第六幕 殺意のある攻撃
悠真は全身の肌が
「……お、おう! 大丈夫みたいだ。行くぞ、エレア」
罠も
しかし
悠真は
「ふう、よかったぁ……」
「おい、お前」
エレアを見ると、赤らめた顔を
「なんだ?」
「いつまで手を
エレアが
苦笑で応じながら手を離すと、エレアは
「私に
「……じゃあ、
「
両腕を下にまっすぐ伸ばして、エレアは声を
不意に、悠真はどこか
エレアと出会った
「
「わ、わかっているわよ!」
目の前にある木の根で造られた扉を開くと、また長い通路が続きそうだった。
「まさかとは思うけど、こんなのばかりだったらどうするよ」
「か、考えたくもないわ」
「次の試練はあれだな。お互い下着姿でくっつきながら水中を進むとかだな」
「は、はあ? お前、本当にただの変態じゃない!
悠真は苦笑交じりに言葉を返す。
「いや、別に俺がそうしたいわけじゃない。ただ、そんなのもありそうだなって」
「そんな場所、あるわけないじゃない! 常識で考えなさいよ、常識で!」
予想以上の
そうこうしている間に、次の扉の前に
「さて、次はどんなキワモノ――」
言いながらに開くと、空中
「うぅっわ。なんじゃこれ」
細い柱がたくさん立てられた空間の中――その柱と柱の間を、
もし少しでも
「そうだ。お前は雷属性なんだからさ、普通に通れるんじゃないのか?」
「無理に決まっているでしょう! 同属性だからって、
「ああ、まあ、そりゃそうか」
黒髪に指を通し、悠真は頭を
「じゃあ……やっぱり、台座の文字を読むしかないか」
(これは、さっきと同じか……)
台座を前にすると、隣にいるエレアが文字のあるほうへと視線を落とす。
つかの間を
「ばっ、ばば、ばっ、
「今度は、なんて書いてあるんだ?」
「お前が変なことを言ったからよ! 絶対そうに決まっているわ!」
エレアがためらいがちに、たっぷりとした間を置いた。
「お互い、抱き締め合いながら、
「……え? なんて?」
悠真は、しっかりと聞き取れていた。
聞き取れていてなお、耳を疑って
「だから、お互い抱き締め合いながら、稲妻の中を進むべし」
悠真は深く考え込む。何かの
聞き取れなかったと思ったのか、エレアは力を込めるかのような姿勢で叫んだ。
「だから! お互い抱き締め合いながら進むの!」
「いや、聞こえてるよ」
エレアは
「こ、殺すわ、お前!」
エレアに首を絞められ、そして体を揺さぶられつつ悠真は考える。
もはや訳がわからない心境であった。死を強く連想させる場所の割に、回避方法があまりにも子供
エレアの両手を払いのけてから、悠真は腕を組んだ。
「しかし宮廷法術士ってのは、欲求不満者の集まりか何かなのか?」
「知らないわよ! どうしてくれるのよ、これ。お前のせいだから!」
「いや、どう考えても俺のせいじゃないけどな……俺のは下着姿でくっつくだし」
「うるさい! ちゃんと
激しくうろたえる彼女を見ていると、悠真は逆に
「まあ、なんにしても……やるしかないだろ?」
「うぅ……だって、こんなの……」
片足を一歩後退して、エレアは口ごもった。
悠真は指を二本立て、彼女に見せつけた。
「一つは進む。もう一つは……やめるって選択もあるが?」
「やるわよ……やるに決まっているじゃない! は、早く私を抱きなさいよ!」
言葉を吐き捨て、エレアは両腕を大きく広げた。
エレアの姿勢と言葉のみを見れば、非常に
正直なところ、悠真も異性と
意を決し、
目の前にしたエレアは、驚くほど
だからここは、無心を貫くべきだと自身に言い聞かせた。
いい香りが鼻先をくすぐり、柔らかな感触があちこちから伝わってきた。無意識に全神経が
そこに無心など、どこにもなかった。
「い、行くわよ!」
次の扉がある場所まで、
まるでカニみたいな歩き方になっているに違いない。へんてこではあるが、そんなものがどうでもいいと思えるほど、抱き締め合っているほうが
意識を別の場所へ
時間を消費しつつ、悠真とエレアはなんとか扉を前にする。
お互い同時に離れ、息切れにも似た溜め息を何度も吐き捨てた。
「やっと、抜けられた……」
疲労が溜まってきた悠真の目に、ある物体が視界に入る。
一瞬、意識が
(いや、違う違う。今はそんなのどうだっていい!)
それが意味するのは明確であった。エレアの家族どころか、銀色の髪と瞳を持った彼女にも観られている可能性は非常に高い。
錬成生命体を見る瞬間まで、悠真はすっかりそのことを
悠真は
思い返せば、エレアは言葉の
(言えよ、それ! なんで……)
彼女からしても、言えるはずがなかった。それを言ってしまえば、本来はそうしているものだと疑われかねない。そこまで察していても、悠真はエレアを
なぜ睨まれているのかわかっていない様子で、エレアは小首を
「お前、もっとちゃんと――」
そのとき、宙に
《参加者の皆様に、お伝えします。参加者六百二十三組の内、五百六十八組が脱落。宝玉は今もなお、誰の目にも
悠真は目を大きく見開く。開始してからまだ間もないはずであった。
今現在の時点で、半数どころかすでに約九割が脱落している。
(残りは、えっと……五十五組しか残っていないのか?)
九割近くが
「エレア、
「え、ええ。そうね」
悠真の
木の根で造られた扉を開き、悠真はエレアと進んでいく。
次の扉までの道中――これまでとは様子が異なる分かれ道があった。
「なあ、エレア。あれなんて書いてあるんだ?」
「ん……地上への道はこちらって書いてあるわ。
「あれだけ脱落者が多いんだから、そういうのも作るか。じゃあ、こっちだな」
悠真とエレアはもう一方の道を進み、そしてまた閉じた扉の前に
(頼むから、変なのは来ないでくれよ……)
願いを込め、悠真は扉を開いた。瞬間的に、
「エレア、危ない!」
悠真達の上空を、
これまでとは違う
「ちょっと、
「いやぁ……今度の奴は結構反応が
どこかで聞き覚えのある男女の声が響いた。悠真は扉の先に視線を移す。
青髪を
(こいつら! まさか――)
「
エレアがか細い声をあげた。目を向けた直後、悠真は
彼女を押し倒した
今朝と同様、エレアは耳の先まで顔を真っ赤に染めた。
「悠真の馬鹿ぁあああ――!」
悲鳴
謎の攻撃を受け、エレアを
「まあ……
一緒に立ち上がったエレアが、怒りのこもった声音で言葉を返した。
「マヌエラにダルシオ……あなた達、何をするのよ!」
「もちろん、
「宝玉を入手するのは一組。他者を蹴落とさないといけないのですわ」
大多数が脱落したのはそういうのもあるのだと、悠真は理解する。
「それにここは、そういった場所だ。進んでも、扉が閉じないだろ」
肩越しに扉を見れば、確かに閉じていない。今までとは違っていた。
「
男の
「
悠真は瞬時に姿勢を低くして、攻撃系統の秘術を
(なんだ、こいつ。これじゃあ、まるで……)
悠真のみを
「
「やっぱりか。エレア、もう一人は頼んだぞ!」
エレアならできると信じ、悠真はあえて可能かどうかは
言葉にはしなかった考えが伝わったのか、エレアは
「ええ、わかっているわよ。お前、女が相手だと完全に無能なんだから」
何も伝わってはいなかったが、結果としてはそれでもいい。ただ、なぜ味方からも精神的な攻撃を受けなければならないのか、
悠真は
瞬間――黒い指輪が雪白に輝き、その光が両腕を
悠真は右拳を
「おいおい、本気か? 格闘術で俺とやり合うつもりかよ」
ダルシオが
悠真と同じくアクセサリーが雪白に輝き、一本の
「俺の間合いに入れると思うなよ!」
構えたダルシオを見て、悠真は首を
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます