ep.21 指し示す場所
トーフェ達が迷宮の転移魔法陣により飛ばされ、着いたのはエストルの門の前だった。
突如現れた人々に驚く門番達であったが、倒れているのが行方不明になった者達だと気付くと直ぐに行動を起こした。
途中、トーフェに説明を求める為に領主の元へと案内され、感謝されたり等の一幕があったものの直ぐに解放される。
倒れていた者達は治癒院へと移され暫くの間は様子見であったが、徐々に目を覚ます者が増えると漸く一安心したように落ち着きを取り戻すのであった。
そしてエクスとティエラもまた、治癒院にて治療を受けていた。
魔族との戦い、リッチとの戦いによって負った傷に加え、エクスは疲労、ティエラに至っては衰弱していた為である。
それから2日後、エクスが目を覚ます。
「………あれ、ここは………」
少し掠れている声が部屋へと響き、窓の外へと逃げる。
肌寒さを感じ、起き上がろうとするが全身が重く、動きづらい。
「………っ。そう、か。帰って来れたのか……」
ベッドに腰掛けるようにして起き上がり、外を見ると辺りは暗く、月明かりだけが部屋を優しく照らしていた。
「どのくらい時間が経ったのかな……」
辺りに日付を確認出来るものが無いか探し、諦める。
部屋の中には水の入ったポットと、少し高そうな絵以外には特に無かった。
「この時間に誰かを呼ぶのもなぁ………」
他の治療を受けている者が居ると考え、二度寝する事に決める。
「明日になったらで、いいかな………」
再びベッドに倒れ込むと、布団に潜り込み、再び眠りにつく。
眠りについてから暫くすると、夢を見始めた。
白い空間の中に漂う中で、朧気に思考をする。
(…………これは、夢の中か……?)
体を襲う浮遊感に身を任せ、何処までも漂っていると突如引っ張られるような感覚に陥る。
(……っ!なん、だ?一体何が……)
黒い穴を通り、辺りを見回すと同時に気付く。
(体が、自由に動かせる………?不思議な夢だなぁ……)
手を開いたり閉じたりして、動かせる事を確認し、感覚だけが無かったが夢だからと思考を切り替える。
辺りは何処か幻想的で、それでいて寂しげに朽ちた神殿がぽつんとあった。
(何処だろうここ……見た事無いや……)
神殿に呼ばれている気がして、エクスは立ち上がるとそこへと向かう。
(古いけど、綺麗だ……それに、何だか懐かしい気がする……)
柱に巻き付く様に生える草木も、色とりどりに咲く花も何処か、懐かしい。
やがて神殿に入ると、奥には女性が座っていた。
その姿は神秘的で、その姿が当然の様に思えて。
(綺麗な人だなあ……)
エクスがそんな事を思っていると、女性は優しい笑顔で手招きをする。
エクスが近付くと女性は目を閉じ、足元を軽く叩く。
その瞬間、足元に映像が走る。
「うわっ!何だ……?」
それは上空から見ている映像で、映っているのはエストルの街だった。
女性を見ると、悪戯な笑顔を浮かべながら、足元を指で示す。
エクスが再び足元に視線を向けると、映像が動き出す。
エストルの街から、ゆっくりと動き出し、暫くすると一つの森で、また止まる。
女性は森を指差し、エクスを見つめた。
(行けって事なのかな……?)
「行けって事ですか?」
エクスが聞くと大きく頷き、笑みを浮かべる。
「………分かりました。それで、貴女は一体………」
問おうとした瞬間、再び引っ張られる感覚に襲われた。
「っ………またっ……!」
エクスの体がまた浮遊感に襲われ、景色が遠のいていく。
女性を見ると、少し悲しそうな顔でこちらを見ていた。
(貴女は一体………何者なんだ………?)
声はもう、出なかった。
(あの森に、行けば何か分かるのか………?)
エクスの姿だけがその場から消え去り、女性だけが残されていた。
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