ある日、トリケラ

「ある日、トリケラ」作・飛鳥 休暇 さん

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054930637677


 ◇ 作者様 作品紹介文


 ──好きな子が、突然鱗に覆われた。


 中学三年生の優斗は、夏休みの前日に二週間前から学校を休んでいる幼馴染の家に課題を届けに行く。

 彼女の部屋に案内された優斗は、彼女の右腕が鱗に覆われているのを知り驚くが、彼女に寄り添うことを決めた。

 鱗は徐々に彼女の身体を侵食し、彼女は人間ではないものに変化しようとしていた。


 姿形が変わっても、変わらない愛の物語



 ◇ 私のレビュー


 ──愛情ってなんだろう。寄り添うってどういうことだろう。


 幼馴染みの女の子が不登校になった。その驚愕の理由とは……。

 彼女を支える男の子が、ひたすら一途。心に芯がある。

 彼の愛情。そして寄り添い方。


 小説の極例を、日常に降ろして振り返ってみる。

「……こんな人格者に、なれるわけねええええええ!!!」

「でも、こんな恋人がいたら、もうなんにもいらないわ!!!」


 健やかなる時も病める時も……。嗚呼、寄り添うってこういうことなのね。

 ちょっと泣いた……。


 ◇


 8404文字の小説です。なのでネタバレは避けたいので、別角度から。


 良い作品ってなんだろうって思うんですよね。

 もちろん、小説作法だの、文法ってのは基本として、冒頭から読者を引き込む張り手とか、アッと言わせるアイデアとか、巧妙な伏線とか、美麗な文章とか、躍動感あふれるシーンや、魅力的なキャラクター。まあ、色々とあると思います。

 巧い作家は、それらをごく自然にリズムよく読ませるんですよね。


 ただ、心を揺さぶられる感動は、これらとは別次元だと思うわけです。

 共感とか、感情移入とか、切なさや憧れ。

 読者の感情の水面に、さざ波を、時には飛沫をあげる大波を生み出すもの。


 この物語は、あるひとつの驚愕の変化の他は、わりと静かに進みます。

 なぜ、受け入れていけるのか。常人では、とてもそうはいきません。

 物語は極例を突き付けてきますが、それを日常に降ろして自己を振り返る。

 そうすると、深く考えさせられてしまうのです。

 短い文章のなかに、普遍的な問いがこめられているから。


 深読み推奨の小説です。私はとても好き。ちょっと、じわっとしちゃいました。





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