ep.7 領主館にて
翌日、夕暮れまで時間があるエクスは領主へと報告を済ませる為に再び館に訪れていた。
「おお……遂にその塔へと突入されるのですね!」
「はい、聴き込みをした結果、夕暮れ時に霧と共に現れると推測しました」
フレンツェは難しい顔をする。
「しかし、夕暮れ時はいいとして、霧ですか………そうなると霧が現れるのを待つしか……」
「いえ、霧についても解決しました。霧を起こせる結晶を精霊様から頂いたので、恐らく大丈夫です」
その言葉に目を輝かせた。
「なんと……精霊様がお力を貸して下さるとは……何ともありがたい……!」
「ええ、それで本日突入するつもりです」
「なんと………それでは」
フレンツェが女中に目配せすると、エクスの目の前に小瓶を並べた。
「これは……?」
「これは、マナポーションでございます。宜しければお持ちください」
エクスは目の前にあるものの詳細を聴き、驚く。
「ま、マナポーションって、魔力が回復する、高いものでは…?」
その言葉にフレンツェは笑う。
「はっはっはっ!お気になさらないで下さい!私が使うわけでもありません。勇者様の為に買い揃えた物ですからな!」
「ぼくの、ために……?」
「ええ、ですから、受け取ってもらわなければこちらが損をしてしまいます。是非、役立ててください」
フレンツェが、エクスの顔を見つめる。
「我が街の民は、噂を聞き不安な事でしょう。行方の分からない者の家族は、帰ってくる事だけを祈っております」
どうか、と続ける。
「どうか………!民の不安を取り除いて下され……!」
深々と頭を下げた。
「……有難く受け取らせていただきます。そして──────」
深く、呼吸をし。決意を固める。
「────全力を尽くします」
必ず、救う。
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