第四話 口は災いの元
氷室さんの部屋で出会ったあの女性…
僕たちはその人と戦おうとしていた。
今僕たちの目の前には例の女性とそのペアと思われるもう一人の女性がいた。
もう既に勝負は始まっているんだけれど相手に動く気配が一切無い。
「動かねぇならこっちから行かせてもらうぞ!」
烈火が痺れを切らして炎を放った。
しかし、
「炎よ!消えろ!」
その瞬間、烈火の炎が突然消えた。
その光景に僕たちは度肝を抜かれた。
「そうね、私の声を聞くのはこれが最後だろうから名前だけでも教えてあげる。
私の名前は月詠楓(つくよみかえで)、隣の子は音無葵(おとなしあおい)よ、それじゃあね」
彼女が言い終わると、空からゴゴゴと轟音が轟いた。
空を見上げた僕たちの目に入ってきた光景は現実のものとは思えなかった。
何と石の雨が降りそそいで来たのだった。
「条!走り抜けろ!あいつらの周りは絶対に石が降らないはずだ!」
烈火に言われるがままに走り抜け、彼女たちに接近した。
「楓様に近づくなぁ!!」
狂乱した叫び声と一緒に僕たちは吹き飛ばされた。
隣にいた葵と呼ばれる女性が僕たちに蹴りを入れてきたんだ。
「テメェらの下衆な身体から楓様に病気でも移ったらどうするつもりなんだぁ?ただ死ぬだけじゃ償わせねぇぞ!」
可愛い容姿とは裏腹に、途轍も無く汚い言葉で僕たちを罵る彼女の裏で月詠さんは疲れているように見えた。
今思えば石が降り止んだ。
「烈火!この石がどんな特異かはわからないけれど、月詠さんは疲れている!叩くなら今だ!」
彼女の疲れと石が止んだ事から考えると恐らく彼女の特異は強力な分エネルギーの消費が激しいのだろうと僕は予測した。
しかし、相方の音無さんが厄介だ。
幾ら月詠さんが疲れているとはいえ、彼女に守られている間は攻撃すらままならない。
「だから、月詠さんには指一つ触れさせねぇって言ってるだろ!!」
烈火が音無さんに吹き飛ばされそうになったけど、烈火はそのまま音無さんの足を掴み、投げた。
「おい、音無と言ったっけな?俺は人をあまり傷つけたくねぇ、ましてや女だ。ここで降参しろ、ここからは容赦しねぇぞ」
烈火が諭すけれど、音無さんはニヤついているように見えた。
その瞬間、烈火の右胸が謎の光によって貫かれた。
それは余りにも一瞬の出来事で何があったのか全く理解出来なかった。
試合は中断され、烈火が運ばれていった。
意識はあった様なので、八乙女先生の特異で治るだろうから一先ず安心できた。
それよりも、烈火が居ないこの状況でどうやって勝てばいいのだろう。
僕がやらなきゃいけないんだ、僕が烈火の分までやらなきゃいけないんだ。
なんだか力が湧いて出てくる様な気がした。
「あら、特異を持たない貴方に一体何が出来るって言うの?」
聞きなれない声、月詠さんの声だ。
ということは、あの手紙を書いたのは月詠さんなのか?
「何の役にも立たない、あの男が居ないと何にも出来ない貴方が私達を倒せるのかしら?」
煩い
「結局あの男も同情心で貴方と付き合っていたのよ、だってそうでしょ?誰も特異を持たない役立たずと付き合いを持ちたくないものね」
「うるさい!お前に何が分かるんだ!特異を持たない僕の気持ちを!」
「全くわからないわね、そんなに馬鹿にされるのが嫌なら、今ここで特異を出してみれば?」
完全にキレた
「うるさぁぁぁぁぁい!」
そこで僕の意識は途絶えた。
目が覚めると、白く染まった知らない天井があった。
「あら、目覚めたの。大丈夫?記憶はある?」
話しかけてきた女性は八乙女先生だった。
ならばここは保健室だろうな。
「試合は?試合はどうなったんですか!?」
真っ先に気になった事を聞く。
「落ち着いて、結果から言うと、相手の降参で貴方達の勝利よ、優勝おめでとう!」
話を聞くと、僕が倒れた後、あの二人は何故か降参したらしい。
そして、先生に僕宛の手紙を渡したらしい。
僕は先生から手紙を貰い、家に帰ってから読んだ。
内容は一文、
北海道で全てを話す。
と書いてあっただけだった。
明日、僕たちは北海道に行く。
明日に備えて今日はもう寝よう。おやすみ。
特異体質国日本〜アビリティ・ジャパン〜 はるる @harururu1127
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