第24話 気が狂うっつーの

火矢と俺は火花を散らしながら、歩いて行く。

そして巨大なショッピングモールに着いた。

この前、出来たばかりの超巨大なショッピングモール。

名付けて、バカサと言う。


バカサってのは巨大に作った俺達はバカさ。

を皮肉って言っているらしいのだ。

まぁ名付けるのは個人の自由なので.....俺は知らんが。


「.....取り敢えず、着いたな」


「人が多い.....」


「当たり前だろ。りん」


コイツ、俺を睨みながらも兄貴としての役割を果たしている。

何故なら、りん、が迷いそうになったらいち早く救出したりしているのだ。

優しいという事になるな。


「.....何見てんだ」


「.....お前の様な口の悪いクソガキでも兄貴としての役割を果たせるんだな」


「.....あ?義妹でも妹だろ?おかしいかよ」


「いや、全くおかしくない。お前は偉いってだけだ」


な!?と見開く、火矢。

それから怒りながら赤くなる。

ハッ、俺、コイツの苦手な部分を見つけた気がするぞ。

褒められるのに慣れてない所とかだ。


「.....この!」


「おっと。俺に手を出したら.....瑠衣に嫌われっぞ」


「.....チッ.....!このクソが。後でぶっ殺す」


第一、小学生が高校生に勝てるもんかい。

いくらひ弱な俺でもそれは分かる。

その様に思っていると、火矢が目を鋭くしたまま俺に話した。


「.....お前、誰かをお見舞いしてたな?誰か入院でもしてんのか」


「聞いてないのか?」


「.....知らねぇ。そもそもそんなもんに全く興味が無いが、お前が、りん、を引き連れて頻繁にお見舞いに向かう。それは知っている」


俺達はショッピングモールに入りながら、火矢の話を聞いていた。

貶す様な目付きだが.....知りたいんだな仮にも。

しかし、話しても良いのだろうか?


「和樹さん.....には恋人が居るよ。お兄ちゃん。でも.....好お姉ちゃんが悪性ののうしゅよう?で記憶を失って.....恋とかその事を忘れられたけど.....ね」


「.....何だって?」


りん、の震える声に目を丸くした、火矢。

それから俺を直ぐに見てくる。

俺は少しだけ真剣な顔で火矢に向く。


「.....りん、の言う通りだ。俺には.....恋人が居る。だけど、それは全て、記憶が失われ、俺の事は忘れられた。.....俺は.....そういう皮肉な人生を生きているのさ」


「お前.....それは悲しく無いのか?.....告白されたのにそれなのに.....全てを失うって.....」


「悲しいに決まっているし、とても泣きたい気分だ。お前に言われんでも」


目を鋭くしたままだが、さっきと雰囲気を違わせて。

そして顎に手を添える。

悲しいのは.....俺と同じだ。

と聞こえた気がしたが、気のせいだろうか。


「.....ああ。面倒クセェ。クソッタレが」


「高島くん.....」


「俺はトイレに行く」


その様に吐き捨てる様に呟いて歩いて行く。

様子に俺達は顔を見合わせて、りん、俺達の直ぐ近くのペットショップに向かっていたので、追う事にした。



俺は基本的に色々買うしかしない。

のだが、こういう時はどうしたら良いのだろうか?

こういう時ってのは今の事だ。

みんなと一緒の場合、どうしたら良いのか分からない。


みんなを楽しませる為にどう動くべきなのか。

俺は.....いや、俺がサポートしなくてはいけないと思うのだ。


「深く考えなくてもみんな勝手に動くよ。お兄」


「.....まぁ.....それはそうなんだがせっかくなんでね.....」


瑠衣はその様に話すが.....。

何も思い付かない。

確か、このショッピングモールに有ったのは遊園地とか.....だっけか。


「あれぇ?何やってんだ?高島くんよ」


考えていると、目の前で小学生に火矢が絡まれていた。

やたら不良の様な格好をしていて、4人ぐらい居る。

火矢があまりに不利な状況だ。


「.....何だお前ら」


「確か父親が夜逃げしたんだっけ?コイツの親父」


「ああ、そうそう。なっさけないよな。親父が夜逃げって」


火矢の後ろに不安そうな、りん、が立っている。

何だコイツら?ムカつくんだが。

と、思っていると谷がその小学生の前に立った。


「.....何だよ。おっさん」


「お前ら。寄ってたかって色々言うのは良く無いぞ」


「高島。コイツお前の知り合い?」


「.....まぁ.....そんな感じだが」


谷はその言葉に笑みながら、目の前の少年どもに言った。

俺も近付いて行く。


「.....はよ散れ。こんな場所で喧嘩とかしたく無いんでね」


「舐めんな。高校生だからって勝てねぇと思うのか」


そして、拳を思いっきり谷の懐に.....と思った瞬間。

目の前に火矢が出て。

見開いているうちに思いっきり火矢が殴られた。


「.....火矢!?」


「.....コイツらに無駄に挑発すんじゃねーよ。俺がケリを付けるから.....」


「ああ、それは間違っている」


その言葉に、ああ!?と火矢が言う。

俺はそのクソガキどもに俺は向く。


「お前ら.....両親が居ないのがどれほど悲しいか、辛いか知らないだろ。そんな奴らが手出しするんじゃ無い」


「.....は?」


相手のクソガキどもは眉を寄せる。

そんな感じでしていると、野次馬が警備員を呼んだ様で。

ショッピングモールの警備員がやって来た。

クソガキどもが慌て出す。


「何をやっているんだ君ら!」


「面倒臭いな.....行くぞお前ら!」


俺を睨みながら、解散して行く、クソガキども。

その光景にため息を吐きながら、殴られた火矢を見る。

唇が切れていた。


「.....高島くん.....」


「触るな。瑠衣。俺は大丈夫だから.....そんな事よりお前と谷だっけ」


俺と谷を見上げる様に向く、火矢。

そして眉を顰めて話し出す。


「何でお前ら、俺を助けた」


「.....何でって言われたら」


「.....お前の言動は気に食わないが、お前は俺達の.....仲間だからだ」


その様に話すと、まさかの言葉だったのだろう。

火矢が衝撃を受けた様な顔付きをした。

悪態を吐いて、歩き出す。


「.....クソッタレが。さっきから何もかもが狂いっぱなしだ。気に入らねぇ」


「.....ちょっと待て火矢」


「.....何だよ」


「お前、クラスでもしかして孤立してるのか?」


言葉に、歩みが止まる。

瑠衣が心配そうに見つめる。

それを見ながら、火矢はこの様に言った。


「.....一匹狼で生きて行く。それが俺の信念だからだ」


と、だ。

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