今がすべてではないのなら

 「今がすべてだ、と思っているかもしれないが、学生時代なんてのは、ほんのわずかな期間で、社会人になってからが人生の本番で、それはずっとずっと長く続くんだ」


僕が学生の頃に親父に言われた言葉だ


おそらく、当時の僕は、なにか極端なことや無謀なことを後先考えずに性急に行おうとしていたのだろう

そんな僕に、親父はベタな年の功的な訓示をした

この訓示をいまだに覚えているということは、

当時、この訓示に僕はあっさりと陥落したのだろう


では、

もしも、死後の世界があるというのなら、

社会人なんて期間は、

顕微鏡でも見えないくらいに短い期間だと思われるが、

社会人になって久しい僕は死に至るまでいったいどうやって過ごせばいいのだろう

それは、

親父でもきっと答えることが不可能な話だ


永遠に続く死後の世界を前にしたら、

現世でそんなにのんびりもしていられないんじゃないかって、

思うお年頃になりましたとさ

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