 伝染して僕も少し落ち込んだ。

 とりあえずまずは屋台の富士宮焼きそばの所へ。


 ガレアも黙ってついて来る。


「すいませ~ん、富士宮焼きそば四つ下さい」


 四つの内訳は一つは僕。

 後の三つはガレアのだ。


 焼きそばを購入した僕は道路脇に腰掛けた。


「さっ食べようガレア」


 ガレアの分を側に置き、まず僕が一口啜る。


 ズルルッ


 美味い。

 パリッとした麺に肉かすの脂がまとわりついて絶妙なコクを与えている。


 チラッとガレアを見る。

 まだゲンナリとして口を付けていない。


「ガレア、美味しいよ。

 食べないの?」


 ガレアは黙っている。

 僕もだんだんガレアの態度にイラっとして来た。


「……あーっ!

 もうっっ!!」


 僕はガレアの分の焼きそばを持って立ち上がる。


 右手に焼きそば。

 左手はガレアの口へ。


 僕はこじ開ける気だった。


「ホラッ!

 ガレア、口を開けろっ!」


 今のガレアは抵抗もせずアングリと口を開ける。


「それっ!」


 僕は一皿分の焼きそばを全部ガレアの口に放り込んだ。


「はいっ!

 口を閉じて食えっ!」


 僕は強引にガレアの口を閉じた。

 モグモグと口を動かしている。


【うん……?

 旨い……】


 ようやく眼がいつものガレアに戻ってきた。


「ハハハッ。

 だろ?」


 僕も一安心で笑いながら返答する。


【竜司ッ!

 これもっとくれっ!】


「ああ、まだあるぞ。

 いっぱい食え」


 ガレアの分で買っていた残り二つの焼きそばを渡す。

 両手に焼きそばを持ったガレアは大きな口を開け二つ同時にペロリ。


 相変わらずの食い方だ。


【うまぁあい!】


「さあ、ガレア。

 次行こっ次」


 ガレアの手を引き歩き出す僕。

 次の店はここだ。



 焼津直送 盛り屋



【なあなあ竜司。

 ここは何が食えるんだ?】


「えっと……

 確か紅富士サーモン丼が名物だって」


【紅富士サーって何?】


 ガレアキョトン顔。


「魚だよ」


【ふうん、何か良く解らないけど美味いなら良いぞ】


「すいませーん。

 紅富士サーモン丼二つ……。

 そのうちの一つ大盛りにしてほしいんですけどどこまで盛れます?」


(はい?)


 そりゃあそうなるだろう。

 僕も言ってて良く解らない。


 僕は慌ててガレアの方を指さす。


「あっすいませんっ!

 あそこの竜が食べるんです……」


(あぁ……

 少々お待ち下さいませ……

 店長ーっ?)


 レジ役の女性店員が奥へ消える。


 すぐに立派な口ひげを生やした中年男性が対応を変わる。

 おそらく店長だろう。


(お客様申し訳ありません。

 竜用のメニューは取り扱っておりませんでして……)


 まあそりゃそうか。

 何せこのサービスエリアには竜がガレア以外一匹もいない。


 となるとどうしよう?

 大盛三杯買ってやるか。


「わかりました。

 じゃあオーダーを変えます。

 紅富士サーモン丼四つ。

 その内三つは大盛りで」


 すると店長の隣に居た女性店員が口を開く。


(お客様も大変ですねえ……)


「ははは……」


 僕は笑う事しか出来なかった。

 品物を受け取りガレアの元へ。


「ガレアー、買ってきたよー」


 僕は袋から三つ取り出しガレアの前に並べる。

 大きなプラスティック製の器が三つガレアの前に並ぶ。


 僕も器を開けて食べ出す。


 ガレアはいわゆる犬食いだ。

 少し食事が進んだところで僕は聞いてみた。


「ねえガレア……」


【モグモグ……

 うまうま……

 ん?

 何だ竜司?】


「赤の王と……

 戦ったんだって……?」


 ピタリ


 忙しなく咀嚼していたガレアの口が止まる。

 途端にキョロキョロ周りを警戒し、キョドりだす。


 多分ガレアには赤の王は禁句なのだろう。

 でも僕は聞きたかった。


「ガレア、どうして戦ったの?

 前は逃げたって言ってたのに……」


【………………

 ……お前が連れ去られたからだろ……】


「そう、そこなんだ。

 僕が気絶してからどうなったかを知りたいんだ」


 ガレアの眼がゆっくり僕の方を見る。

 そして重い口を開く。


【…………

 えーとなぁ……

 どうだったかな?

 俺が起き上がったらお前が倒れてて男が二人立ってたんだ。

 それでその男が竜司がいつも弄ってるそれで話をしてたよ】


 ガレアは僕のスマホを指さす。


「それでどうしたの?」


【えーと……

 それで寝てるお前を追っかけてきてたハコに載せて逆に走り出したんだよ。

 あれ?

 これってユーカイってやつじゃね?

 って思って追いかけたんだ。

 途中何回かドンパチやって気が付いたら何か広いところに来てたなあ】


「それでどうなったの?」


【お前を載せたハコは何か大きい建物の中に入った。

 と思ったら中から……】


 ガレアが黙ってしまった。


 成程出てきたのは赤の王か。


 ここからはガレアも話しにくいだろう。

 でも僕はいつか対峙する時のために聞かないといけない。


「ごめん……

 ガレア。

 思い出したくないよね……

 でも貴重な体験なんだ……

 出来れば僕にも教えてほしい」


 僕は真っすぐガレアを見て訴えた。

 するとガレアの口が重く開く。


【俺もさ……

 お前が連れ去られたから赤の王でもケンカ売ったよ】


 僕は嬉しかった。

 ガレアが僕の事をイマイチどう考えているか判らなかった。


 けど強敵に立ち向かうぐらいに大事に思っていてくれたんだ。

 僕は続けて尋ねた。


「今なら勝てるとか思ってた……?」


 それを聞いたガレアは力いっぱい首を横に振る。


【無理無理無理無理っ!

 あんなバケモン勝てる気がしねぇってっ!

 だって俺、テキトー牽制して隙見てお前連れて逃げる気だったもん】


 バケモンってガレアも竜なんだけどな。

 気が付いたらガレアの眼がキョトン顔時の真ん丸目になっている。


「最初にどっちから仕掛けたの……?」


 ここからが重要だ。


 せめて呼炎灼こえんしゃくが使ったスキルぐらいは知りたい。

 僕は呼炎灼こえんしゃくと意見を違えた時から争う腹づもりではいたから。


 またガレアの重たい口が開く。


【確か俺から……

 閃光を何発か放った……】


「それは全力で放ったの?」


 ガレアの全開魔力閃光フルアステショットは空の雲が四散する程の威力を持つ。

 奈良で確認済みだ。


【そんなの全力に決まってんじゃん。

 出し惜しみなんてできる相手じゃねーっての】


 全開魔力閃光フルアステショットの威力は一撃で雲が四散はする。

 けど僕は対物への破壊力は解らない。


 普段使うには危なすぎるからだ。


 しかし威力は相当のものだろう。

 それを数発放っても勝てない赤の王。


 足元から上にぞわわと何かが駆け上って来る感覚が僕を襲う。

 ガレアはゆっくりと噛み締める様に話を続ける。


【とにかく必死だった……

 うん必死だった。

 でも何発撃っても何発撃っても効いてる気がしなかったな。

 どうしようかと思ってたら気づいたんだよ。

 赤の王の肩辺りに人間が居るのを……】


 おそらく呼炎灼こえんしゃくだろう。

 ガレアは話を続ける。


【そしたらその人間が叫んだんだよ。

 うぉぉぉだかなんだか……

 そしたら……】


 ガレアが言うには肩に居る呼炎灼こえんしゃくが叫ぶと地面から次々と溶岩が噴き出たらしい。


 そして気が付いたら周りは溶岩の海になっていたそうな。

 ガレアの話を聞いてると生温い汗が噴き出てきた。


 話は続く。


【……そんで……

 これ、早くしないとヤバいと思ってどうしようかと思ってたら、肩の男の目が赤く光ったんだ……

 そしたら……】


 ガレアは言う。


 呼炎灼こえんしゃくの目が赤く光ったのを確認した直後足元から焼け爛れる熱さが襲ったんだって。


 驚いて下を見ると足元から自分の身体が溶岩に変わっていったんだそうだ。

 足元からじわりじわりゆっくりと溶岩に変わる身体。


 胸元辺りまで溶岩に変わった段階で余りの熱さに気絶したそうだ。


【……そして俺は……

 うわぁぁぁぁぁぁ!】


(おいおい……

 竜が唸ってるぞ……)


(ママー、ドラゴンー)


(しっ!

 見ちゃいけません)


 ガレアの絶叫に周囲が注目し出した。

 僕はガレアの肩を抱いた。


「ガレアッ!

 もういいっ!

 もういいからっ!

 ごめんっ!

 僕が悪かった……」


 ガレアは黙っていたが落ち着いたようだった。

 ガレアに辛い思いをさせたがかなり有益な情報のはずだ。


「ガレア……

 そろそろ行こうか……」


【わかった……】


 僕はガレアに跨り、東名高速を下って行った。

 乗りながら僕は考えていた。


 呼炎灼こえんしゃくと赤の王の戦い方だ。


 解せない点がいくつかある。

 赤の王はなぜ最初からマグマを使わなかったのか。


 あとガレアがマグマに変わった理由。


 僕はそんな事を考えていた。

 ふと上の標識を見た。


 清水ICインターチェンジ 三キロ


 あれ?

 確かここから僕らって高速入ったんじゃなかったっけ。


「ガレア、そろそろ左に寄って」


【わかった】


 僕の視界左の方にそろそろ入口が見えてきた。


「ガレア、左の道に入って」


【うん】


 ガレアは素直に左の道に入る。

 料金所が見える。


 また同じように左端を素通り。

 一度もお金払って無いけど本当に良いのかな?


「ガレア、もう少し走ったら道を確認するからちょっと止まって」


【わかった】


 高速を降り、左端に止まるガレア。

 スマホで確認。


 あぁそうだそうだ。

 静清バイパスから二十七号線だった。


「道が解った。

 よし行こうガレア」


 ガレアに跨り道を行く。

 すぐについてしまった。



 静岡県警本部



 帰ってきた。

 ほぼ半日ぐらいだろうか?


 何でか解らないが静岡県警本部が怖く感じる。

 まるで悪の魔城のようだ。


 でも兄さんも心配してるだろうし、早く無事だってことを知らせないと。

 一人で入ると緊張する。


 ドキドキしながら中へ。


 案内受付をそそくさと左へ向かう。

 エレベーター前。


 中へ入る僕とガレア。


「ええと……

 確か十階だったっけ……?」


 十階のボタンを押し、しばし待つ。



 十階 刑事課



 僕は恐る恐る中に入る。

 歩いていた男性が話しかけてきた。


(ん?

 君。

 どうしたんだい?

 うわ!

 竜!?)


「あっ!?

 あのっ……

 すめらぎ警視正はおられますかっ!?」


(あ……

 君が弟君かいっ!?

 良かった……)


 男性が安堵の表情を見せる。

 僕が驚いて絶句していると話を続ける。


(あっごめんっ。

 いやね昨日のお兄さんの慌てぶりから考えたら、ほんと無事でよかったって思ってね。

 豪輝ごうきさん、コード608を発令するって言ってたぐらいだから……

 ハハハ……)


 僕は聞いてみた。


「コード608って何ですか?」


(警視庁所属の竜河岸全員招集だよ)


 僕は絶句した。


(いやっ!

 もちろんそんな命令簡単に発令出来ないよっ!? 

 発令には国務大臣、警視庁長官、警視総監の三つの判子が必要だしっ!

 しかもこれ私情丸出しの発令だしね)


 それを聞いて僕はとりあえず胸を撫で下ろした。


「兄さんはどこに……?」


(あぁ、今は重要参考人の取り調べ中だよ。

 君が帰って来た事を伝えてくるから別室で待っててくれるかい?)


「はい」


 僕は行く前に兄さんと会議した部屋に案内された。

 パイプ椅子に座りしばらく待っていると扉が開き、兄さんが入って来た。


 手に書類を持っている。

 一緒に涼子さんも入って来た。


「竜司君っ!?

 大丈夫っ!?」


 涼子さんが駆け寄り、肩を掴む。

 必死な顔を凝視していると何か色のついたモヤが見えてきた。


 深い藍色から段々オレンジ色に変わっていく。

 確かこれって僕の受動技能パッシブスキルって兄さんが言ってたっけ。


 涼子さんの視線も前に他で感じたチクチクする感じじゃなくポワンポワンといった優しい視線だ。


 これは不安から安心したと言うのを表すんだろう。


「は……

 はい……

 ご心配をおかけしました……」


 僕はチラッと兄さんの方を見る。

 兄さんは書類を凝視。


 涼子さんが優しく合いの手を入れる。


「ホラ、豪輝さん」


「あ……

 あぁ……」


 兄さんはぶっきらぼうに答える。


 僕は目を凝らして見た。

 兄さんのモヤは黒に近い青から急激に暖かい赤に変わって行く。


 チラチラ僕を見る度に変化する速度が上がる。

 涼子さんは優しく笑いながら……


「ウフフ、竜司君。

 豪輝さんの態度。

 今はこんなだけど、昨日の慌てっぷりったら……

 ウフフ」


 それを聞いた兄さんが立ち上がり慌てて、制止する。


「ちょっ……!

 ちょっと涼子さんっ!

 その話はっ……!」


「竜司がぁぁぁっていって半分泣いていたんだからウフフ。

 さっきもどう接していいかって相談されたし」


「グゥッ……!」


 兄さんはグウの音も出ない様子。

 涼子さんは話を続ける。


「ウフフ。

 昨日の深夜もね。

 コード608を発令するぅぅって喚き散らしてね。

 取り押さえるの大変だったんだから」


 暖かい赤色だ


 僕はチラッと兄さんの方を見る。

 兄さんはもう黙っている。


 書類で顔を隠し表情を悟られないようにしているが僕の受動技能パッシブスキルのせいで感情がバレバレだ。


 ちなみにモヤの色は完全に暖かい赤になっている。

 僕から話しかける事にした。


「兄さん……

 心配かけたね……

 ごめん」


「いや……

 まあ無事なら良い……」


 兄さんは書類をスッと下げ僕の顔を見る。

 その時の兄さんの顔ったらね面白かったよ。


 口をプルプルさせて、ほっぺたを赤くさせてね。

 よく見たら口だけじゃなく顔全体も震えてたんだ。


 眼も片方はいつもの鋭い眼。

 片方はにやけて歪んだ眼になっていたよ。


 何か体内にある破裂寸前の風船を必死に抑えているみたいだったよ。


「あ、兄さん。

 僕、呼炎灼こえんしゃくと会ったよ」


 これを聞いた途端兄さんはいつもの顔に戻った。

 いや、目はいつもより鋭かった。


「そうか……

 どうだった……?」


「何て言うか……

 とてつもなく大きいという感じだった」


「そうか」


 兄さんが発したのはこの一言だけだった。

 僕はじっと兄さんの方を見た。


 モヤの色が暖かい赤がじわりじわりと下から深い蒼になっていく。

 何か不安を感じる色だ。


 この受動技能パッシブスキル、感情は読み取れても何が起因しているかまでは解らないのが欠点だ。


「竜司、お前はどこに軟禁されていたんだ?」


「軟禁と言うのとはちょっと違うかもだけど……

 えっと駒門駐屯地って言ってた」


「駒門が陸竜大隊の大元か……

 で、そこでお前は何を見た。

 俺に教えてくれ」


 僕はガレアがマグマに変えられた事。

 久我真緒里こがまおりさんの時空翻転タイムアフタータイム


 赤の王と会った事。

 そしてSAサービスエリアでガレアから聞いた話を掻い摘んで説明した。


久我真緒里こがまおりか……

 竜河岸でも一、二を争うレアなスキル。

 時間系か……

 それはやっかいだな……

 そして竜司が聞いたガレアの戦闘の話。

 呼炎灼こえんしゃくが何らかのスキルを使ったのは間違いない。

 が、それが通常スキルなのか受動パッシブなのか合わせ技なのか。

 それでこちらの対応もだいぶ変わるな……」


 兄さんの顔が険しくなる。


「それで兄さんは何をしていたの?」


 兄さんの険しい顔を元に戻そうと話題を変えてみた。


「ん?

 俺か?

 俺はずっと本間の取り調べだよ。

 つづり達とな」


「情報は得られたの?」


「まあぼちぼちだ。

 まだやってるけど竜司も見てみるか?」


「うん」


「じゃあ行くか。

 十一階だ。

 ついてこい」


 僕とガレアは兄さんの後をついていった。



 ###

 ###



「はい、今日はここまで……

 ん?」


「すぅーっ……

 すぅーっ……」


「寝ちゃったか……

 今回も長かったからなあ。

 じゃあおやすみ」

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