ツバメのキモチ



音もなく 白く明けてきたら

周りの様子を少し伺ってから

まずは まだ灰色のままの西に向って飛び立ってみる


しばらくして右に旋回

そこで いつもの電線に降り立つ

昨夜の雨で少し湿っているのを足元で確かめたら

胸元からはじめる毛づくろい

同じような早起きさんの影が左右に行きかうのを感じるも

言葉は交わさない

いつものことだ


ひととおり毛づくろいが終わったら

胸を膨らませてから 身震い

これで完了

間髪いれずに

木と木の間から白い光が見え隠れしているその方角へ飛び立つ

併飛するものはいても

向ってくるものはいない

これも いつものことだ

考えていることは皆同じ

光のある方に 向うのは

きっと いいことがあるに違いない

と 思ってるからなんだろう


植えられたばかりの田んぼは昼に行くとして

白い光に無理やり起こされたような川へと向う

やっぱり水量が多い

この音に虫たちがおとなしく眠っているはずはない

だけど

やつらを捕まえるには目だけじゃ無理だ

風を切る音に負けないように耳を澄ます

羽ばたくのをやめて

自分の気配を消して落下する


つかまえたら

背丈の高い草の先端だけを少し揺らしただけにして

上昇する


やれやれ

草を大きく揺らせちまった

他の奴らに感づかれたかもな


まあいい

陽はまだ昇ったばかり

こいつをもって

まだ半目をつぶってるはずの

腹ペコどもをたたき起こしてやる


帰りは口笛でも吹きながら飛んでやるさ




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