27話 「連休前の講義はカオス」
大学生としての時間はとても早く感じる。気が付けばもう四月が終わって、五月を迎えてあすからはもうGWである。
それだけ今の自分の中で苦しいことよりも忙しくても、とても充実した時間を過ごせているということなのだろう。
中学高校なんて誰もがあっという間とか言うけど、俺にとっちゃただの苦痛でしかなかったからそんな体感は全くなかったからね。
講義では今までいつも一人寂しく受けて結局のところ字が汚かったり小さかったして分からなかったものや、理解できなかったものはあとで追加で自分で調べるということをしていたが、奈月が隣に居てくれるようになってからはお互いに助け合って講義を受けられるようになってかなり楽になった。
最初こそ億劫だった実習にもかなり慣れてきて、実習の中で行う実験や作業、雰囲気にも対応できるようになって大分楽になってきたものだ。
この実習ではペアの夏帆のお陰でとても助かっている。彼女とはとても話しやすく、その上とても優秀でレポートの課題等々分からないところをたびたび助けてもらっている。ちなみに以前小テストについて夏帆に助けを求めたが、その夏帆の助けのお陰で全体の85%ほどが補講や追試になったのに俺たちはならずに済んだ。
ただ、先週のラットの解剖では臓器を取り出すという採血よりもより刺激が強いことをしたので、夏帆は実習中はしばらく半泣きだったうえに終わった後は放心状態で目をしばらくぐるぐる回している状態になっていてちょっと大変そうだったけれども。
なんだかんだありながら、隣に居る女の子たちに助けられながらのこの一か月間、自分で振り返っても充実していると思う。
今日はGW休み前の日で今週は実習が休みになっていて、今日の午前の講義をもって休みに入る。中にはこの講義が終わった足でそのまま実家に帰るつもりなのか教室にキャリーバックを持ってきている強者までいる。
その少しでも早く実家に帰ろうという気持ちはとてもいいことなのだが、さすがに場所を取るのでどうかとも思ったりもする。だが、もう講義を休んでしまっている者もよりはちゃんと講義を受けて帰ろうとするだけまだ良い方か。なにはともあれそれだけみんな休みを楽しみにしているということだろう。
「ふう、この講義が終わったらちょっとゆっくりできるね。実習の先生も気を遣ってくれたみたいでレポートはこの期間に出さなかったし」
「いや、俺はお前が遊びに来るせいで全然ゆっくり出来ねぇよ」
それにレポートだってGW挟むとどんだけ口酸っぱく進級できなくなるかもしれないって言っても平然と忘れるやつがいるからもう出さねぇからここでやって終わらせて帰れってほぼ諦めたような口調で休み明け提出という形を辞めただけだし。マジで教員、教授の皆さんは大変だと思う。そりゃ禿ると思う。
レポートとか提出しないといけないものを出さなくて困るのは生徒だけじゃない。それに対応したペナルティや追加課題を考えたりそれを見ないといけない教授も死ぬほど大変なのだ。実質仕事が増えるのと変わらない。
「へへへ、二泊三日ですぜ兄さん。泊まるとは言ったけど一泊二日なんて誰が言った?」
「ちっくしょー……人の都合というものをちょっとは考えろや!」
「どうせ暇なんでしょ? いいじゃん」
「くっそー……。こんなところでもボッチというものは不利に働くのか……」
友達がたくさんいれば必ずどの日かどこかに遊びに行こうという話にでもなりそうなもんだからな、そういうことがないボッチには言い訳に出来る材料もないというわけである。雑魚過ぎて泣ける。
ちなみに夏帆は実家に帰るんだとか。親が帰ってこいと何回も言ってくるのでそれを聞かないわけにはいかなくなったと苦笑いをしながら話していた。
まぁ親ってそういうものですわ。特に女の子ならなおさらだと思う。ちゃんと帰ろうとするあたり、とてもいい子だと思う。
ここに居るやつは悪い子なので、全く帰ろうとかいう発想はないらしい。
まぁなぜ二泊三日というスケジュールになったかというと、先週いつも通りぼんやり講義を聞いているといきなり奈月から「連休のお泊りについてだけど、二泊三日ということでよろしくー」とか言われてしまった。
俺は思わず「はぁ!?」と声をあげそうになってしまったのだが、その時の講義をしている教授が結構怒鳴り声をあげる怖めの人だったで教室の中自体がいつもよりも静まり返っていたのでその声を慌てて自分の中で封じ込めた。
結局休み時間に散々言い返したが、全然聞き入れず結局そのまま押し切られて今に至るというわけだ。
俺の発言権が弱すぎて泣ける。
「お前、着替えとかどうするんだよ。まさか俺の部屋で洗濯するとか言わないだろうな!?」
それだけは勘弁してくれないと困る。目のやりどころとか気持ちの問題とか色々。
「なーに気持ち悪いこと考えてんの? 家が近いんだからそれくらいはあっち行って持ってきたり置いてきたりすりゃいいじゃん」
「それさ、俺の家に来てわざわざ泊まりに来る必要あります?」
「ちっちっち。分かっていないなぁ……。これだからボッチは。小学校中学校のときクラスの友達の家に泊まるということと同じなのだよ」
なんだろう、めっちゃむかつくけど確かにその理論だと納得できるかも。ただ俺の場合、小学校の時は友達とよく遊んでいたがお泊り会というやつはしたことがなかった。っていうかしたいと思わなかった。親に散々食事などのマナーで怒られ続けてきたので、他人の前であまりご飯を食べるとか他人の空間で生活感を晒すようなことをしたくないと思っていたことが大一要因であった。今思えばこういう面からだんだんと少しボッチの才能が開花していたような気もする。
そんな話をしていると講義が終わった。休み前ということでみんながそわそわしているのもあって教授が気を遣って早めに終わりにしてくれたようだ。
みんな出席カードを教卓前に出すとものすごい勢いで出口に向かっていく。いつも出ないその猛烈なエネルギー、分かるぞ。休み前だけ出る高揚感のあれな。もう何でも出来そうな気がするもんな。
そんなエネルギーを以上に帯びた大群が教室から出ていくまで俺たちは少し待つことにした。出口はどこも映画終了後になるような大渋滞になっている。
その渋滞は5~10分もすれば消え去り、あっという間に静かな教室が出来上がる。俺たちのように少し待ってから出ようとする者やまだ教室で話をする者。そして教授のみ。
俺たちも教卓の上に出席カード出して教室を出た。
「やったぜ、GWだあああ~~~~~~~」
「はぁ、こいつとGWの大半を過ごすのか……」
そしてそんな気の抜けた会話をしながら校舎を出てそのまま奈月と別れて帰宅する。まだまだ昼間でこんなに早い時間に帰るのは久々である。
「掃除するかぁ……」
今日は以前よりも念入りに色んな箇所を掃除しておかないといけない。そのほかにも洗濯物も回せるだけ今日着ていた分も回しておくことにしよう。まだ昼間であるし、今から回せば明日までには乾くだろう。
明日からはGW休み。そしてこの連休をほぼ奈月と過ごすことになる。
何もなければいいけど、何も起きないわけがないよなぁ。せめて楽しい休みになりますように……。
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