地下牢からの脱出



どうやったかは不明だけれど、チビうささんがクロウさんを繋ぎ止めていた枷を外してくれた。

我らがお姫様は頼もしい。

今も白髪さんを翻弄して僕から注意を逸らしてくれている。


ここまでお膳立てされたもうやるっきゃない。


フンスと意気込みを新たに両足に力を込めた。

未だに地面からどす黒い触手がうにょうにょしているけれど先程までの正確性は欠けている。


僕はナイフでスパスパと斬りつつ道を作っていく。

白髪さんは徐々に近付く僕に反応する暇がない。うさぎさんであっても近付く女性はみんな標的なんだ。


「ちょこまかとクロウの周りを…。こら、そこに潜り込むな、羨ましい。そこは私の席なの!」


「クックゥー!」


上手く手玉に取るチビうささん。

ありがとう、お待たせ致しました。


ようやく到着。


「なっ、いつの間に!?」


目の前まで来てやっと気付いた白髪さん。

でも、時すでに遅し。


慌てて触手を生み出すも間に合わない。

この手の怪物にどれくらい加減をすれば良いのかな?

首へトンって手刀をしてもへし折らずに気絶で済ませれるか不安なので、お腹に思いっきり拳を叩き込む。

ちょっと苦労した分いつもより力を幾分か込めました。それぐらい良いよね。


物語のヒロインのような容貌なのに派手に口から唾液やらちょっと酸っぱい臭いの何かを吐き散らす。

咄嗟に回避。


「ぐうぅ…グロウ…。」


意識を失うギリギリまで愛する者の名を呼ぶ。その執念は凄いと思います。


ついに囚われのお姫様もといクロウさんを縛り付けていた者達を外す事が出来ました。



「クロウさん、お待たせ致しました。すぐにここから出ましょう。」


「コータ…だ、駄目だ。俺が逃げればこいつらが追ってくる。友達を危険に巻き込みたくない。」


差し伸べられた手を躊躇う。

クロウさんは分かっているんだ。このままだと僕達がどういう扱いになるか。


でもね、そんなの関係無いんだよ。


「クロウさん、僕は自分が思っている以上に身勝手な人間みたいなんだ。だから、僕は勝手に巻き込まれるんだ。勝手に助けるんだよ。」


真っ直ぐに見つめてニコリと笑う。

普段なら震えるはずなのにちゃんと言える。


「こ、コータぁ…。」


うるうると瞳を潤ませながらクロウさんはようやく僕の手を取ってくれた。


僕達はこれ以上騒ぎになる前に外へと急ぐ。



しかし、一階へと続く道の前にロアナさんが腕を組んで立っていた。


「ろ、ロアナ…。」


「……クロウ行くの?」


「あぁ、俺は行く。」


「……そう。」


てっきりまた行く手を阻むかと思えば、すんなりと素通りしてくれる。

交差する直後、クロウさんはロアナさんに耳打ちした。



「俺を好いてくれてありがとう。だが、ごめん。」



こうして、地下室から脱出を果たした。


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