ep.13 目を覚まし

エクスは目を覚ますと、自分が部屋の中に居ることに気が付く。


簡素なベッドに寝かされていた事を理解すると、運んで来てくれた人物が居るはずだとあたりを見回す。


山のように積まれた本と紙が、部屋の隅にあった。


ベッドから降りると、エクスは部屋から顔を出して周りを見る。


薄暗い廊下には冷気が漂い、季節が冬だという事を再確認させた。


寒さに少し身を震わせながら廊下を歩くと、下へと降りる為の階段が姿を現す。


(ここは2階だったのかな………)


そう思い下に降りていくが、薄暗い程の明るさはやがて目を凝らさなければならない程に暗く、冷気は更に冷たさを増す。


階段を降りると、すぐそこには扉があった。


エクスは、寒さと不安から人を求め扉を開ける。



「ん…………?あぁ、目が覚めたのかな?」


暗い部屋の奥から、声が聞こえる。

その声に聞き覚えがあるエクスは、驚き声を返す。


「……ルシエラさん…………?」



部屋の奥から指を鳴らす音が聴こえると同時に、部屋が明るさを取り戻す。


突如明るくなった事により目が眩むが、すぐに視界を取り戻す。




先程の部屋とは比べ物にならない程夥しい数の紙と本、そしてフラスコの様なものがそこにはあった。



「少し、汚れて居るが気にしないでくれると助かる」


その部屋の奥で、紙と本の上に座りこちらを見据える銀髪の少女。


「この間ぶりだね、エクスくん」


ルシエラは初めて会った時のように笑顔を作って見せた。



「…ルシエラさん、だよね?」


ここで再開すると思って居なかったエクスを、ルシエラは愉快そうに笑った。



「なんだ?おばけでも見たような顔をして。酷いじゃないか」


わざとらしく怒って見せると、慌ててエクスは謝罪する。


「あ……ご、ごめん!君が此処に居るとは思わなくて……」


「冗談だ、それよりもう起きたんだね。……取り敢えずここは地下室だし、上に行こうか」


そう言うとルシエラは立ち上がり、エクスの横を通ると部屋を出た。


エクスは部屋を眺めてから、後を追った。


ルシエラの後を付いていくと、ダイニングの様な場所に出る。


「あぁ、そこの椅子に座っててくれ。今お茶を用意するよ。寒かっただろう?」


言いながらルシエラは何処からかお茶を取り出し、湯を沸かす。


「うん………少しね。あそこは…………?」


「あー………、あそこは、私が考え事とかする時に使うんだ。寒いのは、眠くならないようにかな。寝る時はまた別の部屋だよ」


話しながら、エクスはルシエラの後ろ姿を見ていた。

会話をしながらだと言うのに、ルシエラは息をするように魔法を使い水を出し、湯を沸かす。


その動作を流れるようにこなす姿に、日常的に繰り返している事なのだという事が分かった。


それから間も無く、お茶を二つ程用意したルシエラはテーブルの上に置く。


「ありがとうございます」


そう言いながらお茶を飲む。




「あ、ついでに君を寝かせていた部屋が私の部屋だよ。異性を入れた事は初めてだ」


そう言いながら少し頬を赤らめたルシエラの姿に


「………げほっ!!」



エクスは驚き、咳き込んだ。

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