第10話 理由

ジリリリリ

電話が鳴った・・・


家族は誰もいなかったので、僕が出た・・・

「はい、佐竹です」

「あの、こちら緑川声優スクールですが、真美さんは御在宅でしょうか?」

「真美は、出かけておりますが?」

「わかりました。ご帰宅なされたら、お電話するように、お知らせください」

「・・・はい・・・」

声優スクール?

なんだ・・・一体・・・


しばらくして、真美ちゃんが帰ってきた・・・

「ただいま。ふみやくん。今日は、私が料理つくるね」

そういって、台所へ向かう・・・


「真美ちゃん・・・」

「何、ふみやくん」

「電話があったよ。帰ったら電話くれって・・・」

「どこから?」

「緑川声優スクール」

そのとたん、真美ちゃんの手が止まった・・・


「ふみやくん・・・」

「何?」

「驚かないの?」

「驚いた」

「訊かないの?」

「うん」

「どうして?」

「真美ちゃんにも、言いたくないことはあるだろうから・・・」

しばらくの静寂ののち、真美ちゃんは、口を開いた・・・


「ついに、ばれちゃったね」

「えっ」

「おじさんと、おばさんには、話してたけど。ふみやくんにはまだだったね・・・」

「えっ」

「わかった。せっかくの機会だから話しておくね」

そういうと、真美ちゃんは手を休め、僕の前に腰をかける。


「実はね、私がここに来た。本当の目的は、声優スクールに通うためなの」

「えっ」

「私、子供の頃から、声優になるのが夢だったの・・・」

「そういえば、言ってたね・・・」

「うん」

一呼吸おいて、真美ちゃんが続けた・・・


「本当は、高校卒業してからにしようと思ったんだけど、

パパとママが、海外に転勤になったし、早い方がいいと思って、

ここに来たんだ・・・」

「そっか・・・」

「ごめんね。隠してて・・・でも、ふみやくんには、デビューしてから、教えたかったんだ」

「そっか」

その後の真美ちゃんは、生き生きとしていた。

いつも、生き生きとしているが、それとはまた違った、輝きがあった・・・


「ところでいいの?」

「何が?」

「電話、しなくて・・・」

「あっ、忘れてた・・・」

真美ちゃんは、慌ててスマホに手を当てて、部屋から出た・・・


僕がいると話しにくいのだろう・・・


しばらくして、真美ちゃんが戻ってきた・・・

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