第70話 引退

 スポーツには興味が無い。

 当然、スポーツ選手にも興味が無い。


 だけど…イチロー選手の生き様だけは素直に凄いと思えた。

 私は、イチロー選手を野球選手というだけでしか理解していない。


 おそらく口下手なんじゃないかと思う。


 でも…この方の言葉には重みがある。

 頑張った。

 スゴイ。


 そういうレベルで語れない重みのある人だと思えた。

 そのプレイで何かを変えられるスポーツ選手はいる。


 だけど、スポーツへの向き合い方で、他人の心を動かせる人は何人もいない。


 たかが野球である。

 だけど…それに対する向き合い方、生き様、本当に惹きつけられた。


 野球選手としての功績は知らない。

 その背中を立派だと思えたのは初めてのことだったかもしれない。

 1度きりの人生とは言うが、この人は何周目の人生なんだ?

 本気でそう思えた。

 私は、何周目の人生においても、この人の境地には立てないのだろう…


 これほど何かに向きあえた、向き合える人生とは…

 ツラかったのではないだろうか?

 それでも向き合い続けることができるのだ。


 たぶん誰の為にやってるわけではないのだろう、それでも惹きつけられる人…

 この『イチロー選手』だったのだと思う。

『選手』は終わりを告げた。

 だけど『イチロー』という存在は、これからも誰かのフラグ足り得るのだと思う。

 そう、本人が意識せずとも誰かが、その背中を見ているのだ。

 苦行のような人生のように思う。

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