僕の老い



今日も同じような終わり方

そういえば 始まりも同じような始まりだった

一日が長くて 一週間が早い

こんな時の過ごし方をもうだいぶしてきている


コーヒーの杯は増え

どうでもいい話にうなずく回数も増えた

作り笑顔のパターンはひとつだけになり

もてなす言葉は尽きている

揚げ足取りのギャグは飽きられ

肝心な言葉は一向に口から出てこない

空を見上げても月が出ているか出ていないか確かめるだけで

わかる星座はほんの少し

ライトとワイパーを間違えることが頻繁になり

ナビの画面も見ることがなくなった


スポーツニュースも最近見ない

天気は気にならないのに気温だけやけに気になるようになった

昨日食べた夕飯のメニューは忘れてるし

下手をすると今日の昼食も忘れている

書いても書いてもDVDのインデックス書きは終わらず

デッキは相変わらず今日も何かを録画している

何年も前の油性ペンはインクがなくなり

筆ペンのインクも残り少ない

食べかけのお菓子の袋も気にならなくなったし

聴かなくなったMDはツインタワーになって世界一の高さをキープしているし

キーボードのミスタッチの多さに原稿書きも進まない


ありきたりな風景をいつまでも見続けたり

そんな風景に思い入れしてしまう

桜の木のたった一つの花に見入ってしまうし

鯛焼きが無性に旨かったり

日本酒をコップでいただくことが常となって

つまみはわさび漬けを醤油につけていただき

たけのこの味噌汁をいただかないと残念に思えるし

たけのこご飯のときはお酒を控えてお代わりする

草むらに敷物無しで大の字になっても平気だし

蟻が耳元を伝って歩いてもいらいらしない

日除けの傘は邪魔だし

汗が噴出しても気持ちいいくらいだ

言葉がなくても間が持てるし

聞いてわかる人となりは信じなくなった

ヒットチャートはとっくに興味ないし

だけど 好きな音楽は変わらない

そして 少しずつ増えている


だから

まあ いっか 

って

ちょっと思ってる




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