??-?? ――、――――。――
「お兄ちゃん」
こんなにも幸せだと思える日は、この世界に来てから初めてで。
今までのことを考えると、すぐ何かが起きてまたダメになるって思えて。
続くとは思ってなかった。
だって、俺は。
刻の護り手となって枠から外れ。生命の輪廻を司る観測所の主となって。
世界から外れて、世界に敵対したから。
世界は俺が干渉したことで変わる世界を、変えようと動いて歴史をあるべき姿へ修正しようとするから。
「お兄たん」
だから、こんなにも。
続くなんて思ってもいなかった。
のんびりできた日々は、他にもあったのは確かだ。
でも、それはまだ刻の護り手になる前だったからで。
まだ、異分子だと世界から思われてなかったからであって。
本格的に異分子と判断されたから、乗り出してきた世界は、一気に加速させていくはずだった。
だから――
「御主人様」
祭りが終わって、この幸せはこれからも続くとは思ってなかった。
だから、幸せはしばらく続いたことが嬉しかった。
でもやっぱり。
今にして思えば。濃密な時間だったからこそ、ただその時間が長く続いていると思ってしまっていただけで。
世界はやはり、動いていたのかもしれない。
傍に愛しい三人がいて。
周りに友達がいて、一緒に戦う仲間がいて。
違う世界にはなったけど、また家族達と巡り会えて。
これから父さんと義母さんに会いに行くって。姿変わっちゃった家族もいるけど、やっと家族がみんな揃うって。
この世界で出会った皆との別れは悲しいけど、また会えるって分かっていたから。また皆で笑い合えるって思っていたから辛くはなくて。
自分のやるべきことをやっと理解できたけど、もし、この結果が世界を救うなんて大それたことをしようとしたからなら、今すぐ止めてやる。
こんなことになるなんて……思ってなかったんだ。
あいつのせいで。
俺のせいで。
俺の世界は、壊れた。
ぱちぱちと、木が
『俺』の悲痛な声が聞こえた。
その声がなぜそんな後悔をしているか、俺は知っていた。
見ていたから。
ずっと、動けないまま。
ずっと、悲しみの中。
何も出来ず、乗り越えられなかった俺が、乗り越えた俺を。
見ていたから。
……そう、だよな。
そう思う。
俺もここからお前を見ていてそう思った。
だから、俺は……この刻のために生まれたんだって。
そう、思えた。
俺はもう長くない。
だから、せめて。
お前の為に――お前が持っているなら俺も持っているはずのこの力を――
――刻族の力を。
お前の為に俺の力を。
死に行く俺から。
生きなければならない、生きて、先を進まなければならない、お前の為に。
この力のすべてを、使おう。
だから、だから……
俺の分まで
生きろ。
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