ep.3 件の村

寒さに身動ぎをした所でエクスは目を覚ます。

皮と布の切れ端を詰めて作られた寝袋からもそりと出ると、大きく身体を伸ばした。


「んん…………!さむいなぁ……」


横を見ると、昨日火の番を任せたティエラがぐっすりと寝ていた。

恐らく暫くしてからトーフェと変わったのだろう。


羽織る物を探し、コートを取るとそのままテントを出る。

火の前にはトーフェが静かに瞑想をしていた。



「む……童子か。眠れたか?」


歩いてくる気配を感じたのか、片目を開きこちらを見ている。


「ええ、お陰様で。トーフェさんも少しだけ寝てていいですよ」


「いや、いい。あまり睡眠を取りすぎても動きが鈍るからな」


そんな他愛も無い話しをして少し後、ティエラがテントから顔を出した。


「おはようございます……寒いですねぇ…」


口元に手を当てると、息を当てながら暖を取る。

今ご飯作りますからね、と準備を始めるとエクスとトーフェも手伝う。


暫くしてから、朝食の準備を終えるとそのまま食べる。


この日は干し肉を戻したスープと軽く炙ったパンであった。









「あれ、多分フレンツェさんが言ってた村じゃないかな?奥に森もあるし」


エクスが示した先は小さな村とその奥、霧の漂う森が見えた。


「なんだか、朝なのに村に元気が無いですね……やっぱり魔物が原因で霧が出てるんですかね…」


ティエラが杖を握り締める。


「村で話を聞いてこよう。何か詳しい人がいるかもしれない」


トーフェが静かに同意をすると三人は村へと急いだ。





村へと辿り着くと、何処か重苦しい雰囲気が三人を迎える。


季節は既に収穫期を過ぎている為、畑仕事をしている者は殆ど居なかった。

それでも何人かは土を整えたり、これからの季節に向けて準備をしている者もいたが、皆一様にくらい表情を見せている。


「すいません……僕達旅の者なんですけど、村長さんとお話をしたくて…」


仕事をしている一人に声を掛ける。



「あぁ……?そうかい、村長なら彼処の家に居るよ。……早めに村を出た方がいいと思うけどねぇ…」


そう言うとさっさと離れてしまった。


「……やっぱり森が原因かな…村長さんに話を聞いてみよう」



そう言うと先ほど教えて貰った家に向かい、扉を叩く。


「すいません、旅の者です。少しお話を聞きたいんです。宜しいですか?」


暫くしてから、扉が開く。


姿を現したのは、杖をついている老婆だった。


「あらまぁ、珍しいねぇ。こんな所に。なんだい?話って」


そう言うと、笑顔を見せる。


「はい、この村で困っている事が起きていると聞いて、領主様に代わってお話を聞きに来たんです」


そういうと安堵したように息を漏らす。


「よかった………わたしゃ、この村がもう見捨てられたもんだと……」


そのまま家の奥へと歩いていく。


「上がってください。大したおもてなしもできませんで、申し訳ないですけどね」

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