【Second Season】

【Second Season】序章《001》


 クリミナルAOという伝説的なディーラーがいた。


 彼が自らの手でカスタムを極めた武器の数々が、俗に言う『遺産』。ゲーム内通貨がそのまま仮想通貨スノウとして現実の円に匹敵するほどの影響力を広げる世界最大のオンラインゲーム『マネー(ゲーム)マスター』内において、あらかじめ設定された物理法則の限界を軽々と超えた凶悪な銃や砲は『終の魔法オーバートリック』とも呼ばれるほど絶大な威力を誇っていた。


 その圧倒的な力故に、ゲーム内の物理エンジンに深刻なバグやエラーを呼び起こすリスクを持つ『遺産』。製造と管理を行っていたクリミナルAOは、ゲームを牛耳るAI達の手によって謀殺され、リアルとバーチャルの双方で居場所を失った。


 全ての『遺産』を手に入れれば、違ったものが見える。


 通常画面とエラー画面との差異を追い駆ければゲームに使われるプログラム言語を解明し、有史以来誰にもサイバー攻撃のできなかったマネー(ゲーム)マスターを乗っ取り、AI達の『総意』に反旗を翻す事ができる。


 マシントゥマシン、リアル世界において人から人、人から機械ではなく、機械から機械へ直接行われる金融取引の割合は、実に全世界の四八%。


 これが五〇%を超えた場合、人間が機械を動かすのではなく、機械がお金を支配して人間を効率良く操る時代へと逆転してしまう。


 それまでに全ての『遺産』を集められるか。


 いいや。


 はそれ以上。マネー(ゲーム)マスターの中に潜む、本物の悪魔達は人間社会を忠実にシミュレーションするだけで、世界の動脈であるお金の流れをほぼ掌握した。


 そいつが天や神と呼ばれる領域まで及んだら?


『反逆の日』が実行に移される前に、決着をつけなくてはならない。




「もしも『遺産』の蒐集を邪魔する者が出てくるなら」


「もしも『終の魔法オーバートリック』の回収を邪魔する者が出てくるなら」




 これは、『遺産』を巡る物語。


 妹を庇って撃たれた友と同じように、今度は自分が友の妹を守ると誓った少年の物語。




「「その時は、殺し合いになってでも奪い取るしかない」」

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