第21話 クラスカースト
目立たなくなるにはどうすればいいか?
黙っていればいい、とにかく喋らない端でじっとしていればいい!
と、思いがちだけど実は黙っている、じっとしているって逆に目立っちゃうんだ。
目立たない歴十数年、超ベテランの僕くらいになると、そんなヘマはしない。
それなりに何かやってますアピールを常に行う。本を読むのもいい、ゲームをやるのもいい、ただ絵を描いたり小説を書いたりなんてのは目立つので控えた方がいい。
「何してるの?」って話しかけてくる人がいるからだ。あと本もカバーはしてはいけない、「何読んでるの?」って話しかけられるから。
だからカバーはしない、そして最新の本や趣味の本は避ける。すると何を読むか、いや、読んでいる振りをするか? そうだね古い小説なんかがいい、芥川や夏目なんかが最高! 誰も興味を示さない、古くてもマニアックな作者も駄目、「お、そこ行く?」みたいな感じで話しかけられるから。
そして肝心なのは空気を読む力が大事だ! この間ついやってしまったメイド喫茶発言なんてもっての他だ。つまり真剣に本なんて読んではいけない、読んでいる振りをしているだけ、常に周りには最新の注意を払っていなければならない。
そして一番大事な事、それは……『敵を知り己を知れば百戦危うからず』の、ことわざの通り周りをよく見て知る事だ。
中でも最重要項はクラスカースト、これさえ分かれば後は簡単、常にカースト上位の人達の死角に入ればいいだけ、それが分かれば透明人間になれる。
まあ、まだまだあるんだけど、これ以上発表すると、僕の心が持たないのでこの辺にしておこう……心が痛いよ天国のママン。
とりあえず僕のクラスはどうかと言うと、泉を頂点とした、いけてる女子集団、まあ泉には劣るけど、皆美人揃い、頭も良く何でもそつなくこなすオールマイティー集団だ、そして皆がいいとこのお嬢様。
その下は、ちょっとだけギャルが入ってる女子グループ、ただ泉がいるとこの2つのグループは同一グループになる。もうこの2つのグループだけでクラスの過半数を越えてしまう。
そしてその他女子グループ、いけてる男子グループ、その他男子グループって感じになっている。ちなみに、いけてる男子グループとカースト上位の女子グループは同じグループを形成する事が多いが、うちのクラスでは同じグループにならない。そもそも男子は女子の1/4程度しかいなく、女子の力が圧倒的に強いから男子は本当、皆借りてきた猫状態。
仮に誰かが付き合って、もし別れた日にはガクブルな状態になるので中々手が出せない。まあそれ以前にこの学校は元々お嬢様学校なので、あからさまに学校でイチャイチャすると呼び出され指導されたりするので皆隠れて付き合っている。まあ僕には分かるんだよね、誰が誰と付き合ってるかって、だって空気を読んで相手を良く観察していれば、自然と分かって来るでしょ? 目線とか仕草とかね。
そんなこんなで、僕は目立たない様に、隠れる様に、何事もなく学校生活を送っていたんだけど、高校1年になって、泉と兄妹になって遂にやらなくちゃいけない事になった、なってしまった。
さあ、ではまずボッチの僕が何処のグループに入るか考える、本来なら、泉がいるカースト最上位グループに入るのが一番なんだけど、いきなりそんな所に入るほど空気読めない僕じゃない、それこそ泉に迷惑がかかるし、何より僕の心が死んでしまいます。
男子グループはなんか少ない人数で頑張って組んだって言うか、もう出来上がっているから今さら崩さないでっていう空気って言うか……まあ僕みたいなのを今さら受け入れて、もう一度関係を再構築したくないって感じがする。
そんな所に無理やり入るって……何そのムリゲーだし。
まあそれ以前に長くボッチをしてきた僕がグループにいきなり入るって言うのはかなりハードルが高い、もうハードル高くて棒高跳びのバーを110mハードルの様に走る感覚だ。
要するにグループに入るのは無理……で、考えた、そうだ僕は愛真とは普通に話せるし遊べた、そしてまだ緊張するけど泉とも普通に話せる。つまり僕は女子一人なら話しかける事が出来る!…………多分?
そしてうちのクラスには、一人ボッチではないけど特定のグループに入っていない人物がいる。
それがクラス委員長の一萬田 凛(いちまだ りん)だ!
通常委員長はクラスカースト上位陣が決める雰囲気があるけど、彼女はまだカーストがはっきりしない高校1年の春、自ら立候補をしてあっさりとクラス委員長になる、そしてクラスの1割もいない難関の高校入学組、頭もかなりいい。
なのに何故か彼女はどのグループにも属さなかった……休み時間も一人だったり、色々なグループと行動したり、一人で何処かに行ってたりと特に固定の動きがない。
皆と帰り何処かに遊びに言ったなんて会話をしていた事もない。
クラス委員長という立場を利用して、何か逆に自由にしている様にも感じた。
つまり彼女はフリーの存在、彼女に話しかけても特定のグループに目を付けられる事はない!
僕が初めて自ら話しかけるには一番最適な人物と言って間違いないだろう。
でも……なんて話しかければ……うーーん、とりあえずクラス委員長だし、悩み相談なんて感じで話しかければ良いかも、僕の悩みはそのまま友達がいない事、あわよくば彼女が友達、いやせめて……話し相手になってくれるかも知れない。
よし! それで行こう、幸い今彼女は一人で食事中だ、今日は皆学食に行っているのか? クラスにはあまり人は居ない、チャンスだ!
僕は立ち上がり彼女に近づきそして言った。
「あ、あの……一萬田さん!」
僕が声をかけると彼女は僕を見て、そして……
「ぶ、ぶはああああああああ!!」
ものすごくベタにストローで飲んでいたパックのオレンジジュースを顔に吹き掛けられた……えっと……こう言うときってなんて言えば良いんだっけ?
「えっと、ご、ご褒美ありがとう? かな?」
「変態……」
ああ、何を言っているんだ僕は……駄目だ最近空気が読めない、最悪なファーストコンタクトになってしまった。でもなんか言いたくなったんだよな、なんか彼女とは初めて話した気がしない……何故だろうか?
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