異世界【銭湯】ファンタジー『銭湯と煙突の騎士』

 異世界【銭湯】ファンタジー『銭湯と煙突の騎士』作・北斗 さん

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054889457514


 ◇作者様作品紹介文


 ──銭湯がゴーレムにトランスフォームします

 トリップした先は、煙突の精をゴーレムにした『煙突の騎士』達が戦場を駆け巡る世界だった。

 主人公瀬川涼太は、相棒の銭湯の精『鶴』と共に、異世界の王を救う作戦に出る。


 ◇私のレビュー


 ── 戦闘力のある銭湯? なにそれ、ずるい!!!


 年々寂れていく銭湯稼業。銭湯屋の息子は跡を継がないと思っている。

 彼には煙突の精が見えて言葉が分かる。他人には見えない。

 それはなぜか……。


 コンパクトな分量の中に、ぎっちり練り込まれた設定と次々に起こる事件。

 絶妙にさし込まれる伏線。巧い。これは再読すると更に唸る。


 銭湯の煙突に落雷?が起こることで、異世界に飛ばされる主人公と煙突の精。

 家二軒分もある銭湯は騎士形態に変形する。巨大な煙突は砲身に。

 移動時は煙突の精のなかに格納される。

 もちろん銭湯にもなる。異世界では王様も入れない広々とした風呂に。


 なにそれ、ずるい!(笑)


 異世界で出会ったのは王の奪還作戦中の軍人。そして煙突掃除人の子供たち。

『王鳴』とは何か。主人公の抱えて来た本当の思いは。

 そして王の奪還作戦は成功するのか。


 意表を突かれる設定でグイグイと読ませてしまう。

 構成が素晴らしく、セリフが生き生きとして臨場感があるからだ。

 ぎっちり練り込まれ、しかしライトに仕上げている。(ここ重要)

 そして最後にホロリとさせられる。再度言うが、巧い。伏線回収も鮮やか。


 なにそれ、ずるい! は、本文にもあるが、私は作者に言おう。

「なにこれ、ずるいくらいに巧いっ!」

 ライトな顔をした濃縮還元ジュース。

 伏線を見落とさないように読み込んでほしい。

 表の顔に騙されることのないように……。


 ◇


 ぶっちゃけ、私は滅多に異世界ファンタジーを読みません(笑)

 いわゆる「なろう系」という作品。

 なぜかというとゲーム世代じゃないんです。RPGのお約束が全く分からない。

 RPG。一切やったことない。一切です(笑)


 とはいえ、先入観持ってたら面白い作品を見逃しますね。そう思った作品でした。

 ミステリ好き故か、「そもそも、じゃあなんでこういう設定なんだ」とか「なんでこういう流れなんだ」とか、謎解きしながら読むのですけど、『根拠』のしっかりしている話は、すごい納得感あって好きです。


 やられたなあ。けっこう意表を突かれる設定なのですが、きっちり『根拠』がある。それが分かった時の納得感といったら! その時の「おおっ!」ってのが楽しくて小説を読んでるので。

 んで、再読して「あ、ここに伏線」「ここにも!」って悔しがるわけです(笑)


 約四万字の中編。コンパクトにギュっと詰め込まれた密度の高い作品でした。

 あ。この作者さん。ミステリも書いていらっしゃる。読んでみよ(笑)


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