第39話 付けられて.....いる!?

何故か俺と病院に入院している、好とのデートをする事になった。

俺は今だに信じられない気持ちを抱きながらも、嬉しく思い。

ただ、はにかんでいる、好の映るタブレットを持って、歩き出す。


『えへへ.....本当に嬉しいなぁ。和樹とデートって.....あの二人に感謝しないと.....』


「.....そうだな。.....好、辛くなったら言ってくれよな」


『うん。大丈夫だよ。私は.....貴方と居れて幸せです』


うーむ、この野郎。

俺が赤面する様な事を平然と話しやがって。

そんな感じで真っ赤になっていると、だんだんと見えてきた。


「.....あ、好。見えるか?俺のお気に入りの博物館だ」


『見える!あれが.....そうなんだね.....』


「昔.....お前と行った事が有るが.....もう覚えてないよな?」


『.....そうだね。ごめんね』


やはり記憶障害は何時も通りか。

幼い時の記憶は全部消えた様だな。

俺は少しだけ複雑に思いながら、歩く。


「チケット買うから、ちょっと待っててな」


『二人分要るかな?』


「それは分からんが.....まぁ要る時は買うさ。お前の分だから」


『ごめんね。和樹.....』


こういう時は男がサポートするもんだ。

俺はその様にアドバイスしながら、チケット売り場まで行ってみる。

そして受付のお姉さんを見た。


お姉さんは俺に気付いた様で、マイクに喋る。

俺は会釈気味に頭を下げる。


『こんにちは。チケットをお買い求めですか?』


「そうですね。2枚」


『.....チケット二枚?お一人様では?』


「.....いえ、恋人が居るんです。えっと、ちょっと長く入院している、通話中の女の子がです」


俺の言葉に目を丸くする、お姉さん。

直ぐに分かりやすい様に俺はタブレットを見せた。

そのタブレットを見てから、お姉さんは俺を見てニコッと笑む。


『分かりました。ですがチケットは一人分で大丈夫ですよ。.....もしご迷惑で無ければ、館内を案内する者を手配致しますが』


「え?そんな迷惑じゃ.....」


『.....私にも入院中の父が居ました。連れて行きたかったという気持ちは分からなく無いんです。ご迷惑じゃ無ければ.....ですが』


「.....」


まさかの言葉だった。

そうなのか、と俺はお姉さんを見る。

俺は好を見て、頷いてお願いした。


「.....じゃあ、お願いします」


『では、少々お待ち下さい。手配致しますので』


色々な人が居るんだなと俺は思った。

直ぐに案内してくれる人が現れて、歩こうと思った、その時。


『是非とも、後で後悔しない様に館内を沢山、巡って下さいね』


お姉さんが最後にそう、話してくれて。

俺は見開きながら、はい、と頷いた。

好を見てみると、好も幸せそうな感じを見せながら。

ただ、俺を見ていた。



「えっとですね。案内人の山本と申します。宜しくお願いします」


「はい」


『はい』


若い男の人だ。

多分、入社してそんなに経ってない感じの。

口元のマイクを扱いながら、案内をしてくる。


「此方は地球が誕生した頃の様子です。で、それからの成り立ちを描いた絵です。大体、隕石が幾多も落下して地球が完成して46億年経過しました。人間は大体、ここ最近の文献では600万年前に現れたとされています。サヘラントロプスと呼ばれており猿人ですね」


俺は山本さんのその説明を受けながら、好を見る。

熱心にノートに何かを書き記している。

勉強している様だ。

その様子を見ながら、山本さんに向く。


「では、次に.....」


そこまで山本さんが話した時だった。

突然好が、あの!と声を上げる。

そして質問した。


「はい。何でしょうか」


『えっと、生命の起源は.....確か.....無性物質ですよね?それから発展していって

.....ですよね?』


「その通りですね。生命起源論に基づいて言うなれば詳しくは分かりませんが、合っていますよ。無性物質から発展したとされています」


やたらに詳しいな俺の彼女は。

その様に思いながら、苦笑いを浮かべた。

何も知らない俺。

勉強しないといけない。


「他にご質問は有りますか?」


『いえ!大丈夫です!』


「.....では、お次は.....恐竜について考えてみましょう」


恐竜か.....確か、今でもカラスとか雀?だっけか。

まだ恐竜は生きているという説は有る。

まあ、好よりかは知らないけど。



「此方は先カンブリア紀について置かれています。大体の詳しい説明ですね。そして、複製の標本などを置いています」


『すいません。何故、歴史がバラバラになっているんですか?』


「敢えて分かりやすい様に配置しています。興味を持つ分野を分けて、の様な感じです。本来は歴史に基づいて置いても良いのですが.....今度、改装される様ですよ」


成る程ね、って言うか。

俺が出る幕が無いんだが。

苦笑いするしか無い。


まさか好がここまで歴史に興味が有るとは思わなかったのだ。

山本さんですら困惑している様子も有る。

俺も確かに歴史に興味は有るけど、ここまでは.....凄いと思う。


「今度、この博物館は改装されて、今度は歴史順になる様です。では、お次に.....あ、お手洗いなどは大丈夫でしょうか?」


「だってさ。好。大丈夫か?」


『うん。えっと、行ってくるね』


一旦、モニターを切ろう。

俺はそう思って、モニターを切る。

すると、横に居た山本さんが俺に話し掛けて来た。


「素敵な彼女さんですね」


「そうですね.....記憶を2回ほど忘れてしまってます。でも、勉強熱心で.....凄いと思います」


「.....え?あ.....そうなのですか.....でも、えっと、僕にも彼女は居ますが、これ程.....歴史に興味を持ってくれません。.....だからとても羨ましい気がします」


山本さんはその様に穏やかに話して、俺を見つめる。

俺は頭を下げて、お礼を言った。


「.....山本さんのお陰ですね。彼女、楽しんでると思います」


「そうですか。良かったです。少しだけでもお手伝い出来れば、案内係としては幸せなので.....」


この場所の皆んなは本当に優しいな。

俺はその様に思いながら、後ろを見た。

その後ろで何か、動く影が.....有る。


「.....ん?!」


何だか知らないが、付けられている気がした。

それも、瑠衣と.....聖良に。

気のせいか?

と、思っているとタブレットが点いた。


『お待たせ。.....どうしたの?』


「.....いや.....何でも無い.....」


気のせいだろう、多分。

その様に思いながら、山本さんに向いた。

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