ep.2 その夜
「ふわ…………ぁ」
欠伸をしながら火の番をするエクスは考えていた。
王都での戦いの前、出会った少女の事を。
「今何してるんだろう……」
流れる銀色の髪、優しげに笑う表情が鮮明に思い出せる。
あの時自分を応援してくれたその言葉が嬉しくて。
それでも
(騎士にはなれなかったけど)
その事が少し申し訳なく感じた。
火の番をしてから3時間程が経った頃、テントからティエラが出てくる。
「あ………もう起きたんだ」
「はい。あ、でもちゃんと寝てますからね?」
焦った様に言うティエラの姿が何処か面白くて、少し笑う。
その事にまた少し、念を押すように繰り返す。
その姿が更に笑いを誘った。
「ほんとですよ?」
「分かってる」
会話をしながら、火にあたりに来るティエラ。
「やっぱり少し寒いですね、この時間は」
辺りは暗く、光源は火と星だけであった。息め白く凍る事で余計に寒さ感じる。
草木も殆ど枯れ落ちている為、何処かもの寂しさがあった。
そんな中で
「あ、でもさ」
エクスが空を見上げる。
「こうして空を見るのも好きだなぁ」
ティエラが釣られて空を見上げると、ほぅと息を洩らす。
白く輝く無数の星と、優しく照らす月がはっきりと見えた。
「確かに、綺麗ですねぇ……」
このまま静かに眺めながら、暫く過ごしているとぽつりとエクスが溢す。
「この星を、ルシエラさんも見てるのかなぁ……」
「ルシエラさん……魔女の方でしたよね」
「うん」
エクスはルシエラと出会った時の話しをティエラと話した。
「そんな事が……」
「うん、だからまた会ったら話したいんだ」
そう語るエクスの表情は何処までも明るく。
ティエラも嬉しそうだった。
「私も会いたいです。会ってルシエラさんと仲良くしたいです」
優しそうな方ですし、と言うとエクスは小さく欠伸をする。
「……ごめん、そろそろ眠いや。あと、お願いしていいかな?」
「あ、はい!任せてください!」
力強く答えるティエラにエクスは笑みを溢すと立ち上がる。
「じゃあ、何かあったら起こして……おやすみ…」
「おやすみなさい」
眠気がピークなのかふらふらと重そうに頭を揺らしながら、ゆっくりとテントへと帰るのを見守ると、ティエラは火に薪をくべた。
ティエラは一人、火の番を始める。
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