おかえり、愛しい人

「おかえり、愛しい人」作・機人レンジさん

https://kakuyomu.jp/works/1177354054893077185



 ◇作者さま作品紹介文


 ──妻のクローンを作った男。禁忌を犯した彼に待っていた天罰とは?


〈 カクヨムWeb小説短編賞2019 〉SF・ゲーム部門 過去最高1位作品!

 不慮の事故によって妻を失った科学者の男。

 彼は寂しさのあまり、妻のクローン人間の作成に着手した。

 しかしクローン誕生の直前になって、彼は改心しクローンは廃棄された。

 だがそれからしばらく。罪の意識にさいなまれる科学者は、予想だにしない天罰を受けることになる――。

 止まらない科学の暴走。その罪と罰を描く、愛に狂った〈二人〉の男のSFショートショート。


 ◇私のレビュー


 ──しかし、死は厳然としてそこにある。


 妻のクローンを作った研究者が、息子の恋人を殺し、自死した。

 この小説は、自死した研究者の遺書である。

 研究者は罪を犯した。妻の死に耐えられず、そのクローンを作り始めたのだ。

 しかし、彼は途中でハタと気づく。妻が残してくれた息子を守ることこそが、妻への愛ではないのかと。しかし……。


 受け入れがたい事実。命だけはもう取り戻せないのだ。

 しかしここに、本来取り戻せないものを取り戻せてしまえる人物がいる。

 クローン研究者。彼はやってはならない禁忌をおかす。

 彼の過ちの発端には愛情がある。そして弱さがあった。

 最先端の技術という硬質なものと、愛情という不定形なもの。

 その混ざり具合が絶妙な良作である。


 カクヨムのSFといえば機人レンジ。一話読み切り。是非、ご賞味あれ!


 ◇


 某SF賞に応募した作品。かなり推敲されたようです。

 最初、ラストは今とは違っていました。

 変更された最後のくだりは、まさに「やられた!」です。

 犯した罪の因果が巡る恐ろしさ。ラストの部分があるとないとでは大違いだなと唸りました。


 科学者が亡くなった肉親の複製を造るという話は、SFに昔から見られるものですが、造れるのに造らずにおれるのかという問いを本作は突き付けます。

 実際、もういるのかもしれませんけどね。世界のどこかに。


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