第46話 「あっ」
「.....」
『.....』
「.....」
現時点で時計の針の音しか聞こえない。
翌日の日曜日の事だったが、俺はリビングにて二人の女の子に責められる様に見下ろされていた。
俺はそんな中でただ冷たい床に冷や汗をかきながら正座している。
何故、こんな沈黙などが流れているのか。
それは簡単に言えば聖良の口がうっかりと滑ったせいで有る。
その事によって緊急会議が繰り広げられていた。
「.....で?お兄は.....その.....こ、股間を触られて興奮したの?.....最低だねお兄」
『.....』
「だから興奮はしてないって話だってばよ.....」
因みに聖良は直ぐにこの場所から逃走した。
いや、ヒーローよ。
すっかり落ちぶれてしまったな、オイ。
俺はその無責任さを思いながら好を見る。
好はジッと俺を見ながらのジト目だった。
完璧なアングリーで有る。
俺は青ざめて顔を引き攣らせた。
『.....嘘吐き』
「.....いや、嘘は.....吐いてないんだ。好。.....その、何だ。.....俺は黙ってはいたが、いつか話すつもりだったぞオイ」
『.....でも全てから1日も経った』
「...........」
だよねぇ。
俺はその様に思いながら、瑠衣を見る。
瑠衣は逆三角形の目をして仁王立ちしている。
こんな怖い瑠衣は見た事が無いんだが.....。
俺は苦笑を浮かべながら、冷や汗をかきつつ聞いた。
「.....瑠衣。まだ怒ってる?」
「当たり前だと思わない?お兄。.....誰だけチヤホヤされたらいけないって言ったのに.....好さんを忘れたの?まあ、忘れたんだよね?」
「.....」
所謂、東大寺にある仁王像の様だ。
左右の、な。
俺は恐怖に怯えながら、正座キープをする。
新妻に殺される感じって多分こんな感じだと思った。
「お兄。股間と身体を触られただけ?キスまでしたらぶっ殺されるよ?』
「.....いや、してない。マジだ」
「じゃあクラスメイトと連絡先とか交換したの?」
「.....」
ふーん。したんだ。ふーーーーーん。
と横のタブレットからひっくい声がする。
いや、怖いんですけど.....。
って言うか、可哀想だったからよ!その子が!
『分かった。和樹とは暫く口は聞かない。.....ふーんだ!』
頬を膨らませてツンとする、好。
そんな!?と俺は愕然とする。
その様子に瑠衣が俺を見て、ため息を吐く。
「.....とにかく今は好さんを何とか説得する事。お兄。どう考えてもそれが大事だと思うから。お兄が悪くなくてもその場から逃げなかったお兄はお兄だから」
「.....ですね、はい」
「.....私の説得は後で良いから」
「.....ですね、はい」
聖良めと、俺はその様に涙目で思いながら、テヘペロしてメンゴと言っている聖良を思い浮かべた。
うーむ、ヒーローめ。
と何度も繰り返し思った。
取り敢えず、説得するなら連絡先の件か。
俺はその様に考えつつ、盛大にため息を吐いた。
☆
一応、好には新しい赤いカチューシャを渡した。
だが残念ながら、着けてくれてない。
ちょっと悲しく思いながら、俺は自室にて冷や汗をかきながら一対一で黄色いカチューシャのままの好と対峙していた。
さて、どう説得するか.....だが。
怒った彼女に対処するなんて初めての経験ですが。
タブレットの先で頬を膨らませて横を見ている好に言う。
「.....好。悪かった。でもな.....友達になって欲しいって.....言われたんだ」
『.....和樹の事だから.....また人を救うとか言い出したんだろうけど!でもツーン!』
「.....いや、マジで悪かった.....」
逃げなかったのは俺の責任と言える。
あの状態で.....ってか。
酒池肉林の状態で逃げれなかったと言える。
「.....好。取り敢えず、機嫌を直しておくれ」
『.....ツーン!』
「.....ですよね」
『ですね!ツーン!』
相変わらず怒っていても可愛いなコイツ。
でも真面目に怒っているのは事実なので.....うむ。
対応策を考えないといけないな。
「.....好。今度.....会ってみないか?その女の子と」
『.....連絡先を交換した.....輝夜ちゃん?だっけ』
「.....ああ。良い子だぞ。多分、お前とも友達になってくれるよ」
『.....ふーん.....和樹は連絡先を交換した女の子に会わせる気なんだー。ふーーーーん』
俺は汗をダラダラかく。
でも、と良美は言葉を発した。
そして俺に向いてくる。
『まぁ、和樹が言うなら』
「.....おお!流石は俺の彼女!」
『あ、股間を触った女は何処に?』
「.....お前、殺そうと計画してない?」
ん?そんな事無いよ?
だが、俺にニコッと笑んだ好の顔はマジな死神の顔だった。
私以外に.....和樹に触ったヤツを許さないとか呟いて怖いんですが。
「.....好」
『何か?』
「.....す、すいません」
『.....ならばよろしい』
あまりの恐怖に何も言えなかった。
だが、そんな中、好が赤くなりながら俺に言う。
『キスして魔法を解いて』
「.....またそれですか」
『嫌なの!?って言うか、当たり前!.....私は怒りの魔法を掛けられているのだ〜』
手を上げて、その様に話す好。
そりゃキスしないとな。
俺はその様に思って、苦笑いを浮かべた。
「.....好.....」
『何?』
「マジごめん」
『.....素直でよろしい』
取り敢えず、仲は回復した様だ。
何故かって言うと。
良美がそれを取り出した。
『.....じゃあ、カチューシャ。有難うね。今から着ける』
「.....ああ」
そしてカチューシャを結ぶ、好。
その姿は。
インパクトが変わって、俺は赤面した。
『.....ど、どうかな』
「.....流石だな。俺の彼女はとっても可愛い」
『.....も、もう。バカ.....』
超真っ赤になる、好に俺は告げた。
やっぱりお前が好きだと、その様に。
そして暫く話していた。
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