第75話 甘え

 ライン作業の途中で涙が溢れる。

 昔の彼女の事を思い出す。

 18歳年上の、おそらく僕を最も大切にしてくれた人を…


 色々な事を思い出す。

 言われた言葉

 行った場所


 泣かせたこと…怒らせたこと…笑えたこと…その全てを、僕は手放した。


 何もしてあげられなかった。

 彼女の悲しみも苦しみも、全て僕に振りかかればいい。

 この涙も、彼女の代わりに泣いていられるのなら…

 この苦しい思いも彼女の代わりの辛さならばいい…


 そんなことを考える自体が、僕の甘えなんだ。


 すべては僕のせい…

 解っている。


 許されないことも…

 逃げたいと思う、この世界から…いっそ死ねれば。


 殺してくれませんか?

 自分では死ねないんです。


 殺してくれませんか?

 生きていることに何の価値も見いだせないんです。


 何も出来ないんです。

 死ぬことすら出来ないんです。


 殺してくれませんか…

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