再会編9話 ハイレグさんが通る
マイクパフォーマンスを終えたチッチ少尉が舞台裏に退場し、いよいよ一回戦が始まる。
白シャツに蝶ネクタイをつけた尻アゴ、もといストリンガー教官が入れ替わりに闘技場に登場し、オレ達の間に立った。
「二人とも、レギュレーションは覚えてきたな?」
「もちろん。」 「完璧ですわ。」
「では開始線まで下がって合図を待て。」
オレは床に記された赤いラインまで下がってマリーさんと対峙する。武闘場の広さは50m、マリーさんまでの距離は20mか。実弾を使えないハンデを埋める為に、最初の距離設定が射撃有利になってんだな。
「……では一回戦を始める。3、2、1、ファイッ!!」
合図と同時にマリーさんはガトリングガンを構え、銃弾の雨を降らせてくる。オレは飛び退って躱し、両脇のホルスターから銃を抜いた。
そこへまたしても襲い来る銃弾の雨、観客席を守る為に強化防弾ガラスが張り巡らされてるから、遠慮なしに撃ってきやがる。
「ホ~ホッホッホッ!ハンドガンでガトリングガンと撃ち合うおつもりですの?……ナメないでくださる!」
さすが金髪自走砲、的確な射撃だぜ。しかもマシンガンとハンドガンの違いもよくお分かりのようで。
的に命中させるのがハンドガンなら、空間に集約させるのがマシンガンだ。
弾を高速でバラまくマシンガンで一発必中を狙う意味はない。
大事なのは射撃を集約させるコトと、あえて散開させるコトの2種だ。
範囲に弾をバラまいて獲物を追い込み、集約させた射撃でトドメを刺す。マシンガンの要諦を抑えた射撃術はさすがだ。集約された射撃を全部受けてたら、念真障壁が持たない。
だがコッチもタダのハンドガンじゃないんだぜ? 大会直前にペンデ社から届けられた新型、グリフィンmkⅡの射撃を喰らえ!
「なっ!なんですの!その威力!それに……この貫通力と速射性は!」
たかがハンドガンの射撃とタカを括ってシールド防御したマリーさんだったが、念真障壁に亀裂が入ったのを見て顔色が変わる。
「ペンデ社が開発したオレ専用の新型銃、グリフィンmkⅡだ。反動も強いが、貫通力と速射性は世界最高。ハンドガンだからってナメてかかると痛い目に合うぜ!」
今のオレの力なら反動が強かろうが問題ない。優れた精度、高い威力、最高の貫通力と速射性、グリフィンmkⅡはオレの理想の銃なのさ。
目先の威力を求める為に安易に66口径にサイズアップはせず、あえて55口径の究極を志向した芸術品がこの銃だ。"目先の有利さに惑わされたり、分かりやすい強さを過信するな"カーチスさんが教えてくれた言葉を、ペンデ社のマイスター達が実現してくれたんだ!
「それでも私に射撃戦で挑むとは思い上がりが過ぎましてよ!」
黄金のガトリングガンが唸りを上げ、オレは必死で回避し、障壁を張って防御する。狼眼を光らせて視線を外させ、的を絞らせない手はやはり有効だな。
そして要所での反撃だ。射撃の合間に撃ち返してはみたが、マリーさんは分厚い障壁を張って対抗してきた。
「その銃の性能は把握しましたわ!もう通じません事よ!」
うん、撒き餌だからね。そう思ってくれなきゃ困るんだよ。
この戦い、マリーさんがガトリングガンを使ってくるコトはわかっていた。だからオレはあえて射撃で挑むコトにしたんだ。マリーさんはオレが刀を使った接近戦を挑んでくると思ってただろうだから、射撃戦の想定はしてこなかったはずだ。
そして撒き餌も撒いた。予期せぬ新型銃の登場、その分析は完了、マリーさんは戦いをコントロールした
「チョコマカ躱すのは上手いようですけど、私にも奥の手がありましてよ!」
奥の手? なにか隠し球を準備してたのか!?
「さあ、ご覧あそばせ!」
マリーさんはバッと軍用コートを脱ぎ捨て、その下から現れたのは……ハイレグ水着だった。
「……あ、あの~……マリーさん?」
「カナタさんは「せくしぃ」な姿に滅法弱いと聞きましたわ!こ、これで戦いに集中できないはず!……ちょっ!待って!お待ちなさい!なんですの、その容赦のない射撃は!」
「いや、せっかく防御力を落としてくれたのに狙わない手はないかな、と……」
「わ、私では「せくしぃ」さが足りないと言うのですか!」
いえ、セクシーさは十分だと思いますよ? その証拠に男性の観客達は口笛吹いてますから。
「そういう訳ではないんですが……勝負に勝ちたいがゆえの
なにより八熾のちびっ子達が見てるからね。それにたぶん、マリーさんはたこ焼き女と同じで、オレの守備範囲の外にいるんだと思います。なんでだろうなぁ?
「邪の塊のカナタさんに諭されるだなんて……屈辱ですわ!」
八つ当たり気味のガトリングガンの射撃を障壁で防御しながら天狼眼で牽制、リロードを行う。
天狼眼で牽制しながらリロード、これがオレの描いた勝ち筋だ。これまで同様、射撃妨害の為に天狼眼を使ってると思ってるよな?
リロードを終えたオレは左手の銃で射撃、マリーさんは分厚い障壁で止めにかかる。
そして右手の銃で射撃だ!これで決める!
「いくらスゴい銃でも、性能さえ把握すれば……ああっ!!」
さらに6発の銃弾が体に命中した時点で、ストリンガー教官が宣言した。
「勝負あり!……勝者、剣狼カナタ!」
オレは銃をホルスターに納めてマリーさんに駆け寄った。
「マリーさん、右肩に当たった一発は念真力を纏ってただけじゃなく、狼眼の力を込めてました。早く医務室へ行ってください。」
「この痛みが狼眼の力。……トッドさんのように弾丸に念真力を纏わせるまでは想定していましたわ。でも、どうやって弾丸に狼眼の力を? 飛んでいく弾丸に力をチャージするなんて不可能でしょう?」
「飛んでいく弾丸には無理ですけど、飛んでいく前なら可能です。」
オレは左脇のホルスターからグリフィンmkⅡを抜いて、弾倉を取り出した。
「……これは!!強化プラスチックで作られた内側が透明な弾倉!」
そう。ペンデ社に頼んで片面が透明な特殊弾倉を作ってもらっていたんです。狼眼はガラスやプラスチック越しにでも効力を発揮する。狼眼の力を込めた黄金の弾丸、これがオレの新しい戦術、「狼眼弾」だ。
「……カナタさんの戦いにはアイデアがありますわね。完敗ですわ。」
「いい勝負でした。」
マリーさんが差し出した手をしっかり握り、互いの健闘を称えあった。
し、しかし……キワどいハイレグ水着だ。しかも至近距離で拝見させて頂くと、立派なモノをお持ちで……何カップあるんだろ?
やれやれ、勝負が終わってホッとしたら、おっぱい革新党の幹事長であるコトを思い出しちまったみたいだな。たこ焼き女みたいに守備範囲外じゃなかったのか。
「勝負には負けましたけれど、女としては勝ったようですし、満足ですわ。」
「え!?」
な、なに言ってるんですか!ちょっと胸に目がいっただけじゃないですか!
だけど悪戯っぽく笑ったマリーさんは、オレに小声で勝利宣言をしてきた。
「……カナタさん、膨らんでますわよ?」
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