メリーゴーランド



メリーゴーランドが大好きな君だった

顔を真っ赤にして どんなに泣いていても

黄色いつまみを引っぱって

いつもの「ゆりかごの唄」がはじまると

0.7秒で泣きやんで

ささやかに風切る音をさせる無数のプラスチックの帯を見つめたんだ


さっきまで つぶった目の真ん中にたまっていた

透明真珠の涙は そっと破けて

まだ赤みが残るほおを

ぴかぴか 光らせながらゆっくりつたうんだ


でも

そんなことに君は気がつくことなく

すわりきっていない首で 頭をぐらぐらさせながらだけど

瞬きしないまっすぐな目でメリーを見たんだ


途中まではなんとなく一緒に唄ってるけど

次の曲に変わる頃には いつも

お父さんも涙が出てしまってたんだ

透明真珠じゃない

べちゃべちゃした涙だったけど


でも

やっぱり

君は

そんなことに気がつくことなく

まわるメリーを見つづけてたんだ


いつもね




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