無常 無情 無上

この静寂を打ち破るのは たった一人の声でいい

この怒号を静めるのは たった一人の声でいいはずなんだ


どんなに準備万端で 早起きしたって

前に たった一台遅い車が走っていれば それだけで渋滞になるんだ


感動のクライマックスで 目頭が熱くなっても

誰かのくしゃみで しらけてしまうんだ


大仕事を成し遂げた主人公は

最後の最後で どうでもいい奴に殺されるんだ


朝早く 家の前を掃いても

夕方には 吸殻とつぶれた缶ジュースが転がってるんだ


どんなに苦労して算数の問題を解いたって

次にもっと難しい問題が待ち構えてるんだよ


スローライフだって人は言う

大事なものを見失ってると人は言う

今まで作りあげてきたものへの反省だと人は言う

ほんとか?

本気でか?


じゃあ まずは そんなこと言ってるテレビを捨てろ

そんなこと書いてる雑誌を見るな

そんなものとは無縁な生活がスローライフだ

そんな言葉の存在すら知らない老人の生活こそがスローライフだ


僕が待ってるのは そんなムーブメントじゃない

僕が待ってるのは

この静寂を打ち破るたった一人の声

この怒号を静めるたった一人の声なんだ




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