6-4顛末②
「思えば、最初に狭山さんが所室に来た時から怪しかったな。普通の電子ロックなら業者にでも頼んだ方がよっぽど早い。なぜ俺たちに頼むのかと風岡が問い詰めた時に言い淀んだのは、
あぁ、そういえばそんなこともあったな。あの時は一応納得したが、たしかに怪しかったよな。
「えぇ、あの時は焦りました。その程度の指摘はあらかじめ考えておかなくてはいけませんでしたね」
「あたしも香子ちゃんが聞いちゃいけないこと聞いちゃったのかと思って焦ったよ~」
「ふふっ。歩美がかばってくれたおかげで理由を思いつく時間ができたわ。ありがとう」
「も~、最初に言ってくれればよかったのに~」
歩美は笑っているが結局友達からは何も教えてもらえない状態で、手の平の上で一番長く踊らされてたってことだよな。ある意味一番の被害者かもしれないな。まあ、狭山さんが歩美に事情を伝えていたとして、最後まで歩美がそれを俺たちに秘密にできたかどうかは怪しい。十中八九どっかでボロを出してただろう。そう考えると狭山さんの判断は間違ってなかったんだろうな。
「それだけじゃない。洞窟の最後の方は、俺たちでも息が上がるようなコースだった。宗介氏があの洞窟を突破できていたとは考えづらい」
あぁ、そうだったそうだった。あの辺で狭山さんたちを怪しみ始めたんだったな。でもまさか、本当に狭山さんたちが黒幕だったとは……。
「はぁ……。結局私たちは、存在しない大富豪の隠し部屋や隠し財産を探して、骨折り損のくたびれ儲けをしたってわけね」
「えぇ~、香子ちゃんはこの満天の星空の下で、土橋くんと二人きりで素敵なひとときを過ごしてたじゃ~ん」
歩美が香子の脇腹をつんつんと突っつきながらからかう。
またその話をほじくり返すのか……。
もう訂正するのもめんどくさくなって、俺は「やれやれ」と肩をすくめた。香子は口を尖らせ、目を三角にして歩美を睨んでいる。
「ひょえ~、怖い怖い。へへっ」
歩美が銀を盾にして隠れる。
「お、おいおい、俺を巻き込まないでくれ……」
「もうっ!」
香子は諦めたのか肩を落としてうなだれた。
狭山兄妹はその様子を眺めにこやかに笑っている。いやいや、何を笑ってんだ、とツッコミをいれたくなるのを俺はなんとかこらえた。俺たちは本当に死ぬかもしれないとか思ったんだからな。笑い事じゃない。
「まったく……。うまい話には裏があるっていうけど、楽しそうって理由で乗っかったこの話にも、まさかこんな裏があるとはな……」
俺は額に手を当てボヤいた。
「ね~、本当にびっくりだよ~。裏すぎて逆に表なんじゃないかってくらいの裏があったよね~」
「いや、すまん歩美……。ちょっと何言ってるかわかんねぇ」
「えぇ~、なんでよ~。伝われ~」
歩美はマジシャンがハンドパワーを送る時のようなポーズで、わけのわからんメッセージを俺に送りつけようとしている。
歩美のやつ、このポーズ気に入ってるのか……? しかし、悪いが何も伝わってきてないぞ。
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