第55話 酒池肉林

「いやー。大会とは言え、あんだけのラブラブを見せつけられたらこっちまで小っ恥ずかしんだが」


「俺だって恥ずかしかったぞ。だけど好がやる気満々だったからな」


大会から数日後。

学校が早く終わった日。

俺と聖良、瑠衣そして谷が俺の家に集まっていた。


「.....それで獲得した賞品の温泉はどうするんだ?」


「.....まぁなんつうか、好は行きたいけど、やっぱり行けないから.....瑠衣ちゃんと行って来たらって行ってたが」


「ふえ!?駄目だよお兄!そんなの!」


「でもな.....久々に兄妹でどっかに出ないか。瑠衣」


駄目だよ。

と俺に煎餅を食べながら説教をする、瑠衣。

じゃあ聖良?

それは無いなと思っていると聖良がジト目で俺を見てきた。


「.....ちょっと。何で私はスルーな訳?」


「聖良。お前は怖い」


「酷い!何もしないよ!」


いや、怖い。

それに俺が油断している所で襲ってきそうだ。

俺はそれだけは許す訳にはいかん。

何故なら俺には好が居るからな。


「.....そうなると.....谷。一緒行くか?」


「それってキモくね?」


「だよなぁ」


だったら誰を誘うべきか.....と思った所で。

俺はハッとした。

そうか、良い方法がある。

俺はスマホを取り出して、春子さんに掛ける。


『もしもし。どうしたの?』


「すいません。春子さん。確か.....今度休みが有りましたよね?その際に旅行に行きませんか?」


『でも旅行費用なんか無いわよ?』


「旅券有ります。癒されて来て下さい」


もしかして大会の?と春子さんが訪ねてくる。

俺は頷いて、そして瑠衣を見た。

瑠衣は納得した様に頷く。


「.....そうです。僕ら.....使う目的が無いので」


『.....じゃあ二郎さんと行こうかしら』


「そうですか!有難う御座います!」


これで旅券の問題は解決した。

のだがそういやその間、瑠衣と二人きりという事になるな。

俺は瑠衣を見る。


「.....二人きりだが、大丈夫か?」


「何もしないから大丈夫だよ。お兄の事も信頼してる」


「.....そうか」


そんな感じで話していると、聖良が待ったを掛けた。

俺達は目をパチクリして聖良の方を見る。

聖良は腕を組んでいた。


「.....私も一緒に泊まる」


「何を言ってんだお前は」


「.....大丈夫とは思う。だけど、二人っきりで.....あんなことやこんな事が起こるかも知れない!それは.....駄目だから!」


「そんな事起きません!!!何を言ってんですか!聖良さん!」


いや、ヒーローよ。

そんなに心配せんでも何も起こらないから。

と思っていると、テレビ電話が掛かって来た。


『もしもし!?何か嫌な予感がしたから電話してるけど!』


「お前.....」


察しが良すぎるだろ。

不気味な程に、だ。

俺は顔を引き攣らせながら、画面を見る。

すると、聖良が乗り出した。


「好!この家には一人の男と一人の女で暫く住む事になるわよ!大変!」


『..........は?和樹.....?』


「何誤解を招く様な事を言っとるんじゃー!!!」


『.....和樹くん。後でお話ししようね?それってどういう事?』


ニコッと優しく笑む、俺の彼女。

ややこしくなるだろ!ってかもうややこしいけど!

聖良ぁ!!!


「序でに俺も泊まって.....」


「来なくて良いよ?谷くん」


「ひっでぇ!」


谷は頭を抱える。

また酒池肉林の様な感じになるのか?

嫌だぞ俺は。

しかも親が帰って来ない家って。



そして次の日。

親父と春子さんは出発した。

そして俺は背後を見る。


「.....お前ら。どういう事だ」


「えっと.....宜しく.....ね。和樹くん」


「ってか、思ったけど何故に莉緒がいる.....」


「.....私が誘ったの。一番マトモそうな護衛だから」


護衛って。

俺は何もしないって言ってんだろ。

莉緒も困っているじゃ無いか!

でも鞄持って来たぐらいだからやる気は有るみたいだが。


「.....じゃあ、早速だけど何する?」


「私は勉強したいな」


「勉強なんて面白く無いよ。莉緒」


「え.....」


莉緒の意見スルー。

それよか、こんだけ揃ったんだから王様ゲームしない?

と聖良が提案した。

王様ゲーム?って何だっけか。


「王様ゲーム.....」


「.....何でも自由に出来るってヤツだね.....」


その時だった。

テレビ電話がまた掛かって来た。


俺は直ぐに画面を表示する。

そこにはゲキオコ的な感じの眉を顰めた、好が映った。


『嫌な予感がする!』


「.....お前という奴は.....察しが.....」


『.....今からだっけ?春子さんと二郎さんが旅行に行ったの。.....女子だけしか居ないからって調子に乗ったら殺すから』


「は、はい」


ハイライトがだんだんと消え始める。

む、昔に戻りつつあって、厳しいですね俺の彼女。

冗談だって感じなんですが。

その様に思いながら、聖良を見る。


「ふふっ.....冗談で済めば良いけどね.....」


『聖良!変な事をしたら叩くから!』


「うふふふふ.....」


聖良が怖いんですけど。

なんか.....もう逃げたい気分なんですけど。

俺はその様に思いつつ。

苦笑いを浮かべた。

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