第24話 泉の視線
「ふん、ふん、ふ~~~~ん」
鼻歌混じりでスキップ踏みながら教室に戻る、手には携帯、画面にはみかんちゃんのアドレス、そして『よろ~~♡( `・ω・´)ノ ヨロシクー』と絵文字の入ったライン。
「うわーーうわーーみかんちゃんのアドレスが僕の携帯に」
何度も何度も見る、間違いなくみかんちゃんのアドレスがそこに見える。
「凄い、父さんと母さんと泉と愛真とみかんちゃんが携帯に!」
携帯を持って以来最大数になったアドレス、本当に連絡が取れるアドレスがなんと5件も、架空アドレスは100件位入ってるけど5件も本物があればもういいよね、今晩これは消しておこう。
パソコンから自分にメールを送って父さん以外ともやり取りが出来るかをずっとしていたがこれからはもう確認する必要はない、今は愛真からしょっちゅう送られてくるしね、
本当に今までありがとう、僕のメル友の……あい、うえおさん、かき、くけこちゃん……etc。
「超美人の妹、まあまあな愛真、そしてあの今やメイド界のアイドルみかんちゃん、女子3人のアドレスが入っているなんて、えーーーーもう僕ってリア充なんじゃね、マジで~~ゲロゲロ~~」
3人もってもう僕リア充通り越してチャラ男なんじゃね~~~~
「おっといけないみかんちゃんの事は内緒だった」
学校では委員長か一萬田さんって呼ばないと、ああ、でもいつかは凛ちゃんって呼びたいな~~、でもさすがにそれは図々しいか……
泉を名前で呼ぶのも大変だった、でも妹になった以上名前で呼ぶしかない、旧姓はおかしいし、佐々井さんももっとおかしい。
「あれ? でも僕、愛真って直ぐに名前で呼んでたな」
ま、まあ小学生の時だったからあまり照れもなく呼んでたんだろうな。
じゃあここでもう一度僕の妹と友達、3人の女子のおさらいをしておこう。
まずは僕の妹、旧姓、薬師丸 泉、現、佐々井 泉。
我がクラス、いやわが校のカースト頂点、立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花を体現した僕の天使、そしてなんとこの間から僕の妹になった。
艶やかで流れる様な黒髪、大きな目、筋の通った鼻、愛らしい口、スタイルは細身だが身体だが出るところはそれなりに引っ込む所はかなりに、道を歩くと百人が百人振り返る程の綺麗さ、この人が僕の妹なんて、ある意味残酷だよ。
そして今さっき友達になったみかんちゃん、もとい、一萬田 凛。
赤いメガネにおかっぱ頭、成績優秀のクラス委員長、クラスでどこかのグループに入る事をあまりしない、孤高なイメージなんだけど、実はそれは仮の姿だった。
ピンクがかったセミロングの髪にクリクリお目目、白い肌に真っ赤なルージュか際立つ、そう彼女はメイド服を装備すると変身する!
僕のアイドル、メイド界のスーパースターみかんちゃん!!
最後に愛真、小学生の時の僕の唯一の友達、その後海外に行き最近帰国、以上。
え? それだけって? でもさーー愛真の事なんか聞きたい? まあ普通に可愛いとは思うよ、でもさ、ちょっと二人には劣るよね、小学生の頃は女の子っていう感覚はあまり無かった、従妹とか妹とかそんな感覚、図々しくって人の領域にずかずかと入って来る、そして突然居なくなった……また一人にさせられた……
まあ親の仕事なんだから仕方ないけどね、あ、そうそう、帰ってきた時は本当びっくりしたよ、栗毛のユルフワボブヘアー、着ている服もフリフリですっかり女の子になっていた。
でも性格は相変わらずだよ、メルアド教えたらそれから毎日の様にメール攻撃でまた僕の領域にずかずかと入り込む……
僕は愛真を妹の様に見ていて、多分愛真も僕の事を弟だと思っている。
まあ、そんな3人が僕の妹と友達になった、3人だよ、3人、話しが出来る人が3人もいるって凄くない?
「いやあ凄い、遂にボッチ脱却、僕は変わる、泉の理想の兄として!」
僕は意気揚々とクラスの教室に戻り、扉を開けた…………あれ?
なんか……空気が変……
僕が教室に入ると一瞬、ほんの一瞬だけど何か違和感が…………僕は自分の席に戻りながらその違和感を精査してみた。
そう一瞬、一瞬だけど皆僕を見たんだ、それぞれが会話をしているのにそれを一瞬止めて僕を見た。
今まで無かった事だ、なんだろう、しかも何か嫌な空気なんだけど……
気がつかない振りをして、午後の授業の準備をする、クラスの空気は今普通にって……!!
そしてまた今同じ空気が走った、今度は僕に向けてじゃない、今委員長が教室に入ってきた時に同じ空気が、あれ? なんだこれ? 何が起きてるんだ?
それを戸惑いつつもやはり気が付かない振りをして座っていると、前からモデルの様に僕に向かって泉が歩いて来る、うわーー歩き方も綺麗だな~~
見とれていると、泉は僕の前で立ち止まり、座っている僕を上から見下ろしながら言った。
「お兄様、今日は一緒に帰りますので」
「あ、うん」
「それと……、帰ったら少しお話しがあります」
「え? な、何かな?」
「帰ったらじっくりと、では」
冷たい口調でそういうと泉は席に戻って行った、な、なんだ今の感じ、前にも……そうだ、兄妹なる前、あのメイド喫茶を提案した時僕を見ていたあの凍る様な視線、何か言いたげな時に見せるあの視線。
怖い、なんだろ、帰ったら何が……
泉の話が気になって午後の授業の事は全く覚えていない。
そしてあっという間に放課後になった、一体泉は帰ったら僕になんの話しをするんだろうか?
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